エンターテイメント、誰でも一度は憧れる。

PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(23)&CG

2008-06-29 18:16:51 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(23)&CG

「済まない望月、近藤は空き巣紛いな事をしていたらしい。近藤の車のトランクからは影山綾乃のイニシャルが入った下着なんかも数点も出ている。しかしだ、私は凶器の指紋で行けると思ったんだ」。
「津浪君、私だけでなく君も処分されるよ。もう裁判は維持できん。完璧に我々の負けだ。いや、負けとかと言うより誤認逮捕で公判を開いてしまったんだからな、初動捜査のミスと証拠物件の隠蔽、話にならないな。
あの高慢な早乙女弁護士の顔が目に浮かぶ。起訴を取り下げる。君達はスピード検挙を焦るあまり、凶器の指紋に肩より過ぎたようだね。
死角だよ。凶器の諮問に頼り過ぎた。その刑事がこんどは無実を実証したんだ。無理だ、この儘公判を維持するのは無理だ。我々の完敗だよ」。
その検事の一言に、望月刑事は憤慨した様に津浪警部を見据えた。
「では新犯人は誰なんですっ!・・・捜査は初めからやり直しですか」。
「当たり前だ、望月君。そうだ、近藤貴雄は自殺って線はないか?・・・
カーホテルには近藤一人で入った。その後、直ぐに女が入ったからホテル側は同伴だと思い込んでしまった。
しかし、後から入った女が部屋に入った時に近藤は既に死んでいた。それで女は慌てて逃げ出した。その後ろ姿を従業員は見た。
少し無理があるが、ともかく影山綾乃は釈放の手続きを取る。公判なんか待ってはいられないぞ、マスコミに突っ込まれる前に釈放させるんだ。とんだ茶番だった様だね、津浪君」。
こうして翌日、三月二十三日。緊急公判が開かれる事になった。
法廷は同じ東京地裁245法廷に同じ顔触れが揃った。綾乃は突然の公判に驚いていた。そして被告人席に立っていた。

裁判長は苦渋に満ちた顔をして見詰め、口を開いた。
殺人の容疑者とされた影山綾乃さんには大変な思いと心労をさせてしまいました。
この裁判は警察の無秩序な取り調べと証拠隠蔽に因り無効とする。
本件、近藤貴雄に対する殺人事件に関する、影山綾乃被告の容疑は検察官から起訴の撤回がありました。因って影山綾乃被告人は無罪。本法廷は此れにて閉廷。

すると、傍聴席からは大きなどよめきが起こった。綾乃の目からドッと涙が溢れた。そして裁判長に深々と頭を下げた。そして早乙女弁護士に駆け寄った。
「先生、有り難うございました。お陰様で無罪になりました」。
「うん、おめでとう綾乃さん。良かったわね、会社へ復帰できるわよ。さあ、皆表で待っているからいきましょう」。
そして法廷を出た綾乃と弁護士の早乙女を待っていたのは綾乃の会社の同僚だけではなかった。真っ先に声を掛けて来たのは津浪警部だった。
「早乙女さん、正にやられたって感じですね」。
「良く言うわよ、貴方が証拠品を隠蔽せずにちゃんと出していれば良かったのよ綾乃さんが容疑者として拘留される事も送検される事も。まさか警部さんが自らルールを破っていたなんて・・・とても残念です」。
津浪は返す言葉もなく、肩を落として帰って行った。
まるで嘘の様な結末だった。そして、その日の午後、津浪警部は辞職した。
そして一週間後の三月三十日、検事の後藤は富山の地方都市に飛ばされた。
そして更に一週間、四月に入って影山綾乃は元の会社、JPインシュアランスに復職し、同僚から励まされながら机に向かっていた。
しかし、早乙女南弁護士のした事は、弁護士としても人間としても決して喜ばしい事ではない。してはいけない行為なのだ。
だだ、殺された近藤貴雄のした行為があまりにも人間性に欠けた事であり、早乙女は綾乃を殺人犯にしてしまう事を見捨てておけなかった。
そして、津浪警部の証拠物件の隠蔽までは見抜けなかった。一人の警部の職を退かせ、有能な検事を地方に葬ってしまった。その事に対しては反省していた。
しかし、そう導いたのは己の職務の怠慢からだと自分自身に言い聞かせている早乙女南だった。
そして綾乃は警察から返された証拠品の中からグリーン系のパンツスーツを手に、サイズは同じ、私の?・・・と、首を傾げているのだった。

