千早振る
百人一首をしていた娘から「千早振る神代もきかず竜田川から
紅に水くぐるとは」の意味を聞かれて困った男が、
横丁の隠居のところへ教えてくれとやってきた。
じつは隠居のほうも知らないのだが、そんなことはおくびにも出さず、
「おうおう、教えてあげよう。お前、この竜田川をなんだと思う」
男がどこかの川かなと見当をつけると、隠居は首を横に振り、
昔の相撲とりのシコ名だと断言した。
この竜田川がやたらと強く、親の反対を押し切って江戸に出、
三年で大関になった。えらい人気力士だが、一目惚れした女郎の千早には
あっさりと振られ、そのうえ千早の妹分の女郎・神代にも振られてしまう。
で、千早に振られて神代も言うことを聞かない竜田川となるという名解釈。
男はすっかり感心してしまう。 さらに後半の解釈が続く。
惚れた女に相手にしてもらえなかった竜田川は、すっかりくさり、
ばくちは打つ、酒は飲む。あげくに相撲をやめて国へ帰ってしまう。
「それから両親のやっている豆腐屋をついだんだ」
十年後のある日、豆腐屋の竜田川が豆腐の仕込みをしていると、
ボロボロの着物を着た女乞食が来て、卯の花(おから)を
めぐんでくれと頼んだ。情け深い竜田川が卯の花をやろうとして、
女の顔を見てびっくりした。「これがな、竜田川を振った千早のなれのはてだ」
人気のおいらんがいくら歳をとったといっても、乞食になるのはちょっとおかしい。
男がただすと、さすがの隠居も言葉につまり、
「うるさいね。なったんだからしょうがないじゃないか」
かなり苦しいが、隠居は強引に話を進めていく。
昔のくやしさを思い出した竜田川。女乞食の千早に卯の花をやるどころか、
突き飛ばして井戸へ落としてしまったとまとめた。おからをやらないから、
からくれない、井戸に落ちて水をくぐったというわけだ。
「はい、これで終わり」 「おかしいなあ」 男が文句をつけた。
「水くぐるんなら、水くぐるでいいでしょ。最後の{とは}というのはなんです。とは、は」
「とは。とはぐらいまけとけ」
「まからないよ。とはというのはなんだね」
「ようく調べたら、千早の本名だ」
立川志の輔 古典落語100席引用
古典落語かな。古典ヒットかな、音楽にも古典音楽と言うものなのか?(`_`*)
おいしいお酒はその日のうちにというわけではありません(;´∀`)そら・あかね。