やすら木

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新十二支物語 子年

2008-04-09 15:55:16 | エッセイ・コラム

 その昔、神様は世の中の人々が楽しく年を数えることができるよう、12年を一区切りにし、12の動物に一年ずつ割り当て、それぞれの個性あふれる年を創らせようと考えました。
 そこで、「12月12日までに、私の所へたどり着いたものに、干支として称号を与える」というおふれをだしました。
 すばしっこいねずみは、これを聞きつけるとすぐに、「12月12日までですよ。12月12日ですよ。お忘れなく」と皆に知らせて回りました。ところがねずみは子だくさんの大家族で、子供達はあちこちちょろちょろ走り回ります。親ねずみは迷子にならないよう子供の数をしょっちゅう数えなければなりません。「1匹、2匹・・・・あれ、あと1匹、よしいた、13匹」と、そのとき、ちょうど昼寝中の猫のそばを通りかかり、ねずみはつい、「12月13日までだよ」と言ってしまいました。
 猫は安心し、またとろとろと眠りだし、目がさめたのは12月13日のも終わろうとしている真夜中近くでした。猫は慌てて飛び起きて神様の所へ駆けつけましたが、そこには誰の姿もなく、十二支に決まった動物の名前が12月12日付けで貼りだされていました。「ねずみの奴にだまされた」怒った猫はねずみを追い回すようになりました。
 ねずみは、自分が言い間違いをしたことに気がつきましたが、猫の剣幕が恐ろしく、なかなか謝る勇気がありませんでした。しかしあるときありったけの勇気をふりしぼり「あのときは私が子供の数に気を取られ、思わず言い間違えてしまったのです。お詫びに私の干支にご招待したいのですが」と言ってみました。
 これを聞いた猫は少々きまりが悪くなりました。日頃寝坊ばかりしている猫は、正しい日付を聞いたとしても、期日までにきちんと行かれる自信がなかったのです。そんな自分への腹立たしさを、ねずみを追い回すことで紛らわしていたような気がしていたからです
 そこで、猫は開運招福を手みやげに、ねずみのご招待を受けることにしました。
 誤解や勘違いは誰にでもあるものです。お互いほんの少し譲り合えば、心がほっこり温まり、仲直りは簡単です。

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