・・・完

有難う御座いました。

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(22)&CG

2008-06-29 18:04:47 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(22)&CG

後藤検事は誤認逮捕、黒星なのか、共犯者がいたのか、凶器の指紋はどう理解したら良いのか。と困惑しているのだった。
「よし、影山綾乃を呼んで下さい。垂れ幕の落下と十二時過ぎの喧嘩の事を知っているか確かめよう。西新宿の派出所に問い合わせたところ、喧嘩はあったそうです。映画館の従業員の言う様に、十二時二十分に出動しています。
ちょっとした小競り合いで新聞には載ってない、現場で見ていなければ知る筈はないですからね」。
「検事、それとポリグラフを受けさせてみましょう。影山綾乃が事実を言っているのであれば拒否する事はないと思いますが」。
津浪はギラギラさせた目を眉を細めて検事を睨むように見据えた。
後藤検事は椅子にドッカリ背中を預けると軽く頷いた。
そして三十分後、影山綾乃は検事のオフィースへ連れて来られた。
そして、綾乃は津浪と望月両刑事の顔を見ると深々と頭を下げた。そして、検事の指し示す正面の椅子にそっと腰を降ろした。
「影山さん、貴方は二月二十日の午後八時過ぎ。正確には午後九時前、新宿オリオンへ映画を観に行かれたと言いましたが。当日、何か変わった事はありませんでしたか。子供さんは確かシンちゃんとか言いましたね。その事以外にです」
「検事さん、シンちゃんと言う男の子は見付かったんですか」?
綾乃は祈る様な気持ちで身を乗り出した。
「いえ、現在捜索中です。それより他に何か変わった事は?・・・」。
綾乃は俯いて思い出していた。「変わった事?・・・変わった事?・・・」。
そして静寂な時が五分ほど流れた。刑事はニンマリ笑いかけたとき。
「そう言えば、開演するちょっと前にステージの上の細長い垂れ幕が落ちて来たんです。もう館内は大笑いでした。中には怖がっていた人もいましたけど。
嘘だと思ったら映画館の人に聞いて下さい。
女性の従業員の人が慌てて落ちて来た垂れ幕を拾いに来ましたから・・・そうだ、拾いに来たのは売店にいた女の子です。その女性に聞いて下さい」。
まさかっ!と言う様に津浪と望月刑事は目を見開き、驚いた表情を見せた。
検事はその表情に、正しい事を証言している事は一目瞭然だった。後藤検事は津浪警部を見ていた。津浪は二度三度と頷いた。

