フランスの訪問日程も前半が終了しました。これまでの海外でのヒアリングと言えば、数人で行うため、先輩議員の質問が終わるのを待って最後に発言というパターンでしたが、今回は一人ですので、何しろ密度が違います。政府の担当者、研究者、国際機関の担当者と、かなり突っ込んだ意見交換ができました。個別のやり取りをご紹介したいところですが、相手の立場がありますので、そういうわけにもいきません。
明日(3日)から、施設の視察と企業担当者との面談がありますので、一段落した時点で、まとめて報告することにします。
今回は、大統領選挙についてレポートします。実は、今まさにフランスでは、サルコジ候補とロワイヤル候補とのディベートが行われています。最初の投票で候補者は4人から2人に絞られ、6日の日曜日に決選投票が行われる大統領選挙。クライマックスとも言えるディベートです。私の見立ては、ディベートの感想も踏まえて最後に書きます。
情勢に入る前に、うんちくを少々。フランスでは、大統領に権限が集中しています。初日に国民議会(衆議院に相当)を見学にいってきたのですが、大統領は議事堂に入ることはなく、答弁は首相を初め閣僚の役割になっています。最高権力者が国民の代表の前で発言する機会がないのは不自然に思えるのですが、モンテスキューの三権分立、ドゴール大統領の権限強化策などの歴史が積み重ねられ、フランス式の議会制民主主義が確立されて、こうなっているそうです。議会に姿を見せないにも関わらず、大統領には、議会の承認を得ずに法律を通す権限もあるというのですから、権限は絶大です。
面談した議員が、フランスの大統領を天皇陛下と比較していたのは、それだけ大統領の格を示しているのでしょう。ミッテラン大統領もシラク大統領も、左右立場は異なりますが、家父長的な威厳と、老獪さを持ち合わせているのは、フランスの大統領が持つ格と関係ありそうです。大統領選挙の投票率が80%を超えるのも、何となくうなずけます。
外務省の計らいで、1日にパリ市内のスタジアムで行われたロワイヤル候補を盛り立てる社会党の集会に潜り込むことに成功しました。フランス全土から動員をかけたらしく、会場一帯はバスと自家用車で大渋滞。昼間のメーデーの行事がほとんど行われておらず拍子抜けしていただけに、6万人(主催者発表)が参加した集会は壮観でした。写真は会場で撮ったものです。
ミュージシャンが盛り上げるお決まりのパターン(日本では政党の集会にメジャーなミュージシャンは来ませんが・・・)。マイノリティに混じって、中高生と思しき若い世代が参加していたのには驚きました。シラク・ドビルパン政権下で、疎外されてきた層が蜂起している印象です。
ボルテージが最高潮に達したところで登場したロワイヤル候補を、聴衆が熱狂的に迎えます。人だかりの中で、スタジアムを縦断する本人の姿を何とか捉えることができましたが、本人は疲労の色が濃く、弱々しい印象でした。握手の仕方、大衆の前に立った時の所作、表情などからは、カリスマ性は感じられません。
演説は1時間に及びました。労働者の権利と社会の融和を繰り返し訴えます。日本の民主党の立場よりも、はるかに労働者階級の立場を明確に代弁する内容です。スピーチライターの問題でしょうか、演説そのものが散漫な印象です。唯一、強いフランスを訴えた部分は、保守層の取り込みを狙ったものでしゅうが、候補者のイメージとのギャップが大きく、取り込みに成功しているとは思えません。
大量の移民を抱えるフランス社会。パリの街を歩いていても、「社会の融和」の必要性を感じるのですが、残念ながら、ロワイヤル候補は挑戦者としては力量不足との印象です。冒頭で書いたフランス大統領の立場を考えるとなおさらです。
さて、2時間のディベートの方は、後半に入りました。フランス語はさっぱり分かりませんので、内容は後で確認するしかありませんが、映像を見る限り、強気で押すサルコジ候補に、ロワイヤル候補が突っかかる場面が目立ちます。ロワイヤル氏の必死の巻き返しです。私はサルコジ候補、圧倒的優位と見ますが、大逆転があるのかどうか。
外交関係者と議論していても、両候補の外交政策は見えてきません。世界でもまれの知日派であったシラク大統領の後の日仏関係、シラク大統領が寛容な態度を貫いてきた対中関係、そして、イラク戦争で微妙な距離を維持してきた対米関係。大統領選挙の中で、外交論争はほとんど行われなかったのは残念です。
ただ、長く続いたシラク大統領の後で、新たな大統領と国民との関係は変化することになるでしょう。サルコジ、ロワイヤル両氏とも、国民議会に出てきて答弁する構えを見せています。実現するかどうかは不明ですが、国民との距離を縮めたいとの思いが両者にあるのでしょう。
