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伊坂幸太郎「逆ソクラテス」

2022年12月20日 | あ行の作家


集英社
2020年4月 第1刷発行
2020年6月 第2刷発行
276頁


各話の主人公は小学生たち

「逆ソクラテス」
先入観で児童のひとりを見下す担任教師
転校生の提案で何とか担任教師の思い込みをひっくり返そうと算段します

「スロウではない」
走るのが遅いのに運動会のリレーに出場しなければならなくなったメンバーたち
それなり練習して本番の日を迎えますが大事なメンバー1人が怪我をしてしまいます

「非オプティマス」
頼りない担任教師を馬鹿にして授業の邪魔をして楽しむ数人の児童たち
物語が進むと、教師の辛い過去を起点に人と人は思わぬところで繋がっていることがわかってきます

「アンスポーツマンライク」
ミニバスケチームで一緒だった5人の児童
高校生になり当時のコーチが病気と聞いてお見舞いに行った帰り道に不審者に遭遇、不審者逮捕に協力します

「逆ワシントン」
学校を休んだクラスメートの自宅にプリントを届けに行く2人の児童
玄関に出て来た母親の再婚相手という若くて茶髪の新しい父親の態度に不信感を持ち虐待を疑います


5編に共通する大きなテーマは『イジメ』
伊坂さんは、イジメが良くないのを表面をさらりと撫でるのではなく、様々な例を挙げ周囲からじわじわ責めて、相手に話を聞く用意が出来たと見て取ると
イジメはいつか自分の身に降りかかってくるよ、一生リスクを伴うものだよ、と諭します
暴言や暴力で子供を押さえつけ従わせようとする愚かな大人も繰り返し出てきます
そのような大人の“被害者”だった男性が最終話のラストで真面目に働いていると分かってじわっと心が温かくなりました

バスケの世界では試合残り時間1分は永遠だ、とは蓋し名言です


先入観、思い込み、決めつけの怖さに気づいていない
自分がいかに知らないかを知らない人、何もかもわかっている気になっている人
逆ソクラテスとはそんな人々を指すのです



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