小学館2023年8月 初版第1刷発行359頁舞台は令和と昭和の、とある出版社コロナ蔓延の社会で閉塞感と暗いムードの中、女性ファッション誌局から学年誌児童出版局へと意に沿わない異動でやる気をなしている明日香(28歳)そんな折、会社である文林館が出版する児童向けの学年誌100年の歴史を調べるうちに、今は認知症になっている祖母が、戦中に臨時職員として学年誌の編集に関わっていたことを知りますなぜ、祖母はこ . . . 本文を読む
集英社文庫2021年12月 第1刷解説・瀧井朝世169頁売れないタレント・おかえりこと丘えりかは、依頼人に代わり旅をする「旅の代理人」秋田での初仕事を終え、次なる旅先は北海道ある動画に映っている人物が、かつての恋人か確かめてほしいという依頼でした『旅屋おかえり』未収録の札幌・小樽編を書籍化したものです上手く行き過ぎじゃないか、ツッコミながら一気読み依頼人に旅の成果物を見せるところには泣かされました . . . 本文を読む
集英社文庫2014年9月 第1刷2015年6月 第7刷解説・吉田伸子343頁売れない崖っぷちアラサータレント“おかえり”こと丘えりかスポンサーの名前を間違えて連呼したことが原因で唯一のレギュラーだった旅番組を打ち切られた彼女が始めたのは、他人の代わりに旅をする仕事でした満開の桜を求めて秋田県角館へ、依頼人の姪を探して愛媛県内子町へおかえりは行く先々で出会った人々を笑顔に変え . . . 本文を読む
角川文庫2010年7月 初版発行2011年10月 19刷発行391頁不倫する奴なんてバカだと思っていたでもどうしようもない時もある建設会社に勤める渡部は派遣社員の秋葉と不倫の恋に堕ちますしかし、秋葉の家庭は複雑で、両親は離婚、母親は自殺、彼女の横浜の実家では15年前に父の愛人が殺されるという事件まで起こっていました殺人現場で気を失っていた秋葉は真犯人の疑いをかけられながらも沈黙を貫いてきました犯罪 . . . 本文を読む
集英社2015年10月 第1刷発行330頁犬と生きる喜びも、犬を失う悲しみも刻まれた情感溢れる7つの物語白血病の少女と愛犬「トイ・プードル」妻に先立たれた男と愛犬「ミックス」目が不自由な物書きと愛犬「ラブラドールレトリバー」親に顔を噛まれた犬がセラピードッグを目指す「バセットハウンド」病魔に侵された愛犬の安楽死を決断する飼い主「フラットコーデットレトリバー」仕事も家庭も無くし自殺場所を探す男が捨て . . . 本文を読む
集英社2018年6月 第1刷発行418頁9歳で父親を亡くし、東京で母と2人暮らしをしていた中学三年生の広末雨音新しい恋人と渡米する母を嫌い、信州に暮らす叔父の元に身を寄せますバーニーズ・マウンテン・ドッグのワルテルと暮らす山岳カメラマンの叔父・乾道夫は付かず離れず、温かい眼差しで雨音に接します東京とは違うおおらかな風土の中、ワルテルと信頼関係が築かれていき、転校先でできた友人や隣の別荘に時折やって . . . 本文を読む
集英社2013年6月 第1刷発行313頁人間は犬と言葉を交わせないけれど人は犬を理解し、犬も人をよく理解する本当の家族以上に心を交わし合うことができるのだ人と犬を巡る7つの物語言葉を交わせないからこそ、心と心で繋がる関係人より短命な犬との別れには泣かされました犬種によって、性格が違うことくらいは知っていましたが、癌の罹患率が高い、病気になりやすいは知らなかったです犬を飼うのなら、相手としっかり向き . . . 本文を読む
