諸行無常の響きあり

フィリピンの小さな焼き鳥居酒屋の親父のつぶやき

翳り

2011年07月03日 20時17分40秒 | つぶやき


隣で営業する某ドーナツ店、なにやら叫び声がする。『家政婦は見た』宜しく聞き耳をたてる・・・・。
どうやら給料の未払い分を払ってくれと女性従業員がオーナーに食って掛かっている。聞きたくなくても回りは全て聞こえるほどの大声なので自然と耳に入る。何がどうなっているのか通行人まで足を止めて聞き入っている。

その女性従業員、涙をボロボロ流しながら、

『今まで我慢していたが、朝早くから真面目に来て店を開けて店番をしていたのは私だけじゃないか、あんたが払ってくれないなら、バランガイに訴え出てやる!!オーナー面して威張りくさって、給料を払ってこそオーナーだろう』

このような内容のコンプレインである。

そもそもFC料金が高い上に店の改装料もかかった筈である、1個12ペソのドーナツを、何個売れば元が取れるなどとは考えてはいなかったのだろう。この地盤はスクァッターエリアと奥に集中するビレッジのお客とが混合する地区であり、スクァッターエリアの人たちにとっては1個12ペソのドーナツは決して安くは無いだろう。それを言えば当店での食事も決して安いとは言い難い。

そう言えば以前も同じようなことがあったっけ、前面で店をやっていた際に、隣のパン屋で同じく従業員の賃金の遅滞で母親が賃金を貰いにきたのだが、オーナーが来ない為に当店で座って待っていた。ところがパン屋のオーナー、何を勘違いしたのか自分の悪口を私らに言いふらしていると思ったのだろう。

翌日から近所付き合いがギクシャクしたことがあった。まあ人目の悪さを気にするというより、従業員と向き合って話をするべきだと思うが、それが彼らのプライドなのか、言い訳をわざわざ言いにきたことがあった。その辺りの感覚を我々日本人がどう解釈するかだ。

随分と長いことフィリピンにいるような気がするが、そのプライドもどきが現実の損得をも優先するフィリピン人社会に置いて、一番の被害者はドーナツ屋の女性従業員のような人間だろう。元来、賃金の未払いなどは労働基準に沿って行われるべきであろう。

如何せんこの零細企業にも及ばない小さなドーナツ屋の出来事を誰が取り上げよう。バランガイに呼ばれ両者で話し合うことになるのだろうが、いつものことではあるが、絶対的な罰則は適用されない。無い袖は振れない、決め事は大概は遵守されないケースが多いだろう。

まあ私自身の店もそれよりも小さな規模であるが、賃金の支払いは大家に家賃を待って貰っても優先させる。それが従業員にどう映るか否かは解らないが、それは経営サイドの問題である。幸いどうにか今まではそうした問題もなくここまで来たが、今後はどうなるか誰も分からない。

その時私は丁度仕入れに行き、その際にドーナツ屋の女性オーナーが私に話しがあるといって来たそうであるが、本人とは会わず終いであった。大方店を売りたいので誰か日本人の客を紹介してくれなんていう依頼であろう・・・・・。近所の店舗が消えていくのは寂しい話であるが、時間の問題だというのが現実であろう。