約20年ぶりにピーターウェアの傑作「危険な年」を観た。
この映画をはじめて観たのは高校生の時だったか、、人生の最も多感な時期に出会った作品であるせいか、未だに思い入れが深くて大好きな一本だ。
主演はメル・ギブソンとシガニー・ウィバー。
特にシガニー・ウィバーはこの映画を観て以来大ファンになった。
舞台はスカルノ政権末期のインドネシア。
オーストラリア国営放送のジャカルタ特派員として赴任したガイは、アジア的熱気と混沌とが支配するその街で小人のカメラマン、ビリーと美しいイギリス大使秘書、ジルに出会う。
スカルノ政権が終焉へと向かいつつあるきな臭さの中で、世界中から集まったジャーナリスト達は、より刺激的な記事を追い求めて躍起となっていた。
彼らたちにとっては、ありふれた貧困と飢餓のニュースなどなんの価値も持たなかったのである。
当時のジャカルタでは米ドル札一枚が人の生死を左右した。
女達は日々の糧のために身を売り、男達は地べたにこぼれた僅かな米を奪い合った。
そこにあるのは死にゆく者と生き抜こうとする者との狂おしいほどの鬩ぎあいだ。
資本主義か?共産主義か?
星条旗か?赤色旗か?
一見使い古された二項対立の構図が生々しい意味を持つ世界がそこにはあった。
共産主義への熱い期待が幻影に変わる時代。
アメリカではレッドパージの嵐が吹き荒れ、チャップリンは大陸を追われる。
一方、再軍備要求を突きつけられた日本は、下山、三鷹、松川事件などを契機として急速に防共の砦としての地位を確立してゆく。
そして東西冷戦構造が崩壊した今、世界はアメリカという強大な秩序を手に入れた。
その影で共産主義は歴史的な敗北を喫し、既に役割を終えたかに見える。
しかし今の僕には、富を分け与え、人類の共生を目指すという思想が“悪”だと言い切る確固たる自信はない。
大国のエゴに翻弄されるまま富を吸い尽くされ、戦火に巻き込まれて自滅してゆく東アジアの人々に“自由”と“民主主義”を説くことの欺瞞!
「危険な年」は、共産主義が人々にとって唯一の希望となり得た時代を鮮やかに描き出す。
結果としてイデオロギーは人々の生活を豊かにはしなかったけれども、アジアの大地に蠢く“生きる力”の存在を僕はこの僅か120分足らずの映画の中に垣間見る思いがした。
この映画をはじめて観たのは高校生の時だったか、、人生の最も多感な時期に出会った作品であるせいか、未だに思い入れが深くて大好きな一本だ。
主演はメル・ギブソンとシガニー・ウィバー。
特にシガニー・ウィバーはこの映画を観て以来大ファンになった。
舞台はスカルノ政権末期のインドネシア。
オーストラリア国営放送のジャカルタ特派員として赴任したガイは、アジア的熱気と混沌とが支配するその街で小人のカメラマン、ビリーと美しいイギリス大使秘書、ジルに出会う。
スカルノ政権が終焉へと向かいつつあるきな臭さの中で、世界中から集まったジャーナリスト達は、より刺激的な記事を追い求めて躍起となっていた。
彼らたちにとっては、ありふれた貧困と飢餓のニュースなどなんの価値も持たなかったのである。
当時のジャカルタでは米ドル札一枚が人の生死を左右した。
女達は日々の糧のために身を売り、男達は地べたにこぼれた僅かな米を奪い合った。
そこにあるのは死にゆく者と生き抜こうとする者との狂おしいほどの鬩ぎあいだ。
資本主義か?共産主義か?
星条旗か?赤色旗か?
一見使い古された二項対立の構図が生々しい意味を持つ世界がそこにはあった。
共産主義への熱い期待が幻影に変わる時代。
アメリカではレッドパージの嵐が吹き荒れ、チャップリンは大陸を追われる。
一方、再軍備要求を突きつけられた日本は、下山、三鷹、松川事件などを契機として急速に防共の砦としての地位を確立してゆく。
そして東西冷戦構造が崩壊した今、世界はアメリカという強大な秩序を手に入れた。
その影で共産主義は歴史的な敗北を喫し、既に役割を終えたかに見える。
しかし今の僕には、富を分け与え、人類の共生を目指すという思想が“悪”だと言い切る確固たる自信はない。
大国のエゴに翻弄されるまま富を吸い尽くされ、戦火に巻き込まれて自滅してゆく東アジアの人々に“自由”と“民主主義”を説くことの欺瞞!
「危険な年」は、共産主義が人々にとって唯一の希望となり得た時代を鮮やかに描き出す。
結果としてイデオロギーは人々の生活を豊かにはしなかったけれども、アジアの大地に蠢く“生きる力”の存在を僕はこの僅か120分足らずの映画の中に垣間見る思いがした。
ネタバレはしませんが、この作品の個人的な不満点を挙げるといわゆるHollywood Endingなところで、僕としては、妻の必死の呼びかけに主人公(そう、Jeff Bridgesです)が振り返るところで終わって欲しかったですね。
その意味では、ガリポリのエンディングは余韻が残って好かったです。オーストラリア時代の作品だからでしょうか。
そうです。
文中にはあまり触れませんでしたが、
この映画の功労者はなんといってもビリー役のリンダハントですね。彼女(でいいんですよね?)の演技は本当に素晴らしいです。全く同感。
藤井さん。
“フィアレス”ってありましたねー
ジェフブリッジスですよね、確か。
観てないんですよ。
でも藤井さんのお勧めなら是非観てみたいですね。
実は個人的には“モスキートコースト”以降のピーターウェア(日本語だとどっちの表記が一般的なのでしょうか、、)はよくないっていう勝手な思い込みがあって、“トゥルーマンショー”ぐらいしか観てなかったんです(僕個人としてはトゥルーマンショーもいまいちでしたが、、)。
でも、最近それ以降の作品も観てみようかなと思うようになりました。
ちなみに、自分の好きなピーターウェア作品は、なんと言ってもこの“危険な年”と“刑事ジョンブック”ですね。
“ガリポリ”もとてもよかった。あと“ピクニックアットハンギングロック”も、、、
詳しくは書きませんが、飛行機事故で生き延びた主人公の精神や行動の描き方に個人的には感じるものがあります。
メル・ギブソンは監督と同じオーストラリア出身という繋がりでしょう。
ピーターウェアは駆け出しのメルギブソンを抜擢するなんて、見る目があったのね。
これはずいぶん前の映画だけど、今のアジアもあんまりかわってないんじゃないかな~?と思ってしまいます。
資本主義に変わっていっても、貧富の差が激しくてみんなが幸せに暮らせるとしても、何十年もかかりそう。