みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0078「もうひとりの自分4」

2017-10-04 19:29:34 | ブログ短編

 さおりは落ち着かない様子(ようす)で摩天楼(まてんろう)に入って行った。今までこんな華(はな)やかなドレスは着たことがなかったのだ。神谷(かみや)はもう先に来ていて、手を挙(あ)げてさおりを呼(よ)んだ。
 二人だけの食事はとても楽しいものだった。神谷は女性の扱(あつか)いがうまくて、話題(わだい)も豊富(ほうふ)で飽(あ)きさせることがなかった。きっと、何人もの女性と付き合ってきたのだろう。
 食事の後、さおりはバーでほろ酔(よ)い気分(きぶん)で神谷のおしゃべりを聞いていた。その時、
「あら、裕二(ゆうじ)さん」と妖艶(ようえん)な女性が話しかけてきた。「今日はどうしたの?」
「ああ、麗華(れいか)さん…」神谷はちょっと気まずい感じになった。
 麗華はさおりをちらっと見たが、「ねえ、向こうで一緒(いっしょ)に飲みましょ。お話ししたいこともあるし。ねえ、いいでしょう?」麗華は甘(あま)えるように神谷にしなだれかかった。
「ごめん」神谷はさおりに、「得意先(とくいさき)のお嬢(じょう)さんなんだ。今日はこれで」
 神谷はさおりの返事(へんじ)も聞かずに立ち上がり、麗華に腕(うで)を取られて行ってしまった。
「あらら…」もうひとりの自分が口をはさんだ。「残念(ざんねん)だったわね」
「何よ」さおりは周(まわ)りを気にして小声で言った。「いいわよ、どうせ…」
「もし悪女(あくじょ)になる度胸(どきょう)があるんだったら、奪(うば)い返してあげてもいいのよ」
「わたしは、そんな…」さおりは目をそらし、うつむいてしまった。
「そうね。悪女ってタイプじゃないわよね。じゃ、あきらめなさい。どうせ、そんなに好きじゃなかったんだし。別の男にしようよ。そうだ、ちょうどいいのがいるじゃない」
<つぶやき>今度は何をしようとしているのでしょうか。気が気じゃないさおりであった。
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