皮肉なことに、小説を書くことからしばらく距離を置いてみようと決めてから、
こういう本がじっくり読めるようになりました。
小説家になることにこだわらなくても、別の選択肢もあるのではないか、それはいつも考えています。
ただ、距離を置く、というのは、今一度冷静になって、ちょっと高い位置から物事を俯瞰してみる、
何をなすべきか考えてみる、ということです。
この本の著者の大沢在昌さんは、23歳で小説家デビューされているのですが、
それから11年間もの間、本がほとんど売れなかったそうです。
28作も書いたがすべて初版止まりで、「永久初版作家」と呼ばれたといいます。
たいへんな苦労ですが、今はその当時よりももっと厳しいといいます。
売れない新人に28作も書かせてくれる、そんな余裕のある出版社はどこにもないそうです。
そんな中で、小説の世界に殴り込み、プロの小説家たちと渡り合っていくには、
やはり勉強するしかない、しかもその勉強は生涯続く、とこの本には書かれています。
具体的には、本をたくさん読むこと、幅広く読むこと、それしかないのですね。
僕もそれなりに読書はしていましたが、まだまだ圧倒的に足りない、とわかりました。
焦って書いていた頃は、そうしたアドバイスも、ろくに耳に入っていなかったように思います。
まあ過去のことは変えられない、変えられるのは現在だけ、現在を変えられればおのずと未来も変わる、
それは何も、小説に限ったことではないと思います。
そんなことを気づかせてくれる本でした。