カナダの大学で日本語クラスのティーチングアシスタント(TA)をしていたときのことです。日本語を履修している学生の数人から、わたしの身体が空いているときに、conversation partner(話し相手)になってほしい、と頼まれたことがあります。熱心な学生の願いを断ることはできません。学びたいと言うのであれば、それにとことん付き合うべきだと私は考えます。最終的に、都合が付いたJ君とCさんと話すことになりました。
とある日、そろそろ帰宅時間になったので、話しをまとめようとしていたときのこと、J君から「大塚さんは我慢強いですね」と言われました。わたしはその意味が分からず、「どういうことですか」と尋ねました。すると、J君は「わたしの下手な日本語にずっと付き合ってくれるから我慢強いです」と返答しました。そこでピンときた私は、「英語ではそういうときにYou are patient.と言うのですか。」と訊きました。J君は「そうですね。」と答えてくれました。同じようなやりとりが実はCさんとの会話でもありました。
日本語では、上述のような状況の時には、「我慢強い」という言い方はしません。個人差、地域差があるのかもしれませんが、「我慢強い」という語は、例えば「痛み」とか「暑さ」「寒さ」など不快に思うことに使うと個人的には思います。
もし、J君が言ったことと私の意見が正しければ、我慢強いとpatientにはズレがあるということが言えるのではないでしょうか。J君やCさんがどこから「我慢強い」という語を学んだのかは訊かなかったのですが、もし日本語学習者用の辞書からということであれば、そのズレは記述されるべきことだと思います。【大塚孝一 M1】
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大体辞書でpatientと訳されますね。それかもっとわけのわからない「hardy」とかも書いていたりします(笑)。
私はいまだに「patient」のに満足のいく日本語表現を見つけられません。大塚さんは何かいいのをご存知ですか。
コメントをありがとうございます。そうですか。Joeさんも悩んでいるのですね。Joeさんのコメントから察するに、patientという単語は様々な文脈で用いられそうですね。
もしそうであれば、英語学習者用の英和辞典も日本語学習者用の英和辞典もpatientの例文を出来るだけ多く載せるということが必要になってくると思います。
手元にある英和辞典や英英辞典でpatientを調べましたが、「我慢強い」や「忍耐強い」という訳語がいつも使えるかというとそうではないようです。文脈に応じて、適切な日本語を用いることが必要だということが分かります。