しばらくすると貴志(たかし)は目を覚(さ)ました。ちょうどその時、神崎(かんざき)つくねが心配(しんぱい)して覗(のぞ)き込んでいたので、貴志は思わず声を上げてしまった。つくねは納得(なっとく)できないみたいで、
「えっ、そんなに驚(おどろ)かなくてもいいじゃない。あたしは、心配して…」
貴志は、つくねの顔があまりにも近くにあったので動揺(どうよう)してしまったのだ。貴志は顔を赤くしてまごまごしながら答(こた)えた。「ご、ごめんなさい。そ、そういう…あれじゃ…」
つくねは安心(あんしん)したようで、「もういいわよ。でも、どうして戻(もど)って来たのよ」
貴志は起き上がると、「そ、それは…。父さんが…助(たす)けに行けって…」
柊(ひいらぎ)あずみが口を挟(はさ)んだ。「その話は戻ってからにしましょう。初音(はつね)たちは先に行ってるから、みんなで状況(じょうきょう)を確認(かくにん)して次の作戦(さくせん)を考えましょう」
みんなは貴志を連れてあの場所(ばしょ)に戻ることにした。その頃(ころ)、初音と琴音(ことね)は烏山(からすやま)のふもとにある検問所(けんもんじょ)の近くまで来ていた。そこへトラックがゆっくりと近づいて来る。一般道路(いっぱんどうろ)から外(はず)れた舗装(ほそう)もされていないでこぼこ道なのでスピードを出せないのだ。
二人はトラックの後ろに飛(と)びついた。そして、幌(ほろ)の隙間(すきま)から中を覗いた。荷台(にだい)には木箱(きばこ)などが積(つ)まれているだけで人の気配(けはい)はなかった。検問所に着く頃には、二人は木箱の隙間に身体(からだ)を忍(しの)ばせていた。検問はかなりゆるいものだった。ここまで侵入(しんにゅう)するものはいないとでも思っているのだろう。トラックは検問を通り、あの大きな鉄(てつ)の扉(とびら)を入って行った。
<つぶやき>鉄の扉の中には何があるのでしょうか? 貴志はしずくと再会(さいかい)できるのか。
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