「あっ!・・・そう言えば、映画が終わって外へ出た時に。茶髪の女の子達が喧嘩していました。調度そこへお巡りさんが来て喧嘩を止めていました。
ねえ検事さん、その事を確かめて下さい。私は映画を観に行っていたんです。
人殺しなんかしていません、本当です。調べて下さい、お願いします」。
その綾乃の言葉に、後藤検事や事務官、そして津浪と望月の両刑事もただ驚くばかりだった。そして四人は四人とも溜め息を漏らした。
すると、ノックする音がした。事務官が出ると板橋署の別の刑事が段ボール箱を抱えて入って来た。そして津浪警部に何やら話していた。
「済みません検事」と、津浪は呼んだ。
「ちょっと失礼しますよ」と、検事は新しい証拠でも出たのかと机を離れた。そして別室へ入った。
「検事、私達の黒星です。申し訳ありません、影山綾乃の洋タンスからこのグリーンのパンツスーツがありまして、ポケットから切符の半券が出ました。
現在指紋の検出と照合をしています。
それで、このスーツを映画館の従業員や売店の女性に見てもらったんです。
覚えていましてね、新聞に載っていた板橋の殺人事件で捕まった女性が着ていた服に間違いないと言うんです。
それで、何故そんなに鮮明に覚えているのか聞いたんです。そしたら、その女性もこのスーツと同じのを持っていると言うんです。
新聞を見た時は似ていると思ったけど、このスーツを見て思い出したと言っていました。それから、昨日、早乙女弁護士も同じ事を聞きに来たと言っていました。
それからもう一つ、あの日は寒くて、影山綾乃は手袋をしていたそうです。
その手袋も上着のポケットに入っていました。此れです」。
刑事はビニール袋に入れられた女性物の牛革の手袋を差し出した。
「完璧だ、その女性従業員は写真で間違い無く影山綾乃を確認したんですね」。後藤検事は方を落として確認した。
「はい、一人だけじゃありません。このスーツを見た切符売り場の従業員も改札の男性もハッキリ覚えていました。
あんな奇麗な女性は忘れませんよ。こうです。確かに新聞や報道に使われる顔写真は写りは良くないですからね。
ある男子社員はこうです、警察は犯人の写真はわざわざブスに撮るんだろって」。「そうですか。津浪君、カーホテルの従業員は犯人の顔は目撃してない。後ろ姿だけです。凶器の指紋は近藤貴雄が彼女の部屋から持ち出したと考えるべきだろう。君はもう一つ私に言わなかった事がありますね、それは、近藤貴雄の車から彼女のアパートの鍵が出た事です」。
その一言で津浪警部はガックリ肩を落とした。そして望月刑事はただ驚くばかりだった。「それは本当ですかっ!・・警部っ、本当なんですかっ!」
NO-22

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(21)&CG

2008-06-27 02:50:30 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(21)&CG

遺跡の入り口の前にあるレストランの隣のアパート、その夫婦は住んでいた。
前以て電話して行った事で思い出してくれていた。
「はい、あの日は子供の信治の誕生日で主人の実家に呼ばれていたんです。それで二十日の夜は主人が映画の券を貰ったからって、オールナイトを観ました。
それで、お話しの女性ですけど、顔は良く覚えていませんが騎麗な女性でした。信治にポップコーンくれましてね、この子ったらポップコーン好きで。
それから、出る時も一緒で私達は後から出たんですけど。服はグリーン系のパンツスーツでした。脚の線が騎麗でしたよ。
まさか、あの女性があの時間に新宿にいたのに、板橋のモーテルなんかで人殺しなんか出来ませんよ。なんなら、裁判で証言しても良いですよ」。
津浪は唇を噛みしめていた。
「そうですか、では我々の捜査ミスですかな。夜分申し訳ありませんでした」。津浪の脚は重く、僅か数百メートルの駐車場へ歩くにも停まっては歩き、東京へ戻るのが怖くなる程だった。
「警部、だったら誰が犯人なんです。影山綾乃はカーホテルの従業員に見られているんですよ。部屋に指紋はなかったとしても、凶器には影山綾乃以外の指紋は検出されていないんです。こんなバカな事がありますかね」。
若い望月刑事はチンプリ反っていた。
「影山綾乃は一人っ子か、双子の線はないな。だったら共犯が居るかも知れん、知り合いや友人関係はどうだ」。
「いえ、会社も同僚も誰一人と影山綾乃が犯人なんて思っている者はいません。
会社を辞めたのも、迷惑を掛けたくないからと会社側が止めるのも聴かないで辞表を送ったそうです。信頼性は抜群ですよ。
それから、一人だけ容疑者が上がったんですが。アリバイがありました」。
望月はそう言うと天を仰いで背中を延ばしていた。
「そうか、物証は影山綾乃が本犯人なんだけどな。刑事事件でしかも殺人事件の裁判中に、中止なんて訳にいかんからな。
殺人の証拠を見いだしておきながら、無実の証拠も握っているんだよな」。津浪はそうポツリ呟くように言うと車に乗り込んだ。

