拝島正子のブログ

をとこもすなるぶろぐといふものを、をんなもしてみむとてするなり

小林薫/尊属殺重罰規定

2024-07-06 09:49:55 | 朝ドラ

今週、穂高先生がめずらしく大声を挙げた(朝ドラ)。だが、もともと演じる小林薫さんは、大声を挙げる役が得意である。カーネーションのお父ちゃんしかり。「東京タワー オカンと僕 ときどきオトン」の冒頭で酔い潰れて玄関をたたき壊すお父ちゃんも誰かと思ったら小林薫だった。だから、穂高先生のような温厚な役を演じる小林薫を見て、こんな役もこなすんだ、役者さんってすごいなーと思ったものだった。今週、穂高先生が寅子にやり込められて、大声を挙げたのを見て、ようやく「来たー」と思った。このときの穂高先生はちょっと可愛そうだった。翌日、仲直り(らしきもの)ができて良かった。その後すぐに穂高先生は亡くなったから。あれで、仲直りせずに死なれていたら寅子のダメージはマリアナ海溝並みだったろう(深いということ。世界最新がマリアナ海溝で、第2位が日本海溝である。2位と言えば、七夕決戦で誰が2位になるかに注目が集まっている)。

ところで、穂高先生は、尊属殺重罰規定(直系尊属を殺した犯人は死刑又は無期懲役に処すとしていた旧規定)が合憲か違憲か(つまり、尊属を殺した犯人と尊属以外の人を殺した犯人とで刑が違うのは平等原則を定めた憲法に違反する(違憲)のではないか)が問題となった事件で、当該規定が違憲であるとの反対意見を唱えたのだが、反対意見は穂高先生を含めて二人だけで、このときは当該規定は合憲(憲法には違反しない。尊属殺人犯を重く罰してもよい)となった。だが、ドラマで言っていた事件内容(父親から鍋や鉄瓶を投げつけられた被告人がついかっとなって鉄瓶を投げ返したら運悪くそれが父親の頭に当たって父親が死んだ)なら、そもそも殺人罪ではなく傷害致死罪ではないか?との疑念が湧いた。「当たって死ぬかもしれない、でもいいや」という未必の故意が認められたのだろうか。因みに、尾野真千子のナレーションが「この規定が再び20年後に問題となった」と言っていた。それは昭和48年の最高裁判決である。事案は、日頃から実父による性的被害に遭っていた娘が(何度も実父の子を妊娠した)、ようやく彼氏ができてこんな生活から抜け出せると思ったのに実父にじゃまされて、思いあまって実父を殺害したという案件。最高裁は、当該規定を違憲と判断し、被告人に執行猶予を言い渡した。この「執行猶予」がポイントである。この事件、どう考えても被告人が不憫だから執行猶予を付けたいところだが、当該規定が幅を効かせていると、どんなに刑を軽くしても懲役3年6か月がいいとこで、それだと執行猶予(懲役は3年以下であることが条件)を付けられなかったのである。だから、当該規定を違憲無効として、被告人に普通の殺人罪を適用する必要があったのである。

因みに、最高裁ってとこは相当に保守的で、滅多に「法律が憲法に違反して無効」とは言わない。最高裁が最初に違憲無効としたのが当該規定である。そう言えば、つい先日、優生保護法についても最高裁は違憲であると宣言した。

因みの因みに、ドラマの中で、寅子が、「尊属殺」のことを「上の世代の人を殺すこと」と言っていたが、これだと、親戚でもなんでもない赤の他人を殺した場合も含まれるように聞こえて相当ではないと思った。

なお、本日のタイトルを見て、小林薫自身と尊属殺重罰規定との間になにかしらの関連性を感じたならば、それはまったくの誤解である(断るまでもないだろうが)。同様のことは昨日のアサイチにもあって、「ファーストサマーウイカ/打首獄門同好会」と並べて表記すると、まるで清少納言が打首獄門になったみたい、というのはご本人の感想であった。なお、打首獄門同好会のベーシストのjunkoさんが私とタメであることは昨夜のブログにも書いたが、あまりに驚異的で、かつ嬉しいのでここに再掲する次第である。



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