実家の玄関を開けて
フッと居間のドアが開くのを数秒待ちました
おかえり
暑かったね
ごめんね
そい言いながら母が迎えに出てきてくれたのです
しかし
母亡きあと
その姿も声も聞くことは出来ません
部屋はまだ母の住んでいた頃と同じ匂いが残っています
目を閉じて母の存在を感じながら
目を開けたらそこには母の姿はありません
母のお気に入りの椅子は定位置に置かれたまま
その椅子を見ても母の姿は見えません
目を閉じるとその姿が脳裏によぎります
死とは
その人ともう会えない
話せない
笑えない
どんなに姿を見たくても
見えないのです
東京の叔母は母の姿が見えるそうです
叔母の家の台所でウロウロしているそうです
叔母も高齢者
私にも見えたらいいなって思います
死とはそんなモノです
会いたいと思っても
夢くらいしか会えません
お母さん、あいたいよ
脳裏には母の姿が鮮明に感じられます
でも目には入ってこない
それが
別れなのです
後悔はなかったか
ないとは言えません
ああもしたかった
もう遅いです
ごめんね
会いたいな
聞きたいこと沢山あったよ