仁淀川の流れは清く、美しかった。
「かんぽの宿伊野」は、仁淀川の傍にあり、温泉もあるということで初日の宿に決めたが、これが大正解だった。部屋は7階の広めの和風ツインベッドで、真下の仁淀川の壮大な流れに、伊野の街がワイドに見渡せる。食事は土佐の食材を集めた「いごっそプラン」で、定番のカツオのたたきからアワビ、地元豚の鉄板焼き、牛のミスジステーキと、食べきれないほどの献立だった。
高知県は温泉不毛地帯で、もとより温泉は期待していなかったが、この宿の温泉は、まあ温泉と言えば温泉…と言う感想。全国の有名温泉を知っているだけに、どうしても辛口評価になる。それでも温泉があるというだけで気持ちが豊かになる。内風呂、露天風呂とも広く、地元の皆さんが多数日帰り入浴に来て楽しんでおられた。なかなか人気の施設のようだ。
来るときはタクシーに乗ったが、帰りは仁淀川の流れを間近で見たかったので、伊野駅まで歩くことにした(2~3キロ)。だいたい川が美しいのは中流までで、下流に行くにつれ、生活排水などで汚れてしまう。ここは中流と下流の間くらいで、感嘆符が出るほど美しくはなかったが、それでも流れは清らかで、アユ釣りをする人も3、4人いた。下流に行くと、「仁淀ブルー」と呼ばれるほどきれいな場所があるらしいが、今回はこれで満足しておこう。次に目指すのは「最後の清流」と言われる四万十川である。
伊野から特急あしずりで1時間半、四万十市の中村駅に到着した。いや、高知県は横に長い。地元の人が言っていたが、東京から最も遠いのがこのあたりだそうで、それは大阪から来ても感じた。電車でノンストップでくれば6時間以上かかる。ほとんど移動時間で一日つぶれてしまう感じである。
宿は迷いに迷った挙句、「新ロイヤルホテル四万十」にした。温泉があり、繁華街のど真ん中にある。朝食設定で8800円はまずまずの値段、夜は地元の居酒屋でうまい酒と新鮮な料理を食べたかった。2日続けて宿の会席料理は飽きてくる。その店はあらかじめ調べていて、ホテルから徒歩5分、「なかひら」という居酒屋だったが、大将が気さくで面白い人だった。
まずは生ビールに刺身の盛り合わせを注文したら、「このカツオの刺身はうまいぜ。3時間前まで泳いでいたんだから…」と、満面の笑顔で盛り付けてくれた。いろいろ話が弾んで3本目の冷酒を頼んだら、「おいおい、飲みすぎじゃない?」と、心配してくれ、「これはサービス」と、有名ブランドの「清水のサバの刺身」を出してくれた。
冷酒300ml×3で900ml、すなわちこの時点で5合の日本酒を飲んだことになる。その後、焼酎の水割りも飲んで、朝起きたら顔が真っ赤っか、相当に血圧が上がっているようでやばかった。体もどよよ~んと重く、ホテルから徒歩8分の四万十川を見に行くのもためらったが、シャワーを浴びてやや復活。ここまで来て、四万十川を見ずに帰ることはできない。仁淀川と四万十川、果たしてどちらが真の清流だったのか?結果は意外な方向へ(続く)