「うーん」探偵(たんてい)は首(くび)をひねった。「これは…」
と言ったなり黙(だま)り込(こ)む。そばにいた警部(けいぶ)は心配(しんぱい)そうに、探偵の次の行動(こうどう)を見守(みまも)った。
探偵はいくつもの難事件(なんじけん)を解決(かいけつ)にみちびき、警察(けいさつ)からも一目置(いちもくお)かれていた。その彼をもってしても、今回の事件は先(さき)が見えなかった。何ひとつ、手掛(てが)かりになるものがないのだ。
「どこかに出口(でぐち)があるはずです。この問題(もんだい)を解決(かいけつ)する」
「出口……見つかりそうですか?」
警部は探偵を見つめた。もし、この事件が解決できないと、警部の命運(めいうん)も尽(つ)きてしまう。
「まず謝(あやま)るべきです」
探偵はおもむろに口を開いて、「きっと奥(おく)さんもわかってくれます」
「それができないから、こうして頼(たの)んでるんじゃないですか。あいつは、うちのやつはですね、そんな生易(なまやさ)しいやつじゃないんです」
「鬼(おに)警部と恐(おそ)れられているあなたよりも…、ですか?」
「私なんかね、あいつの前ではネコ同然(どうぜん)ですから」
「しかし、この状態(じょうたい)では…」探偵は足の踏(ふ)み場(ば)もなく散(ちら)らかっている部屋を見回(みまわ)した。
「どうしても思い出せなくて、つい…。でも、この部屋にあることは間違(まちが)いないんです」
「まず落ち着いて、ゆっくり思い出しましょう。結婚指輪(けっこんゆびわ)をどこに置(お)いたのかを…」
<つぶやき>あなたは好きな人からどう思われてますか。優しい気持ちを忘れないでね。
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