実業之日本社2020年3月 初版発行451頁不当な理由で職場を解雇され、腹いせに罪を犯して逮捕された玲斗そこへ現れた弁護士は、依頼人の指示に従うなら釈放すると提案心当たりはありませんが、その話に乗り、依頼人の待つ場所へ向かうと、そこには伯母だという高齢の女性が待っていました伯母の指示は、先祖代々所縁のある神社の社務所で暮らしながら不思議な言い伝えのあるクスノキの大木の番人を務める、というもの「不思 . . . 本文を読む
PHP文芸文庫2019年11月 第1版第1刷解説・澤田瞳子 「美しさ」を描く小説323頁晩年に建仁寺の「雲龍図」を描いた遅咲きの絵師・海北友松の生涯とは友松が若くして心ならずも寺に入れられた後、近江浅井家に仕えていた実家・海北家が滅亡御家再興を願いながらも絵師の道を選択した友松でしたが、その身に様々な事件が降りかかります安国寺恵瓊との出会い、明智光秀の片腕・斎藤利三との友情、そして本能寺の変へ武人 . . . 本文を読む
文春文庫2022年3月 第1刷207頁色のない世界から色のある世界へ色と記憶をめぐる、記憶や風景に抱かれたシーンを繊細に描き出した18編表題作「オールドレンズの神のもとで」は砂丘を舞台にしたモノクロ写真で知られる写真家・植田正治氏の作品に想を得たもの、とのこと植田氏に関しては福山雅治さんが師匠と仰ぐ写真家、という知識しかありませんでしたが、堀江敏幸さんを読んで作品を見てみたいと思うようになりました . . . 本文を読む
文藝春秋2020年5月 第1刷発行2020年8月 第7刷発行308頁「男と犬」東日本大震災で仕事を失い家族のために犯罪に手を染めた男コンビニで拾った瘦せこけた犬は男の守り神になりました【宮城県】「泥棒と犬」仲間割れを起こした窃盗団の男は守り神の犬を連れて故国を目指します【宮城県~新潟県】「夫婦と犬」壊れかけた夫婦は、その犬をそれぞれ別の名前で呼んでいました【富山県】「娼婦と犬」身体を売って男に貢ぐ . . . 本文を読む
光文社2013年2月 初版1刷発行304頁のべ43人もの介護を受ける高齢者を殺害し、そのうち十分に裏が取れた32件の殺人と1件の傷害致死の容疑で起訴された〈彼〉戦後犯罪史に残る凶悪犯に下された判決は死刑でした殺すことで被害者と被害者の家族を救いました僕がやっていたことは介護です喪失の介護「ロスト・ケア」です検察官・大友の取り調べに対し、そう嘯く〈彼〉自らの行為は正しいと言い切ります大友は、死刑判決 . . . 本文を読む
2017年4月 初版第1刷発行2017年5月 4刷発行277頁短編集です「正月の決意」夫婦で氏神様へ初詣に出かけたところ本殿前に人が倒れていて…最終章の思わぬ展開に流石東野圭吾さん!、納得でした「十年目のバレンタインデー」流行作家として活躍中もスランプに陥っている作家が久しぶりに元カノと会います終盤は筋が読めてしまいましたけど、作家のスランプ理由が案外あるあるだったりして、なぁんて想 . . . 本文を読む
新潮文庫2022年2月 発行2022年2月 2刷解説・安部龍太郎 剣と心330頁歴史上名高い剣客の果し合いを描く短編集史料に基づく歴史小説です「二天の窟(宮本武蔵)」老いた宮本武蔵に傲岸不遜な若者が立会いを挑んできます兵法者としての名声を守るため武蔵がとった行動は…「死闘(神子上典膳)」伊藤一刀斎の弟子である神子上典膳と善鬼の決闘を描きます一刀斎も武蔵と同じく老いによる力の衰えを感じ . . . 本文を読む
文春文庫2011年5月 新装版第1刷2017年8月 第2刷解説・関川夏央 梯子の下の深い闇326頁「父(ちゃん)と呼べ」大工の徳五郎が軽く酒を飲んで帰る途中、たまたま見かけた物盗り騒動下手人の痩せた男は番屋につれていかれ、一緒にいた5歳くらいの男の子が逃げてきます不憫に思った徳五郎はその子を家に連れて帰り、食事を与えます「闇の梯子」まだ若い彫師・清次女房のおたみと裏長屋住まいで、まだ子供はいません . . . 本文を読む