あさみは下校途中(とちゅう)で見知(みし)らぬ男の子に声をかけられた。
「ねえ、俺(おれ)と付き合わない? キミ、めちゃタイプなんだけど」
あさみは呆(あき)れてしまった。学校の制服(せいふく)を着てナンパするなんて、なに考えてんのよ。あさみは無視(むし)して行こうとする。すると、男の子はあさみの前へ回り込み、
「なあ、いいだろ? 俺、転校(てんこう)して来たばっかでさ、いろいろ教えてもらいたいんだよね」
「何であたしが? もう、話しかけないで」あさみは男の子を睨(にら)みつける。
「お前、2組の森口(もりぐち)あさみだろ? 俺、3組の山田圭介(やまだけいすけ)」
男の子はあさみの顔を見て微笑(ほほえ)みかける。だが、あさみの方はプイッとそっぽを向く。
男の子はちょっとガッカリした顔を見せたが、あさみの耳元(みみもと)まで来て囁(ささや)いた。
「みどり幼稚園(ようちえん)のガキ大将(だいしょう)で、男子のパンツを脱(ぬ)がせまくった――」
あさみは顔を真っ赤にして叫(さけ)んだ。「ちょっと! 何で、何でそんなこと知ってるのよ?」
「だって、俺、その場にいたから。覚(おぼ)えてないかな? 俺だって。ケイスケ」
「ケイスケ?」あさみはハッと気づいて、「えっ! ケイちゃん? あの、おとなしくて、全然(ぜんぜん)しゃべんなかった? ウソ…。何で、こっ、こんなになっちゃったの?」
「あの頃(ころ)は、俺、いじめられてて、よく助けてもらったよね。これでも感謝(かんしゃ)してんだぜ」
「信じられない。何で、こんなチャラい男になっちゃったのよ」
<つぶやき>再会(さいかい)した相手(あいて)にガッカリしたことはありませんか? でも、向こうでも…。
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