高山真人が道を歩いていたら
一匹の真っ黒い猫が前から歩いてきた。
彼の前まで来るとチョコンと座り込み彼を見上げた。
真人は思わずつんのめりそうになり、立ち止まった。
黒猫は
ニャ~~🐱っと一鳴きする。
なんなんだ❗
真人は思わず呟いた。
すると猫は
私を連れて帰ってニャ~~🐱
え?え?しゃべった?
猫が……
真人は猫から離れて歩きだした。
後ろを振り返るとあの猫がついてくる。
なんなんだ❗
慌てマンションのオートロックを解除して中にはいる。
エレベーターのぼたんを押してホッとしていると、オートロックのガラスのドアの外であの黒猫が座り込んでいた。
開けてニャ~~🐱
暫く真人はその猫とにらめっこをしていた。
真人はドアの前に行きもう一度猫を見た。
開けてニャ~~🐱
真人はドアを解除してガラスドアを開けた。
なんなんだ❗
自分に問うてみた。
しかたないな、ついてきなよ。
真人は猫にそう言った。
エレベーターに一人と一匹が乗り込んだ。
俺んちは7階だ。
猫は真人の足元にピタッと寄り添っている。
7階で一人と一匹がおりた。
なあ、猫さんよ。
うちの子になるきか?
俺は猫は嫌いじゃない。
でも何で俺なんだ?
お前はよその子じゃないのか?
飼い主さんは?
真人はバカらしく思いながら部屋に続く廊下を猫と歩きながら猫に尋ねた。
すると猫が
ずっと前から見ていたんだニャ~~🐱
よろしくニャ~~🐱
真人はため息をついた。
喋るんだ……
不気味さは感じない。
部屋のチャイムを鳴らす。
なあ、猫さんよ、嫁さんがどう言うかでお前さんの将来が変わるかもだぞ。
ドアをあけて出てきたのは妻の陽子だった。
おかえりなさい🎵
そう言って真人からかばんを受け取った。
猫に気がついたのはその後で、目を真ん丸くしていた。
まあ、猫?どうしたの?
真人は玄関に座り込み猫を抱き上げて説明した。
陽子はウンウンと頷きながら聞いていた。
最後はふ~~んと言うと
このマンション動物飼えて良かったね🎵と猫の頭をそっと撫でて言った。
猫さんよ、良かったな。
なんか奇妙な猫との出会いだ。
翌日は休日だったので二人と一匹で近所のペットショップに行き、猫グッズを買った。
真人くん、今月は節約しないとね。
陽子が笑いながら言った。
ある程度揃えると結構な額になる。
真人の腕に抱かれてキョロキョロしている猫を見て、偉いことだな~~と呟いた。
結婚して10年。
夫婦は40を過ぎている。
子供はいない。
二年前に会社の社宅を出てマンションを買った。
社宅時代に節約して貯めたマンションの頭金。
このお陰でローンは少なくてすんでいた。
陽子の節約ぶりに真人は驚いた。
頭金をバンと出して社宅から出よう❗
そう言って切り出した時には真人の方が驚かされた。
陽ちゃん、よく貯めたな~~
陽子は社宅を嫌っていた。
わからんこともないのだが。
2LDK。二人には十分だった。
駅からも近く、生活するには不自由でもなかった。
社宅の方が郊外にあり不便だったのだ。
猫はミイと名付けられた。
最初と違うのは言葉を話さなくなったことだ。
何を話しかけても
ニャ~~🐱しか鳴かなかった。
これが本来の猫なんだ。