その頃、早乙女南は西池袋のマンションで一人公判記録に目を通していた。
そして弁護士に成り立ての頃の事を思い出していた。
あれは五年前だった、初めて殺人事件を起こした女性の弁護を引き受けた時だった。その女性は四十才、夫は競馬とパチンコ、麻雀と賭け事ならなんでもやるヤクザだった。
或日、夫が久し振りに帰って来たら、酔って金の無心に来たと言うのだった。そして金はないと言うと、夫の表情が一転し、すごい形相で睨み付けた。
奥さんは殺されると思った。
その時、近所の子供が置いて行った金属バットを手にして亭主の頭を殴っていたと言うのだった。
アパートは建て直す事が決まり、他の住人は誰一人おらず、容疑者は娘を姉夫婦に預け、一人片付けをしていた時だと言う。
そして夜更けに街をふらふらと歩いていた所を警官に職務質問され、衣服に付いた血痕を咎められて逮捕されたのだった。
早乙女はそんな女性に同情した。そんな時、私は犯行時間には東京ドームで巨人£阪神戦を観ていた。そう思っていた。
容疑者は早乙女南の母親に似ていたのだ。そして南はその日、母親と東京ドームで野球観戦していたのだった。
アリバイがあやふやだった容疑者は、突然、私その時間は野球を観ていました。と、思い出した様に野球を観戦していたと言い出した。
その話を黙って聴いていると、南が観戦していた巨人£阪神戦と全く同じだったのだ。そして席はバックネット裏。
南は訊いた、隣には誰がいたの、と。すると大柄な女性がいて、焼きそばと弁当を食べていたと言うのだった。
服はどんな服を着ていたの、と聴くと。オレンジ色のジャージだったと言うのだ。私と母がいた席の隣だ。私の記憶を自分の事の様に話している。

それからだった。
そして翌日、朝一番で後藤検事の所へ津浪警部と望月刑事の二人が顔を出した。その顔は疲れたと言っている様に不精髭が伸びていた。
「事務官、二人に濃いコーヒーを出してやって下さい。それで、静岡と映画館の影山綾乃の証言と一致したんですか」。
後藤検事は津浪と望月刑事同様、目は凹んで熊が出来ていた。
「検事もお疲れの様ですね。静岡の方は奥さんにしか会う事はできませんでしたが、法廷に出て証言しても良いと言っていました。
あの時間、九時四十五分から十二時過ぎの映画が終了するまで。影山綾乃は映画を観ていた事は事実の様です。
こうも言われました、あの時間に映画を観ていた女性が板橋で人を殺すなんて無理だとも。それから、服装ですが、映画館を出たのも一緒で、服はグリーン系のパンツスーツだったと。どうやら私達は両方の証言を得たようです」。
NO-21-22

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(20)&CG

2008-06-27 02:47:02 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(20)&CG

「しかし、そんな事はでたらめです。そんな事を聞いたような覚えはありますがでたらめに決まっています。
検事、ではどうして影山綾乃はアパートにいたと言い張ったんです。不自然じゃないですか」。
「そんな事はどうでも良い。映画館に居たと言うんだ。調べるのが先です」。
津浪刑事は一語も無く頭を下げた。
そして翌日。綾乃は検察官に呼ばれた。そして検事の前にいた。
「それで、映画館にいたと言うのはどう言う事です。そんな事はここでも話してくれませんでしたね」。
「はい、どうせ話しても刑事さんと一緒ですから。私が犯人だって決めているんですから。だから話しても無駄だと思ったんです」。
後藤検事はムッとした様に顔を顰た。
「では改めてお聞きします。二月二十日の午後八時からの事を話して下さい」。「はい、あの晩、近藤さんから電話があって。相変わらず卑猥な内容の電話でした。頭に来て映画でも観てスッキリさせようと、新宿オリオンに007のワールド、イズ、ノット、イナフって言う映画を観に行ったんです。
家を出たのが九時近かったと思います。歩いて氷川台駅から電車に乗って映画館に着いたのは調度夜の部の二回目の上映が始まる少し前でした。九時三十五分だったと思います」。
綾乃はすらすら話した。検事は、まさか、と言った風な顔をして事務官を見た。「貴方は夜アパートを留守にする時はいつも明かりを点けたまま出るそうですが、それは何故なんです。当日もそうでしたね」。
「はい、女が一人で居ると言う事を知られたくないからです。それはストーカーや痴漢、それに空き巣なんかに狙われない為です。たまにテレビなんかも点けたまま出る事もあります。自衛の為です」。
そう言われて後藤検事は返す言葉がなかった。
「では、逮捕当日はベージュのスーツを着ていましたが、映画館にもあのスーツを着て行ったんですか」。

