J・G・バラードの初期の短編集「時の声」を読む。
日本の初版は1969年というから、すでに初版から40年がたっている。
必然的に訳も相当に古臭い。
たとえば、エアコンを「空気調節装置」などと訳してあるし、チェスの場面ではルークを「城将」と訳してあったりする。
しかし、この古臭い訳文が、いっそうバラードの奇奇怪怪な世界を際立たせている。
精神を病んで自殺を遂げた医師が、プールの底に彫りこんだ不可解な幾何学模様。
プールの底に這い蹲っている、アルマジロに似た怪しげな甲殻動物。
自動車のシールドに走り書きされた96, 688,365,498, 721という意味不明な数字。
すべてが世界の終焉を暗示する。
名著は時代を超えて読み継がれてゆくのだなぁと感じる。
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