MY LIFE AS A DOG

ワイングラスの向こうに人生が見える

時の声

2009年08月20日 22時44分32秒 | 読書

時の声 (創元SF文庫)

J・G・バラードの初期の短編集「時の声」を読む。

日本の初版は1969年というから、すでに初版から40年がたっている。
必然的に訳も相当に古臭い。
たとえば、エアコンを「空気調節装置」などと訳してあるし、チェスの場面ではルークを「城将」と訳してあったりする。

しかし、この古臭い訳文が、いっそうバラードの奇奇怪怪な世界を際立たせている。

精神を病んで自殺を遂げた医師が、プールの底に彫りこんだ不可解な幾何学模様。

プールの底に這い蹲っている、アルマジロに似た怪しげな甲殻動物。

自動車のシールドに走り書きされた96, 688,365,498, 721という意味不明な数字。

すべてが世界の終焉を暗示する。

名著は時代を超えて読み継がれてゆくのだなぁと感じる。

 

 

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