蛍のひとりごと

徒然に、心に浮かんでくる地唄のお話を、気ままに綴ってみるのも楽しそう、、、

お象牙の不思議

2007年01月30日 | 楽器のおはなし
かつて、薄赤く色づいた丸撥(お象牙の撥)を拝見したことがございます。
滝沢先生は、見事な真っ黄色に色づいた丸撥に某所でお出会いなさいましたとか・・・。

お象牙には、ナント、まわりの色が移ってしまうという不思議な性質があるのです。

前記の赤く色づいた丸撥は、そうとは知らない方が、赤いつや布巾をお使いになっていらしたために、そういう残念なことになってしまいました。悲惨な状況でしたが磨きにかけましたら、なんとか目立たなくなりました。少し安心です。
ですから、お象牙の撥は、必ず真っ白なつや布巾に一旦包んでから、撥入れにおしまい下さい。
白いつや布巾をお持ちでない場合には、白い無地のハンカチを二枚重ねてお使いになられればよろしいでしょう。では、豪華なレースをあしらってあるステキなハンカチは?・・・真っ白でしたら、もちろん大丈夫です。





お象牙の箏柱も同様ではございますが、こちらは、つや布巾に包んだりいたしませんので、これまでは幸いにも、色づいたお道具に愕然とさせられるという悲しい経験をしないですんでおりました。

ところがつい先日のことでございます。
極くうっすらと、いくらか生成りのような色に染まり始めているお象牙の箏柱に出会ってしまいました???。不思議に思って拝見いたしましたら、お象牙の柱入れの中のビロードが可愛い橙色で出来ているのでございます。しばし茫然・・・。

私は、この柱入れを製造なさった業者様に苦情を申し上げたいと思いました。こんな高価な柱入れに、まさか、プラスティックの柱を入れるはずもございませんのに・・・。
ブツブツ・・・
大切なお道具でございますから、どうぞ皆様、ご購入の際にはくれぐれもご注意下さいませ。

もっとも、このお柱の場合は幸いなことに、まだあまり年月を経ておりませんでしたので、私のような神経質なものが目を尖らせない限り、殆ど気がつかない程度の色づき具合でございました。すぐさま、まっとうな柱入れのお買い替えをお薦めいたしましたので、今はお象牙もヤレヤレとさぞホッとしていることでしょう。

余談でございますが、このお柱は、面取りをしておりませんでした。箏柱が角張っておりますと、お柱を動かすたびに、大切なお箏のお顔を少しずつ削ってしまいます。お箏が痛がって泣いているようで可哀相。
お柱は必ず面取りをして、どうぞ優しくしてあげて下さいませね。





昨日は、わざわざ横浜のお教室まで亀屋さんにお越し頂きまして、サワリの具合などはその場で直していただき、棹直しの分はお持帰り頂きました。いつも面倒な修理ばかりお引き受けいただいて、有難く思っております。それぞれにご縁があって、いつの間にか集まっているマイファミリーの11丁のお三味線と13面のお箏達、どれも継子にしないよう、公平に変わりばんこに弾いてあげたいので私も必死です。そして定期的に必要なメンテナンスは、お三味線屋さんやお箏屋さんの大きなお力を頼りにいたしております。





今日は久しぶりのお休みの午後。
窓から見える柔らかな明るい日差しにうっとりしながら、『夕べの雲』のひとうための作譜に取り掛かっております。


       憂しと見るも月の影
       嬉しと見るも月の影
       薄雲のたなびきて
       心の色ぞほのめく

そのうち、ご披露できると嬉しいです・・・