MY LIFE AS A DOG

ワイングラスの向こうに人生が見える

「悪」と戦う

2014年01月15日 22時21分55秒 | 映画
「患者よがんと闘うな」の話は少しお休みして、

今日読んだ高橋源一郎氏の“「悪」と戦う”の感想を書くことにします。

ちなみに、近藤誠氏のことを書いてから、1日のアクセス数が急に増えました。

それだけ近藤氏の言動に興味をもっていらっしゃるかたが多いということなのでしょうか。


さて、“「悪」と戦う”。

単行本で読んだのですが、かなり分厚いので、果してどれだけ長大な小説かと思いきや、

半日もかからずに読了。

文字が大きくて読みやすいのであれよあれよという間に読み進むことができます。

「悪」と戦うなんていうタイトルですから、どこにでもあるアメリカ的な善悪二元論のヒーローものか??

なんて思いましたが、さにあらず。

「悪」がカッコ付きになっているのもみそです。

ストーリーは単純で、主人公のランちゃんが様々な悪を退治するというお話です(簡略化しすぎ?)。

あまりに単純なので、

巷に溢れているレビューなどをみますと

「結局、ひとは見かけによらないってことが言いたいだけなのでしょうか?」みたいに身も蓋もないものもありました。

しかし、筆者をして「いまのぼくには、これ以上の小説は書けません」と言わしめるほどの小説が、

単なる刹那的、享楽的なエンターテインメントであるはずはありません。

本書を読み終えた後、

高橋氏ご自身による、『「悪」と戦う」メイキング』というツイートのまとめを読んで、本書に込められた様々な思いを知り、

さらに胸が熱くなりました。

『関与していないことについて、わたしたちは有責である』だなんて、なんというアクロバティックな考え方でしょうか。

以前、読んだエマニュエル・レヴィナスの思想にも通じる、極めて重要な視座がこの小説には伏流しているように思います(正確に言うと、内田樹氏によるレヴィナスの解説書を読んだということなのですが。。。)。


“「悪」と戦う”を読んで、手あかにまみれ、最早、廃れて久しいと言われる『小説』という形式は、まだまだ世界を動かす底力を失っていないかもしれないという希望が湧いてきました。
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