みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0284「家庭の平和」

2018-08-09 18:57:25 | ブログ短編

 父親は靴(くつ)をはきながら、隣(とな)りに座っている息子(むすこ)に話しかけた。
「お前は立派(りっぱ)な大人(おとな)になれよ。そして、世(よ)のため人のために役(やく)に立つ人間になるんだ」
 小学生の息子は靴に足を滑(すべ)り込ませると、「うん。お父さんみたいにね」
「ああ、そうだな。でもな、お前は…」父親は声を落として、「優(やさ)しい嫁(よめ)さんをもらえ」
 息子は首(くび)をかしげたが、「お父さんは、お母さんの役に立ってるよね」
「……まあ、ある意味(いみ)、そうなんだけどなぁ」
 その時、奥(おく)から母親が顔を出した。
「あなた、まだいたの? 早くしないと。ほんと愚図(ぐず)なんだから」
「ああ、今、出かけるところだよ。じゃあ、行こうか」
 父親は息子の手を取ると、玄関(げんかん)の扉(とびら)を開けた。すかさず母親が、
「ちょっと、それ!」
 と、玄関に置かれたゴミ袋を指(ゆび)さした。
 父親は、「ああ」と言って、もう片方(かたほう)の手でゴミ袋をつかんだ。
「今日は、可燃(かねん)ゴミの日よ。もう、あなたの仕事(しごと)なんだから、忘(わす)れないでよ」
 父親はグッとこらえて笑顔(えがお)を作り、「分かってるよ。じゃあ、行ってきます」
 家を出ると息子が言った。「お父さんも大変(たいへん)だね。お仕事、がんばってよ」
<つぶやき>家庭(かてい)の平和(へいわ)のために、父親は頑張(がんば)っているのです。そこのところ、よろしく。
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