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Tシャツとサンダルの候

王将戦と庶民のハンバーグ

将棋が好きである。

と言っても、

実際の駒を使っての将棋は、ここ40年の間に2回しか指していない。

いわゆる『観る将』と言うやつだ。

それでも、詰め将棋のアプリだけは、毎日欠かさない。

そんな将棋ファンである。



佐賀平野を車で移動中の私と家内。

「お、大幸園てここか。王将戦の対局、ここであったとぞ。」

「ふーん。」

「あとちょっとで昼やし、ここで昼飯食うか。」



藤井聡太王将の記念植樹。




山の斜面に沿うように、幾つかの建物が建てられている。

ランチは向かって左側の建物のようだ。






8畳ほどの個室に通された。

佐賀平野を展望しながら食事が出来るのが、ここの自慢らしい。



「お料理の説明をさせて頂きます。本日の日替わりランチは・・・」

「ふむふむ、了解。因みにさあ。対局場って、後で見る事は可能?」

「えっと・・・聞いて来ますね。」

「あー、よかよか。忙しかとに。気にせんで。」


さて、何にしよう。



選べる王将ランチ?

ふーん、藤井聡太が選んだのは『王将ハンバーグ』てか?

3000円ね。

ちーっと高いよな。


「よし決めた。俺、これにする。」



「お待たせしました。ハンバーグランチでーす。」


フフフ

王将の名を冠さない、名もなきハンバーグランチなら1980円なのだ。



これが庶民のハンバーグだ。


「鉄板が熱いうちに特製ソースをおかけ下さい。」

「ガッテンだ。」



ジュワーー!!


ウヒャー、

庶民とか言ったせいで、ハンバーグ、怒っちゃったぜ。

ソースが、そこら中に飛び跳ねてしまったよ。



ハンバーグ様の怒りが収まった頃、

それでは、モグ


うん、

セレブハンバーグじゃなくても、ちゃんと美味しいぜ。



因みに、私はいたって早食いである。

一方の家内は、すこぶる食べるのが遅い。

食べ終わった後は、いつも一人で、外をブラブラするのが常だ。

外で景色を眺めていると、先ほどの女の子がやって来た。


「対局場に使われた部屋、予約の時間まで余裕があるので、見て頂けるそうですよ。」

「えー、聞いてくれたの?ごめんね。」



「この中です。」

「ほほう。」



対局場である。

床の間を背に、記録係と立会人のテーブルが置かれ、そのテーブルの前で、

窓側に藤井王将、入口側に菅井八段が盤を挟んで対峙した。



王将の大駒。

実際の対局の時も、ここに置かれてたよな。

ニンマリと、薄気味悪い笑みを浮かべてシャッターを切っていると、料理長だろうか、長身の男性がやって来た。


「お客さん、将棋ファンなんですか?」

「ええまあ。観る将ですけどね。いつ頃から(王将戦を)、ここでやってましたっけ。」

「もう7年前になります。」


将棋のタイトル戦ともなると、全国の名だたる老舗旅館、ホテル、或いは歴史的重要建造物等が充てられるのが殆ど。

なのにである。

こう言っちゃなんだが、ここは名にし負う老舗とも思えないし、みたところ人員もスペースも極々小規模だ。


「スペースがないので、大盤解説会場は町の施設でした。」

「宿泊設備もないんですよね。」

「ええ。将棋関係者は、吉野ヶ里温泉に泊まられました。」


不便極まりないのに、何故ここで?


「さあ。静かだからですかね。」

「私達も料理やオヤツを運ぶ時、音がしないよう、メッチャ緊張してたですもん。」


歴史的背景や、ぶ厚いサービスよりも、何より「静けさ」こそが、タイトル戦の筆頭条件か。


納得である。


コメント一覧

minou_yamatai
展望もいいし、無茶苦茶高くもなく、ランチにはいいと思います。
ただ、周りはなーんもないですけどね。
3手目に王さんを取られた?
よっぽどズルされなきゃ、中々ありえませんぜ。
Tomi
将棋は全くダメ、学生時代に始めようとしましたが3手目に王様取られて即挫折、それ以降は近寄らないようにしています。
それにしても佐賀の片田舎で王将戦が行われていたなんて知りませんでした。
近くに入ったら寄ってみるかな。
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