男の前に見知(みし)らぬ女が現れた。その女は男に言った。「迎(むか)えに来ました。戻(もど)りましょう」
男は何を言っているのか分からず訊(き)き返した。すると女は、「あなたの罪(つみ)は許(ゆる)されました。元(もと)の世界(せかい)に戻ることができるんです。あたしと一緒(いっしょ)に行きましょう」
男はますます訳(わけ)が分からなくなって、「元の世界って…。あなたは何を言ってるんだ?」
「まさか、以前(いぜん)の記憶(きおく)が…。あたしのことも思い出せませんか?」
男は首(くび)を傾(かし)げた。女は男を安心(あんしん)させるように、「心配(しんぱい)ないわ。戻って検査(けんさ)をしましょう。きっと思い出せるはずよ。今、あたしたちの世界は滅(ほろ)びようとしてるの。それを止(と)められるのは、あなただけです。あなたの頭脳(ずのう)が必要(ひつよう)なんです。あたしたちを助(たす)けて下さい」
男はあまりにも突拍子(とっぴょうし)もない話しなので、「そんなこと言われても…。あなたの言ってる世界がどんなものなのか知りませんが…、私は普通(ふつう)のサラリーマンです。私にあなたたちを助けることなんかできるはずがない。きっと、あなたは人違(ひとちが)いをしてるんですよ」
女は必死(ひっし)に懇願(こんがん)して、「もう時間がないんです。すぐに戻ってください」
「どこに戻れと言うんですか? 私には妻(つま)も子供(こども)もいます。私には関係(かんけい)ないことだ!」
女は意(い)を決(けっ)したように、「残念(ざんねん)です。こんなことは、したくはなかった」
女は銃(じゅう)のようなものを男に向けると、男をめがけて光(ひかり)が発射(はっしゃ)された。すると、男の姿(すがた)は一瞬(いっしゅん)にして消(き)えてしまった。女はそれを確認(かくにん)すると、何処(いずこ)ともなく姿を消(け)した。
<つぶやき>男はどうなっちゃったのよ。本当に、別の世界からやって来てたのかなぁ?
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