「いいえ、ベージュのスーツは仕事に行く時だけです。映画にはグリーン系のパンツスーツで行きました。ミニだと変な人達に覗かれますから。
そうだ、私の隣の席に男の子を連れた若い夫婦がいました。確か、シンちゃんって呼ばれていました。私ポップコーンあげました」。
そしてその知らせは事務官の手に因って所轄の刑事に告げられた。そしてその日の取り調べは僅か二時間で終わり、拘置所に帰された。
その知らせを受けた所轄の刑事は映画館を調べ始めていた。
津浪警部は一人一人の従業員に聞いていた。しかし、一月も前の客の事など覚えている者は殆どいなかった。
「二月二十日、当日の九時四十五分ですがね、小さな男の子を連れた若い夫婦が来ていたと言うんです。男の子はシンちゃんとか呼ばれていたそうです」。
「ああ、それだったら向かいの喫茶店のマスターの息子さん夫婦じゃないかな。確かオールナイトを観に来ていた様な気がする。でも、静岡へ帰っちまったよ」
刑事の表情が一転して強張った。
まさか、でたらめじゃなかったのか。それとも偶然なのか、津浪は耳を疑った。
「それで、その夫婦の子供はシンちゃんに間違いないんですか」。
「ええ、信と治めると書いてしんじ、シンちゃん。間違いないですよ」。
「外に何か変わった事がなかったですか、例えば喧嘩とか事故とか」。
津浪は映画の内容や居た人間の事は聞けば分かるだろうと、映画以外の出来事なら、映画館にいなければ分からない事を聞き出そうとしていた。

すると、売店にいた女の子が出て来た。「何か」と津浪警部は聞いた。
「はい、こんな事でいいのなら。二月二十日は私が当番で映写室の助手をしていたんです。そして九時四十五分の放映前に、舞台の垂れ幕が落ちたんです。
それで少し館内がざわめいたんです。それと、映画が終わった十二時頃ですけど。お客さんが出て来た頃に、店の前で女の子同士の喧嘩があって、新宿のお巡りさんが五~六人来て連れて行きました」。
津浪警部は子供の事は電話で確認すれば良いと思い、検事に会いに戻った。
その顔は、確かな証拠を掴んだときの様に勝ち誇った様だった。
そして検事室に行くと、放映前に垂れ幕が落下した事、十二時過ぎの喧嘩の事を検事に告げた。
「それで、肝心な子供の事はどうしたんです。居たんですか居なかったんですか」検事は津浪の顔を見て納得した様に頷いた。
「それで、静岡県警に要請して確認したんですかっ!・・・」
津浪警部は首を振った。検察官の眉が釣り上がり、顔が赤くなった。
「だから今度の様な事になるんです。早く確認して下さい。今後そのような捜査ミスをしたら捜査から外れてもらいますよ、津浪君」。
津浪は黙って頭を下げた。そして自ら静岡へ飛んだ。
その若い親子は静岡市内から南に向かった登呂遺跡で有名な地域に住んでいた。
NO-20-20