私がフランスを発つ6日の夕方には、結果が出ます(米国の大統領選挙のようなことは絶対にないと、政府関係者は断言していました)。大統領選挙の結果とフランス国民の反応を見届けてから、帰国したいと考えています。
明日(3日)から、施設の視察と企業担当者との面談がありますので、一段落した時点で、まとめて報告することにします。
今回は、大統領選挙についてレポートします。実は、今まさにフランスでは、サルコジ候補とロワイヤル候補とのディベートが行われています。最初の投票で候補者は4人から2人に絞られ、6日の日曜日に決選投票が行われる大統領選挙。クライマックスとも言えるディベートです。私の見立ては、ディベートの感想も踏まえて最後に書きます。
情勢に入る前に、うんちくを少々。フランスでは、大統領に権限が集中しています。初日に国民議会(衆議院に相当)を見学にいってきたのですが、大統領は議事堂に入ることはなく、答弁は首相を初め閣僚の役割になっています。最高権力者が国民の代表の前で発言する機会がないのは不自然に思えるのですが、モンテスキューの三権分立、ドゴール大統領の権限強化策などの歴史が積み重ねられ、フランス式の議会制民主主義が確立されて、こうなっているそうです。議会に姿を見せないにも関わらず、大統領には、議会の承認を得ずに法律を通す権限もあるというのですから、権限は絶大です。
面談した議員が、フランスの大統領を天皇陛下と比較していたのは、それだけ大統領の格を示しているのでしょう。ミッテラン大統領もシラク大統領も、左右立場は異なりますが、家父長的な威厳と、老獪さを持ち合わせているのは、フランスの大統領が持つ格と関係ありそうです。大統領選挙の投票率が80%を超えるのも、何となくうなずけます。
外務省の計らいで、1日にパリ市内のスタジアムで行われたロワイヤル候補を盛り立てる社会党の集会に潜り込むことに成功しました。フランス全土から動員をかけたらしく、会場一帯はバスと自家用車で大渋滞。昼間のメーデーの行事がほとんど行われておらず拍子抜けしていただけに、6万人(主催者発表)が参加した集会は壮観でした。写真は会場で撮ったものです。
ミュージシャンが盛り上げるお決まりのパターン(日本では政党の集会にメジャーなミュージシャンは来ませんが・・・)。マイノリティに混じって、中高生と思しき若い世代が参加していたのには驚きました。シラク・ドビルパン政権下で、疎外されてきた層が蜂起している印象です。
ボルテージが最高潮に達したところで登場したロワイヤル候補を、聴衆が熱狂的に迎えます。人だかりの中で、スタジアムを縦断する本人の姿を何とか捉えることができましたが、本人は疲労の色が濃く、弱々しい印象でした。握手の仕方、大衆の前に立った時の所作、表情などからは、カリスマ性は感じられません。
演説は1時間に及びました。労働者の権利と社会の融和を繰り返し訴えます。日本の民主党の立場よりも、はるかに労働者階級の立場を明確に代弁する内容です。スピーチライターの問題でしょうか、演説そのものが散漫な印象です。唯一、強いフランスを訴えた部分は、保守層の取り込みを狙ったものでしゅうが、候補者のイメージとのギャップが大きく、取り込みに成功しているとは思えません。
大量の移民を抱えるフランス社会。パリの街を歩いていても、「社会の融和」の必要性を感じるのですが、残念ながら、ロワイヤル候補は挑戦者としては力量不足との印象です。冒頭で書いたフランス大統領の立場を考えるとなおさらです。
さて、2時間のディベートの方は、後半に入りました。フランス語はさっぱり分かりませんので、内容は後で確認するしかありませんが、映像を見る限り、強気で押すサルコジ候補に、ロワイヤル候補が突っかかる場面が目立ちます。ロワイヤル氏の必死の巻き返しです。私はサルコジ候補、圧倒的優位と見ますが、大逆転があるのかどうか。
外交関係者と議論していても、両候補の外交政策は見えてきません。世界でもまれの知日派であったシラク大統領の後の日仏関係、シラク大統領が寛容な態度を貫いてきた対中関係、そして、イラク戦争で微妙な距離を維持してきた対米関係。大統領選挙の中で、外交論争はほとんど行われなかったのは残念です。
ただ、長く続いたシラク大統領の後で、新たな大統領と国民との関係は変化することになるでしょう。サルコジ、ロワイヤル両氏とも、国民議会に出てきて答弁する構えを見せています。実現するかどうかは不明ですが、国民との距離を縮めたいとの思いが両者にあるのでしょう。
私がフランスを発つ6日の夕方には、結果が出ます(米国の大統領選挙のようなことは絶対にないと、政府関係者は断言していました)。大統領選挙の結果とフランス国民の反応を見届けてから、帰国したいと考えています。