小説・サブリミナル第一章(美しい子悪魔)NO-(1)&CG
サブリミナル・美しい小悪魔(第一章)
六月八日木曜日、朝食後、早乙女南は或新聞記事に注目する。
それは一昨日、六月六日火曜日、午後六時半頃、藤井綾子47才が前夫、木村宏47才を裁縫用の鋏で刺し殺したと言う事件だった。
綾子さんは母と同い年か・・・と宙を見ると新聞に目を戻した。
しかし、容疑者として逮捕された綾子は。私は殺してない。そう言ったまま黙秘し てる。と書かれていた。
その日、その時間私は?・・・と唇を尖らせながら宙を見詰めた。
瞬間、サッと新聞をテーブルに放り投げると駆け出した。
階段を駆け上がり、スッとドアを開けたまま服を脱ぎ捨てて下着姿になった。
壁に掛けてあった紺のミニのスーツに着替え、鏡台を覗いて手串で簡単に髪を撫で、バックを肩に飛び出した。
キッチンでは母が洗い物をしていた。「何です朝から!・・・」。
「お母さん、出掛けるから」。
母はいつもの様に頷く。
「しょうがないわね、気を着けていってね」。
「うん、じゃあ行って来ます」。と飛び出していた。
所轄、本富士署。刑事部屋。
「失礼します、藤井綾子さんから弁護依頼を受けて参りました早乙女と言います」 ムッとした様に五~六人の刑事たちが振り返る。刑事は揃って早乙女の足元から上へと視線を上げた。何時もながら嫌な感じで応対を待っていた。
すると、小太りで半ハゲの中年刑事が椅子から離れ、額にはギラギラと脂汗を滲ませて歩み寄った。早乙女は低く腰を折り、手にした名刺を渡す。
「そんな話しは訊いていませんよ」。
ソフトな言い回しだが、上目使いで睨むように見詰め、視線を胸元に下げ、下へ下へと視線を移した。
「聞こうが聞くまいが刑事さんには関係ありません。刑事事件に弁護士が着くのは 当たり前の事です。接見させて頂きます」。
刑事は名前も言わないまま、奥のデスクに行く。南の名刺を差し出した。
デスクには刑事課長、鈴木実警視と掛かれている。
「佐藤刑事、いいだろう、接見させてやれ。弁護士さん、容疑者に言ってください。正直に話す様にってね」。
鈴木はそうは言ったものの、目は小馬鹿にした様に笑っていた。
「それはどうも、話してみます」。
佐藤刑事は先に刑事部屋を出る。早乙女は一礼し、刑事たちに頭を下げると追う様に刑事部屋を出た。
そこは第二取り調べ室だった。「どうぞ、こちらです」。
容疑者の藤井綾子は若い刑事の取り調べを受けていた。鉄格子の入った小さな窓を 見つめていた。早乙女の母に似て美しい女性だった。
着ているブラウスの襟が汗で汚れ、誰か接見してる所か着替えすら届けられている様子もなかった。
若いは刑事は椅子から立ち上がり、早乙女を見ると頭を下げる。
「村井、弁護士さんの接見だ」。
「エッ・・・」弁護士と聞いて驚いた様に早乙女を見る。
「何も聞いていませんよ」
藤井綾子も驚いた様に振り返り、見上げた。二人の刑事は渋々部屋を出て行った。
「藤井さん、早乙女南と言います。これでも弁護士なんですよ」。
そう言いながら名刺を差し出す。
瞳を見開き、机の上に置かれた名刺に手を延ばす綾子。
早乙女は綾子の足元を見た。スリッパの踵が赤く靴連れを起こしていた。紐の着い た靴を履いて随分歩いた事を物語っていた。
「私に何も可も正直に話してください。私が貴方を守って上げます」。
「エッ・・・」。と困惑したように見詰め、頷いた。
「あの日、六月六日の火曜日です。午後六時頃、突然夫木がお酒に酔って、もう半ば泥酔状態でした。
その日は、アパートの建て替えの為に引っ越しの支度をしていました。高校二年の娘が居るんですが、その日は近所の姉の家に行っていました。
木村は、毎度の事で、またお金の無心に来た事は分かっていました。
金を出せって、貴方に渡すお金なんか一銭もありません、出でいってって、そう断ると、前夫は無言のまま狂った様に殴り掛かったんです。
NO-1-2
