ツネ師匠の送別会は会社から歩いてすぐの中華料理が出る宴会場で行われた。ここは我が社御用達の場所で、新入社員歓迎会や上半期下半期、年末年始など区切りの時に頻繁に利用していた。
今回の集まりはツネ師匠の送別会のみならず年度末の慰労も兼ねてのものであったのだ。
そのため200名近くいる従業員、ほぼ全員参加の大掛かりな昼食会だった。
私達はお昼まで、お客様の進捗状況や数字の確認など、特に緊急性のないルーティンワークをこなし、ユッタリとした業務を淡々とこなした。そして11時半を少しまわった頃、営業責任者の部長が無駄に声を張り上げ私達に声をかけた。
『ちょっと良いかな。』
皆の視線が自分に集まるのを確認して、よく通る声を張り上げた。
『そろそろ送別会会場に行こうと思う、仕事が一段落ついた人から向かってくれ。一段落ついてないものは、少し急いで、お昼に到着するようにな、では以上宜しく。』
私を含め急ぎの仕事ではなかったので、部長の話しが終わると同時に席をたった。
そしてゾロゾロゾロゾロと会場に向かった。
その時少し、この会の主役であるツネ師匠が寂しそうな顔をしているのを見て、本当は彼は辞めたくないのではないか?と、そんな疑問が心をよぎった。