やすら木

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安曇野の美しい物語

2018-11-08 17:08:06 | 刊行書籍

安曇野の自然を美しく描写した物語。
聴覚に障害のある少年が、安曇野の里山で一人暮らす祖母との交流をとおして成長・自立していく様子を、写真とともに描いたフォトストーリー。祖母・冴子の抱えている悲しい過去の秘密に少年への贈り物が隠されていた。
「生きていくのに必要なのは知恵と勇気」であり「不自由には神様の贈り物が隠されている」
次世代を担う若者にとって、真の愛情とは何かを問いかける物語。

巻末に、安曇野の四季折々をお楽しみいただける動画アドレスつきです

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 いつの間にか雨音は消え、凪いだ空気の中、木々の枝葉は絵画のように、ひくり、とも動かない。幽玄な靄の中、初夏特有のゆったり暮れゆく西日が、生い茂った夏草を一層濃い緑色に浮き上がらせている。  梅雨のあけきらない季節の夕暮れは、夢幻の切なさに胸が詰まる。窓を開け放つと、清楚だが凛とした風格を放つスノーベルの香りが、鼻腔の奥まで入ってくる。冴子さんがやってきた、と思った。


  夜明けを告げる薄い光が瞼に兆し、鼻頭をよぎる冷気に揺り起こされた。見慣れない天井の木目模様をいぶかしく思いながら横を向くと、白髪の見知らぬ女の人が微笑んでいる。
「目が覚めた?」
 問いかけにうなずきながら、僕はあと数日で冬休みとなる昨日からのできごとを反芻した。
 母が交通事故に遭って入院したこと、命に別状はなかったもののしばらくは入院しなければならず、僕は父方の祖母に冬休みを待たずに預けられると急に告げられたことなど、寝ぼけた頭で少しずつ辿った。
 父方の祖父母は里山の麓に住んでいたが、祖父は僕が生まれる前に亡くなり、祖母もなぜか家族でほとんど話題にならず、僕の意識に存在がのぼったことなどなかった。なぜ大好きな母方の祖母の家ではなく、そんなところへ一人で行かなければならないのか、母は大丈夫なのか、という十歳の子供にとって自然な疑問が湧いたが、日頃穏やかな父に似合わない厳しい沈黙が言葉にすることを許さなかった。夕方早くに帰宅した父に追い立てられながら車に乗り込んだ。続く

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2 コメント

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素敵な物語 (mikenekohime)
2018-11-18 08:06:20
謎めいた冴子さんと陽一君の交流が印象的でした
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ありがとうございます。 (nekomaru)
2018-11-25 20:20:04
ご購読ありがとうございます。他の書籍もよろしくお願いいたします。
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