スポーツメンタルトレーナーの小噺

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第四回メンタルトレーニング講義:リラクセーション

2004年12月28日 | メンタルトレーニング講義
 久々の第四回です。第二回の講義でも述べたように、ここではわかりやすくリラクセーションとしていますが、本来は適切な緊張状態を作り出すことです。多くの選手が適切な緊張状態よりも緊張しすぎる過緊張・あがりが原因で本来の力を発揮できないことが多いので、緊張を和らげるリラクセーションという言葉がよく使われているようです。しかし、逆にある程度の緊張感がないとやはり本来の力を発揮できません。緊張感を高めるような場合はサイキングアップやアクティベーションなどの言葉が用いられます。リズムのいい音楽を使ったり、呼吸を意識的に速くすることなどが緊張感を高める効果があります。しかし、ここでは多くのアスリートがより必要としているリラクセーションのスキルを中心に紹介します。

1.呼吸法
以下に述べる方法にも共通して言えることですが、基本的に身体と心が結びついているという観点からこれらの方法が効果的であると考えています。呼吸をゆっくりすることで生理的なリラックスが生じ、それが心理的なリラックスに繋がるということです。腹式呼吸で吸うのは速めに、吐くのはゆっくりが一般的だと言われていますが、色々自分に合う方法を模索して見つけてほしいと思います。最初は仰向けの状態→座っている状態→立っている状態と順を追ってやってみてください。

2.漸進的筋弛緩法
自分が緊張していると思う部分を、意図的に力を入れて筋を緊張させ、力を抜くことで得られるリラックスした感じが心理的なリラックスに繋がっていくという方法です。手・足・肩などに思いっきり力を入れて3秒ほど呼吸をとめ、ゆっくりと筋が弛緩していくのを自分がリラックスしていくのを感じてください。

3.自律訓練法
この方法は催眠の研究から生まれた方法です。みなさんもリラックスしているときに腕がダランとして重たく感じたことはありませんか?腕が重たく感じたり、温かく感じたりすることがこの方法ではリラックスしているということになります。

4.イメージ法
まずイメージの中でリハーサルを行って、試合への心構えを作っておくイメージリハーサルという方法があります。また、自分がリラックスできる風景などをイメージすることもリラックスに繋がるかもしれません。

その他にも、認知的にポジティヴなことを考え、緊張を取り除く方法や、自分の好きな音楽や、比較的スローテンポの曲を聴くこと、アップのときなどに身体的緊張の中に心理的緊張を紛れ込ませる方法などがあります。みなさんも他に何かとっておきのリラックス法があったら教えてくださいね。

第三回メンタルトレーニング講義:目標設定

2004年10月07日 | メンタルトレーニング講義
 大分間が空いてしまいましたが、久々にメンタルトレーニング講義を再開したいと思います。本日のお題は目標設定。多くのスポーツメンタルトレーニングに関する書籍の中でも始めに取り上げられることが多い話題です。
 第二回メンタルトレーニング講義:メンタルトレーニングの目指す状態の3.意欲に大きく関連することで、どのようにモチベーション、動機付けを高めればいいかに関する答えの1つが目標設定にあると思います。それでは実際に目標設定を行う上でどういうことが重要なのか、どのような点に気をつけたら良いのかを考えてみましょう。次に挙げる五箇条が目標設定における大原則です。

短期的な目標であること
長期的な目標も視野に置きながら、それに繋がるなるべく身近な目標を立てるべきである
挑戦的な目標であること
すぐに達成できるような達成目標にせず成功か失敗か五分五分ぐらいのある程度難易度のある目標に設定すべきである
具体的な目標であること
抽象的な表現ではなく、時には数字などを用いた明確で具体的な目標にすべきである
現実的な目標であること
現実とあまりにもかけ離れた目標ではなく、できるだけ高い目標を掲げながらも実現の可能性がある目標にしなければならない
コントロール可能な目標であること
自分でどうにもならないような対象(相手や自然条件など)を目標にせずに自分で出来ることを目標にすべきである

