「何でそうなるのよ」祐実(ゆみ)は怒(おこ)っていた。「勝手(かって)に決(き)めないでよ!」
「だって、祐実には仕事(しごと)があるだろ。ついて来いなんて言えないよ」
「そうよ。やっと今の仕事、面白(おもしろ)くなってきたのよ。これから…」
「だから、別(わか)れよう。その方がいいんだ。僕ひとりで田舎(いなか)に帰るから」
「もう、そうやっていつもひとりで決めちゃって。そういうところ、直(なお)しなさいよ」
「仕方(しかた)ないだろ。家の仕事、手伝(てつだ)わないといけなくなったんだから」
「だったら、何でついて来いって言わないのよ」
「そんなこと言ったって…。来てくれるのかよ」
「何で私が、田舎になんか…。私、虫(むし)とか大嫌(だいきら)いなんだから、行くわけないでしょ」
「もういいよ。別れた方がいいんだ」
「何で…、そんなに簡単(かんたん)にあきらめるのよ。やっぱり私のこと好きじゃなかったんだ」
「好きだよ。好きだから…。祐実には幸(しあわ)せになってほしいんだ!」
「じゃあ、ちゃんと言いなさいよ。私…、あなたと一緒(いっしょ)じゃないと幸せじゃないの。あなたのそばが、いちばん居心地(いごこち)がいいの。何があっても離(はな)れないから…」
「祐実…! 僕と…、僕について来い!」
「いいわよ。そのかわり、虫とか出たときは、すぐに助けに来てよ。約束(やくそく)だからね」
<つぶやき>何よりも大切(たいせつ)なもの。あなたにはありますか? 私は、御馳走(ごちそう)があれば…。
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