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(19)&CG

2008-06-23 23:57:01 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(19)&CG

娘にも非があるからと犯人に温情の心で接する事が出来ますか?・・・」
「そ・・・」
それは刑事だから出来ると言うんですか!そんなの人の親では無いし人間ではありません!」と言葉を制して南は声を高ぶらせた。
「確かに冷静ではいられないでしょうな。お父上は殺害されたそうですね」と突然口にした。村井は初めて聞いて驚いた様に南を見た。
「そんな事は仕事と関係ありません。今日来た本当の意味は何です?・・・」
「ホテル殺人事件の件です。彼女は殺していないんですか?・・・」
「アッハハハ・・・何を言い出すかと思ったら、そんな事を私が話すとお思いですか、これから公判が始まるんですよ。お帰り下さい」
「失礼しました、もう一つ、藤井綾子さんは間違い無く無実なんですね」
ウフッ・・・南は笑いながらコーヒーを持つと一口飲んで置いた。
「警部さんも法廷に居ましたよね。裁判長の判決をお聞きになった筈です。私から改めてお話する事はありません」。
「分かりました、ご馳走様でした。お休みの所を突然お邪魔して申し訳ありませんでした」。と二人はコーヒーを飲み干した。
「いいえ、今後この様なお話の訪問はご遠慮下さい」。と玄関まで送った。
二人は車に乗り込み、軽く頭を下げると帰った。
「あの殺しが緊急避難とは驚きましたね」
「いや、早乙女弁護士の考えは的を得ている。藤井綾子は殺していなかったら殺されていただろうからな」。
「エ~ッ・・・警部はまだ彼女が犯人だと信じているんですか?・・・」
「ああ、彼女に間違いない・・・」と腕を組んで夕暮れの空を見詰めていた。


こうして事件から一月経った三月二十一日火曜日。東京地裁第245法廷で近藤貴雄を刺殺した容疑で綾乃は殺人罪で裁かれる事になった。
綾乃の弁護人席には早乙女南が一人、そして検察官席には後藤則雄検事が自信満々の顔をして、反っくり返って座っていた。
早乙女は検察官の用意した証人席に視線を移した。ホテルの従業員、そして近藤貴雄の友人、そして科学捜査研究所の技官、まだまだいた。
そんな早乙女弁護士を後藤検事は流し目で見るとほくそ笑んでいた。
早乙女は首を右に倒すと、ニヤッと微笑んだ。

そこへ女性の監視に連れられた綾乃が被告人席に来た。綾乃は早乙女を見た。
早乙女は二度三度と頷くと、綾乃は安心したように腰を降ろした。
そして、右陪席、左陪席と入り、裁判長が席に着いて裁判は始められた。
綾乃は宣誓した、嘘は言わないと。
そして裁判長が聞いた。裁判長から人定質問があった。
綾乃は生年月日と名前に住所、職業を聞かれ、影山綾乃かと聞かれた。
頷きながら「はい」と答え。「職業は現在無職です」。と明るく答えた。
そして検察側から起訴状が朗読された。
そして求釈明は簡単にやり過ごし。罪状認否にはいった。
「私は殺してなんかいません、私にはアリバイがあります。刑事さん達は聞いてくれませんでした。私はあの日、新宿の映画館にいました。無実です」。
すると法廷は騒然とした。
「嘘を言うんじゃない、貴様!・・・」と、大声を上げたのは刑事だった。
コンコンッと木槌が鳴らされた。
「静止句に、貴方は法廷を侮辱するんですか。外に出なさい」と刑事は法廷から出されてしまった。
後藤検事の顔は見る間に蒼白し、そわそわと落ち着かない様子で早乙女弁護士を睨みつけているのだった。
そして、裁判長は右陪席と左陪席と話し合い、検察官と弁護士を呼んだ。
「新しい供述です。弁護人は知っていたのですか」。裁判長は困った様に見た。「済みません裁判長、依頼人からの裁っての頼みで公表しませんでした。但し、取り調べでは話したそうです、しかし、、取り調べの刑事は嘘だと決め付けて話を聞いてくれなかったそうです。検察官はどうです」。
と、早乙女南は様見なさいと、言った感じで検察官を見た。
「検察官、被告がああ言っているいじょう、このまま法廷を続ける事は出来ません。良く調べてからにして下さい。本日は休廷にします。
次回公判は一週間後、それで宜しいですな」。
早乙女南は「しかるべく」と言うと、検察官は「しかるべく」と頭を下げた。
そして閉廷となった。
早乙女が法廷を出ると、廊下には検事と津浪警部が激怒した様に睨んでいた。
「あらっ、そんな顔をして凄んでも私には何の意味もなくてよ。公判は一週間後。まあ、起訴を取り下げるのね。では失礼、検事さん、刑事さん」。
早乙女南はスタスタと裁判所を出て行った。
「なんなんだあの態度は。津浪君、被告が映画を見ていたなんて供述調書には一行も載っとらんぞ。あの女弁護士も言っていたが被告は取調べ中に話したそうじゃないか、映画を観に行っていた事を」。
後藤検事は周りには聞こえない程の声で重く鋭い口調で刑事を責めた。
NO-19-18

