「イギリスのある町のお話」
スティーブという坊やはパンが大好きである。
なかでも「アイリッシュ」が一番好きである。
だがそのパンは高くて、食べたくても中々買えない。
まだ12歳のスティーブには高嶺の花である。
ある日、店先で見ているスティーブに
お店の主が言いました。
「買わないならあっちへ行け、商売の邪魔だ!」
それに対してスティーブは
「あなたの作るパンは美味しいが高すぎる、
日本人のお米の様にこの国ではパンが主食である、
そのパンをいくら美味しくても高く売るのは間違っている、
お金持ちだけに売りたいのならそうすればいい、
だが神様はちゃんと見てみえるよ」
彼の予言通り、その店はしばらくして潰れた。
それから30年、スティーブが大人になったある日、
街角の賑わいにつられて見てみると、
何とそこに「アイリッシュ」が沢山あった。
まさに昔大好きだった「アイリッシュ」だ。
値段も手頃で大人気、飛ぶように売れている。
感動しているスティーブにそっと近づく店主がいた。
「あなたのあの一言を思い出し、考え直して頑張りました、
あなたのおかげで、今の自分があります、
本当に自分の目指すパン職人になれました、ありがとう!」
その言葉に微笑むスティーブ市長がそこにありました。