「なぜ私に決めたの?」
彼女は告白(こくはく)してきた彼に訊(き)いた。「他に女性は沢山(たくさん)いるでしょ。なのになぜ私なの?」
訊かれた彼は、一瞬(いっしゅん)戸惑(とまど)った。こんな質問(しつもん)されるとは思ってもいなかったのだ。
「だから…、君のことが好きになったからだよ。それじゃ、いけないのかな?」
「もっと具体的(ぐたいてき)に言ってくれない。それじゃ答(こた)えになってないわ」
彼は考(かんが)えた。「君(きみ)って…、可愛(かわい)いし、それに一緒(いっしょ)にいると楽しいだろうなって…」
「確(たし)かに、私は可愛いって言われたことはあるわ。でも、可愛いから一緒にいて楽しくなるって、どうして言えるの。そんな根拠(こんきょ)はどこにもないはずよ。私じゃなきゃいけないところはないの? あなた、そんないい加減(かげん)な気持(きも)ちで私に告白したの?」
「いや…。別に、そんなつもりで言ったわけじゃ」
「じゃあ、私じゃなきゃいけないところをあげてみて。私のどこを好きになったの?」
「どこって…。それは、あれだ。あの――」
口ごもった彼を見て、彼女はため息(いき)まじりに言った。
「その程度(ていど)なのね。それで、私のこと本当(ほんと)に好きだって言えるの? 手近(てぢか)なところに可愛い子がいないから、私に目をつけただけなんじゃないの」
「好きになるのに理由(りゆう)なんていらないだろ。黙(だま)って俺(おれ)と付き合えよ!」
<つぶやき>なぜ好きになるんでしょ。外見(がいけん)が可愛いから、それとも…。不思議(ふしぎ)ですよね。
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