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(18)&CG

2008-06-23 23:53:36 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(18)&CG

「忠告は確かに、もう一度調べてから検事に報告します。ご苦労様でした」。
大山はそうは言っては見たものの、心の中では、お前たちの二の前は踏まないよ。
そう思いながら二人を見送った。
「課長、あの二人は本富士署の刑事ですよね。何しに来たんですか?・・・」津浪警部補と組んでいる西村刑事だった。
「今二人が担当している事件を聞きに来ただけだ。西村、影山綾乃は別のアリバイを口にしていないか?・・・」。
「一度だけですけど警部補が取り調べていた話の中で、映画を観ていたとか何とか、警部補が怒り出して怒鳴ったら話すの止めてしまいましたけど。自分も嘘だと思いましたから」
「馬鹿ものっ!そんな話は私は一度も聞いてないぞ!っ」その怒鳴り声に数人の刑事たちは集まってきた。
「何でもない、仕事に戻れ」刑事たちはデスクに戻ると書類を書いていた。
「検事にはその話はしたのか?・・・」
「はい、しました。アパートに居たと言い張っていた容疑者が突然アリバイを主張して来たと言うのは、罪から逃れたい為の言い訳だろうと」。
「検事も聞いているのか、検事の判断なんだな?・・・」
「はい、状況証拠もハッキリした動機、物的証拠があるんだから公判には問題ないと。課長は何か引っ掛かっているんですか?・・・」
「いや、検事がそう言うなら良いだろう」とデスクに戻った。

板橋署を出た佐藤と村井の二人は車に乗り込むと春日町へ向かった。
「警部、突然行って会ってくれますかね」。
「分からないが会ってぅれるだろう。自宅が事務所らしいから。しかし可笑しな弁護士だな、あの容姿で男の噂が無い。お前はどう思う?・・・」
「確かにスタイルは良いし美人です。だけど弁護士ですからね、普通の男は恐れ多くて近づきませんよ。ところでお嬢さんはどうですか?・・・」
「うん、相変わらずだ。今時の高校生は何を考えているのか分からない」
そんな話をしながら春日町の駅前から裏通りにはいり、閑静な住宅街へ入った。
とても豪邸とは言えなが立派な二階家の門を入って車を止めた。
早乙女家のガレージには真っ赤なベンツが止まっていた。
「居るな、車がある」と降りると玄関が開いた。エプロン姿の母親の奈美江が小さく頭を下げた。

