Drマサ非公認ブログ

働かざる者食うべからずって?

 知り合いが言っていたことを思い出した。

 「働かざる者食うべからず」であると。

 その時は何気ない会話の中だったので、資本主義社会で作り出された考え方じゃないのという程度の受け応えをしただけだった。ちょうど新型コロナウィルスで、国から一律10万円保証されるという話が出てきたので思い出したわけだ。

 「働かざる者食うべからず」はなんと言ってもキリスト教からの言葉である。しかしながら、その意味はよく知られていないと思う。確かにキリスト教の中には神の労働でこの世が作られたので、人間の労働は意味あることとされる。少なくともそう受け取れる。

 新約聖書の中に「働かざる者食うべからず」との言葉があるが、この言葉が発せられる文脈からは、「働きもしない金持ちは食うな」という逆説的な意味だ。僕なりに現代風のアレンジを加えれば、労働もせず、ネットの株取引で金儲けしているやつは飯食う資格はない。あるいは、バカみたいに暴利を貪る経営者には飯食う資格はない。この程度の意味だろう。

 同時に、普通に仕事している者は当然飯が食える。まともな生活ができるのが当たり前ということだ。とすれば、次のような論理が控えている。普通に仕事できる人間が仕事に恵まれなかったり、過酷な労働で賃金が見合わないとすれば、それは社会的なハラスメントである。虐待や差別である。彼らは食うべきであると。

 キリスト教で、労働についてはぶどう園の労働者の譬え話がある。

 

「ぶどう園の主人は、神を比喩的に表す存在であるが、彼は夜明けから出かけて、ぶどう園で働く労働者を探しに行った。そして、労働者たちに、一日につき一デナリオンの約束をした。

主人は、9時ごろ、12時、3時、5時にも労働者を探しに行き、何もしないでいる人たちを呼んだ。そして、一日の終わりに、主人は全員に一デナリオンずつ与えようとした。当然、朝早くから働いていた人たちは、後から来て少ししか働かなかった人と同じ扱いをされることに不平を言った。すると主人は、彼らの報酬は約束どおりのものであると答え、他の人にも同じように支払ってやりたい、それについてねたんではいけないと言った。」

(http://www.archivioradiovaticana.va/storico/2017/09/25/「ぶどう園の労働者」のたとえを観想、教皇、日曜正午の集いで/ja-1338889より)

 

 通常神の御国の話として理解されている。この現実世界では労働量に応じて賃金に差があるが、神の御国ではそれぞれに神が意図する役割があるので差は生じない程度に理解されている。

 違うと思う。私見なのでご容赦いただきたい。ブログに過ぎないので、勝手なことを言わせてもらう。ちなみに私はキリスト教徒ではないので、重ねてご容赦いただきたい。

 僕たちが生きているこの現実世界こそ神の御国でもある。にも関わらず、そうはならない規範や思想が自明となって作用している。神が意図する役割は人間が知ることなどできない不可知である。それだというのに、それを知っているとしているからこそ、差がつくのを当然とするのである。賃金の差というのはこのような不可知を知っているとする錯誤から生じている。

 不可知である領域が存在することを意識化すれば、どのような人間も神の役割を担っているのであり、神の前に平等なのである。だから、労働量の大小とは無関係に報酬を得ることになんら矛盾はない。

 ゆえに「働かざる者食うべからず」は人間の知的限界の中での思想に過ぎない。なぜなら、人間から見れば働いていない者は実は神の意図する役割を実践しているからである。働かざる者も当然食っていいのである。誰もが働かなくても食っていいのである。

 「働かざる者食うべからず」や労働に過剰な価値を置く社会は近代社会の特徴にすぎない。この価値意識を共有するのが共産主義思想でもあるだろう。

 現代社会は資本主義社会であり、金をクレジットとして共有する社会である。そのため、生活するために金が必要となる社会であるのはわざわざ断る必要もないことだ。確かに金が幅をきかせすぎたかもしれない。しかしながら、新型コロナウィルスの現在、そのような社会ステムを一掃するわけにもいかないので、労働しないと生活に必要な金がないことになる。食う事もできなくなる。 

 ところが、資本主義の発達は十分な生活物資の生産力を持っている。だから金を配ればいい。そうすれば、生活物資は手に入る。それだけのことだ。ただ変なところで金が留まってしまったり、必要な物資が留まらないようには注意しなければならないかなとは思う。

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