それぞれの頭文字をとって[たちくけこ]と覚えていただければ・・・ちょっと強引!?
 これらは原則であって、こうしなければならないといったものではありません。例えば、タイムや自分の動きなどを目標にするよりも「相手に勝つ」という目標のほうが良い結果をもたらすことも多いと思います。その選手の性格的にはそういった目標設定のやり方のほうが合っていると思うのであれば、それで構わないと思います。しかしこの五原則は中々使えると思いますよ。何もこれはスポーツに限ったことではなく、ビジネスなどにも勿論当てはまると思います。みなさんにも一度自分の色々な目標を見つめ直していただければと思います。

第二回メンタルトレーニング講義:メンタルトレーニングの目指す状態

2004年07月30日 | メンタルトレーニング講義
 ずいぶん間が空いてしまいましたが、今日は第二回のメンタルトレーニング講義を行いたいと思います。テーマはメンタルトレーニングの目指す状態・ゴール。オリンピックも間近ということで、その前にやっておきたかったテーマです。
 選手にとって成績を残すことが最大のテーマであろうことは予測がつきますが、それは最終的な結果であって、その過程がより重要になってくると思います。そのスポーツをやっていること自体が楽しいとしたら、さらにそれに結果がついてくれば最高だと思いませんか?みなさんも特に子供の頃、友達と遊んだり、おもちゃで遊んだり、ままごとをしたり、砂場で遊んだりして、気付いたらもう空は暗くていつの間にこんなに時間が経ったんだと感じたことはありませんか?そのときは、その楽しい時間に没頭してとてつもない集中力を発揮していたんですね。そのような状態Flow(フロー)こそが私の研究テーマなのです。
 私は今度のアテネオリンピックに出場する3選手なども含まれたトップレベルの選手へのインタビューの結果、6つのあるべき競技前の状態を再発見しました。
1.リラックス
ここではリラックスとしているが、適度な緊張状態のこと。
2.自信
練習やコンディションがよく反映されている。
3.意欲
挑戦的な目標、明確な目標。舞台の大きさなども関係。
4.集中
意図的な集中の高め方はあまり見られなかったが、自然にできているときに結果的にFlowになっている。
5.マイナス要因の欠如
不安や緊張など競技以外のことにエネルギーを使わなくてすむ状態。
6.肯定的な感情
嬉しい、楽しいといったポジティブな感情がいい影響を及ぼす。
 これら6つの状態がそろえば、Flowになる確率も高くなり、いいパフォーマンスができる確率も高まると思います。オリンピック前後の選手のインタビューなどにもこのような事象の良い・悪い例が出てくると思われるので、みなさんも目や耳を傾けてみてください。
では、またそれぞれの詳しい内容はおいおいということで…。

第一回メンタルトレーニング講義:スポーツにおける心理面の重要性

2004年06月18日 | メンタルトレーニング講義
 今日から新シリーズ、メンタルトレーニング(以下MT)講義を始めたいと思います。真情を吐露すると「ネタ切れのときに使おう」です。メンタルトレーニングという言葉が適切かどうかわかりませんが、みなさんにも一番馴染みのある言葉だと思うので、ここではメンタルトレーニングという言葉を使わせていただきます。内容についてはもう少し範囲を広げてやっていけたらと思っています。また書籍なども紹介していきたいと思います。
 今回の第一回のテーマはスポーツにおける心理面の重要性です。みなさんもご存知のように“心技体”という言葉がよく使われますし、選手や監督のインタビューなんかを聞いていても精神面の重要度についてのコメントが多く見られます。しかし技術的なトレーナー(コーチ)、フィジカルトレーナーに比べてメンタルトレーナーがあまり市民権を得てるとは思えません。あっ、すいません。ついつい愚痴を・・・。
 一番身近で一般的な例として、みなさんも試合等で実力を発揮できなかった選手を目にしてきたことがあると思います。あるいはご自身にも経験があるかもしれません。その他にも、選手同士あるいは指導者と選手のコミュニケーション、マスコミへの対応、練習への取り組み方、戦術・戦略、団体競技であれば選手の配置などにも心理面が関わってきます。競技を行う選手が人間である以上、技術や体力トレーニングを行っていても心理面は関わってくるのです。そのために選手の潜在的な能力を引き出し、実際の競技場面でそのとき持っている能力を100%発揮させることを目的とするMTが助けの一部になるのです。
 では、また次回に。