国の借金といわれるものがあります。JIJI.COMによれば、国債と借入金、いわゆる国の借金は2020年3月で1114兆5400億円、国民1人あたり約901万円です。
まず指摘しておきたいのは国の借金とは海外に対する債務です。なので、国債を国の借金というのは表現自体がおかしい。ちなみに海外に対する債務ということは、海外の資産もあるので、両者を合わせた対外純資産を見なければなりません。これは2019年末で364兆5250億、日本は対外純資産保有国世界一位です。これが日本国の純資産ですから、当たり前ですが、日本は金持ち国ということになるわけです。確かにそういう実感は僕のような“平民”にはありませんが。
マスコミがよく言う国の借金とは政府が国民から借りたお金になります。ちなみにgovernment debt。政府の負債ですから、日本国民1人1人の負債ではありません。政府と国民を分けるのは経済学の基本。なんとなく国の借金というと僕たち国民が借金しているようだが、間違い。大学の経済学の最初に習いますが、経済の三主体とは政府・企業・家計です。この違いを念頭においておかないと、通俗的に日本に所属しているのは僕たち1人1人であるから、僕たちの借金とでも思ってしまうわけです。
基本的には政府の赤字は国債です。もちろん返済しますが、大きく分けると3つの機関にしています。1つは預金取扱機関(つまり銀行)、2つ目に保険・年金基金、3つ目が日本銀行です。その他諸々あるのですが、日本銀行が約44%になります。日本銀行は政府の子会社みたいなものですから、相殺されます。大企業がそうでしょう。連結決済です。ちなみに円建て国債ですから問題はないのですが、問題があるような印象を受けると思います。ちなみに日本銀行以外の国際保有率は年々下降傾向にあります。
実は財務省は嘘を付いていないのです。実際の赤字は約1114兆円です。国の借金を記者クラブに伝える時は、それがどう処理されるのかということについて述べません。さらに単純に国民1人当たりに換算すると約901万円と言っているだけで、国民1人1人が借金しているとまでは言っていないのです。
ただ、これら数字がどういう意味を持つのか知らないと、あたかも国民1人901万円の借金がズンと重くのしかかってくるように思えます。あえてミスリードするようにしているのでしょう。少なくとも、報道機関はこれら数字が国民にとってどういう意味を持つのかを解説すべきですが、財務省が伝えたことをそのまま記事にしているだけなんです。
というか、マス・メディアは財務省に忖度して、ミスリードするような報道をしているだけだとさえ考えられます。なんせ現状日本のマス・メディアの最大の情報源は政府ですから。
こう見ると、日本に財政問題ってあるんでしょうかねえ?最近はこういう話もネットでは出てきていますが、なかなか広がってはいないようです。