サブリミナル・美しい小悪魔(第一章)
六月八日木曜日、朝食後、早乙女南は或新聞記事に注目する。
それは一昨日、六月六日火曜日、午後六時半頃、藤井綾子47才が前夫、木村宏47才を裁縫用の鋏で刺し殺したと言う事件だった。
綾子さんは母と同い年か・・・と宙を見ると新聞に目を戻した。
しかし、容疑者として逮捕された綾子は。私は殺してない。そう言ったまま黙秘し てる。と書かれていた。
その日、その時間私は?・・・と唇を尖らせながら宙を見詰めた。
瞬間、サッと新聞をテーブルに放り投げると駆け出した。
階段を駆け上がり、スッとドアを開けたまま服を脱ぎ捨てて下着姿になった。
壁に掛けてあった紺のミニのスーツに着替え、鏡台を覗いて手串で簡単に髪を撫で、バックを肩に飛び出した。
キッチンでは母が洗い物をしていた。「何です朝から!・・・」。
「お母さん、出掛けるから」。
母はいつもの様に頷く。
「しょうがないわね、気を着けていってね」。
「うん、じゃあ行って来ます」。と飛び出していた。
所轄、本富士署。刑事部屋。
「失礼します、藤井綾子さんから弁護依頼を受けて参りました早乙女と言います」 ムッとした様に五~六人の刑事たちが振り返る。刑事は揃って早乙女の足元から上へと視線を上げた。何時もながら嫌な感じで応対を待っていた。
すると、小太りで半ハゲの中年刑事が椅子から離れ、額にはギラギラと脂汗を滲ませて歩み寄った。早乙女は低く腰を折り、手にした名刺を渡す。
「そんな話しは訊いていませんよ」。
ソフトな言い回しだが、上目使いで睨むように見詰め、視線を胸元に下げ、下へ下へと視線を移した。
「聞こうが聞くまいが刑事さんには関係ありません。刑事事件に弁護士が着くのは 当たり前の事です。接見させて頂きます」。
刑事は名前も言わないまま、奥のデスクに行く。南の名刺を差し出した。
デスクには刑事課長、鈴木実警視と掛かれている。
「佐藤刑事、いいだろう、接見させてやれ。弁護士さん、容疑者に言ってください。正直に話す様にってね」。
鈴木はそうは言ったものの、目は小馬鹿にした様に笑っていた。
「それはどうも、話してみます」。
佐藤刑事は先に刑事部屋を出る。早乙女は一礼し、刑事たちに頭を下げると追う様に刑事部屋を出た。
そこは第二取り調べ室だった。「どうぞ、こちらです」。
容疑者の藤井綾子は若い刑事の取り調べを受けていた。鉄格子の入った小さな窓を 見つめていた。早乙女の母に似て美しい女性だった。
着ているブラウスの襟が汗で汚れ、誰か接見してる所か着替えすら届けられている様子もなかった。
若いは刑事は椅子から立ち上がり、早乙女を見ると頭を下げる。
「村井、弁護士さんの接見だ」。
「エッ・・・」弁護士と聞いて驚いた様に早乙女を見る。
「何も聞いていませんよ」
藤井綾子も驚いた様に振り返り、見上げた。二人の刑事は渋々部屋を出て行った。
「藤井さん、早乙女南と言います。これでも弁護士なんですよ」。
そう言いながら名刺を差し出す。
瞳を見開き、机の上に置かれた名刺に手を延ばす綾子。
早乙女は綾子の足元を見た。スリッパの踵が赤く靴連れを起こしていた。紐の着い た靴を履いて随分歩いた事を物語っていた。
「私に何も可も正直に話してください。私が貴方を守って上げます」。
「エッ・・・」。と困惑したように見詰め、頷いた。
「あの日、六月六日の火曜日です。午後六時頃、突然夫木がお酒に酔って、もう半ば泥酔状態でした。
その日は、アパートの建て替えの為に引っ越しの支度をしていました。高校二年の娘が居るんですが、その日は近所の姉の家に行っていました。
木村は、毎度の事で、またお金の無心に来た事は分かっていました。
金を出せって、貴方に渡すお金なんか一銭もありません、出でいってって、そう断ると、前夫は無言のまま狂った様に殴り掛かったんです。
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