彼女はある男性から告白(こくはく)された。仕事(しごと)で顔を合わせている知り合いではあるのだが、彼女は恋愛対象(れんあいたいしょう)としては見ていなかった。まさかその男性が、自分のことを好(す)きになっていたなんて、思ってもみなかった。
今、彼女は好きな人がいるわけでもなく、かといってずっと一人でいたいとも思っていない。彼女は、「付き合っちゃおうかなぁ」と思い始めていた。しかし、彼女はふと考えた。
「この人、あたしのどこが好きなのかな?」
彼女はごく普通(ふつう)の女の子。美人(びじん)というわけでもなく、仕事のスキルも人並(ひとな)みだ。そんな彼女のどこに惹(ひ)かれたのか? 彼女の頭の中にはクエスチョンが増殖(ぞうしょく)を始めていた。それを加速(かそく)するように、別の考えが膨(ふく)らみだした。
「あたし、この人のこと何も知らないわ。仕事の話ししかしてないし、プライベートのことなんかまったく…。それに、この人、あたしの何を知ってるっていうの?」
彼女のもやもやは、もはや彼女の中に押(お)し止(と)めることができなくなっていた。ついに、彼女の口からこぼれ始めた。彼女は目の前の男性に向かって言った。
「質問(しつもん)、いいですか? あなたは、あたしのどこが好きなんですか? 他(ほか)の女性じゃなくて、何であたしを選(えら)んだのか教(おし)えて下さい」
男性は意表(いひょう)をつかれたようだ。何も答(こた)えられずに立ちつくしていた。
<つぶやき>この人は、そんなに深(ふか)く考えてないと思うよ。とりあえず、友だちからで…。
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