「こんにちは、突然お邪魔して申し訳ありません。本富士署の佐藤と村井です。先生はご在宅でしょうか?・・・」
縁側の窓が開いた「佐藤さん、どうされたんですか」南が顔をだした。デニムのホットパンツに白いティーシャツ姿に刑事は驚いた様に視ていた。
「その格好から察すると今日はお休みですか?・・・」。
「ええ、どうぞ」と窓を閉めると玄関へ回った。
「お邪魔します、そう言う格好も良いですな。初めて見ます」
「それはどうも、今日はどのような、お母さんお茶お願い、書斎へどうぞ」と書斎へ案内した。
十畳程の書斎は応接セットが置かれ、壁には書棚があり、ビッシリと本が入っていた。そしてデスクの上にはパソコン、書類が閑散と置かれていた。
二人は並んで座り、正面に南が座った。「それで、ご用件は?・・・」
「ええ、いま板橋署へ寄って来ました。影山さんの弁護をされるとか」
「ええ、佐藤さん達は関係ないと思いますけど。それが何か?・・・」
「単刀直入にお尋ねします。早乙女先生のお考えをお聞きしたいんです。犯罪者をどう言う考えで弁護されているかです」。
コンコン、とノックして母がお茶と茶菓子を持ってきた。「有難う」そして二人に出し、母は出て行った。
「どうぞ」とコヒーを一口飲んで戻した。
「犯罪者の権利を守ってあげたい、それだけです。では逆にお尋ねします。お二人は犯罪を犯した者は脱退悪だとお考えですか」。
「これは手厳しいですな、なあ、我々はそれを取り締まる側ですからね。あの藤井綾子さんと今度の影山綾乃さん似ていますな」。
「何を言いたんですか?・・・」
「いいえ、早乙女先生は殺人犯をどう思います?・・・木村は殺されて当たり前だとお思いですか」南を見詰める佐藤の目が険しくなった。
「仮に、藤井さんが殺害したとしても。それは緊急避難でしょう」。
刑事は考えもしなかった答えに二人は目を合わせた。
「・・・これは驚きました。殺人は緊急避難ですか?・・・」
「いいえ、殺人犯の全てがそうだとは言っていません。藤井さんの事案をお尋ねになったからです。仮にと申し上げた筈です。
弁護士ではなく一人の市民としてお話します。もし、ぐうたらな亭主が居て、働きもせず飲む打つ買うで妻や子供を泣かされ、おまけにDVだったら。私がその主婦だったら駄目な旦那を終わりにするでしょう」
「これは驚きましたな、終わりですか、殺すと言わないまでも抹殺するんですか。それで心は痛みませんか?・・・」
「どうしてですか?・・・その先に待っているのは母子の悲惨な末路ですよ。それは回避する為の緊急を要する手段です。
警部のお嬢さん確か裕子さんでしたね。レイプされて殺されたらどうします。
NO-18-16

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(17)&CG

2008-06-20 03:39:28 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(17)&CG

着替えや下着、そして暖かいジャンバーが入っていた。綾乃は、両親でさえ自分に会いに来てくれないのに、そう思うと涙が流れた。
そして翌週、二月二十八日には殺人容疑で起訴された。
綾乃の身柄は警察署から拘置所に移された。
その日の午後、早乙女弁護士が多くの手荷物を持って面会に来た。
「先生、いろいろ有り難うございます。両親も私の事を信じてくれません。だから面会にも一度も来てくれないんです」。
綾乃はサッパリした様に言うと、その目元は涙で濡れていた。
「もう少しよ、貴方は無実なんだから。でも、そうするには裁判が始まるのを待つの。貴方が近藤貴雄を刺殺した容疑で裁判を受けなければならないの。
それで、法廷に立ったときに事実を話すの。
一時不再理ってあってね、二重訴訟禁止の原則、聞いた事くらいあるわよね。法廷に提出された裁判事案で一度無罪の判決がなされた場合、もし、もしもよ、自分がやりましたって言っても同じ罪では裁く事は出来ない、そう言う法律があるの。早乙女はそう言おうとしたが止めた。
知らない方が良いと思ったからだ。
そして一週間が過ぎ、綾乃を担当する検察官は凶器は自分の物と認めた事、凶器に着いていた指紋、ホテル従業員の目撃情報。そして状況証拠など、綾乃の自供が得られなくても充分と判断した。
そして、拘置所に行った検察官は偶然にも早乙女南と会った。検察官は余りに若い女性弁護士に思わず含み笑いを浮かべてしまった。
「早乙女南弁護士とは貴方でしたか。まあ、裁判官には被告人の情状酌量を得る事ですな」。
「そうですわね、でも鳶がコンコルドを産むかも知れませんわよ。では失礼します検事様。アッハハハハハハ」。
早乙女はそう笑いながら頭を下げると、とっとと帰ってしまった。
「なんだあの無礼な態度は、コンコルドでは無くコンドルの間違いに気が付かないで若いだけだな。事務官、あれは何所の弁護士会の人間だ」。
「はい、早乙女南弁護士は何処の弁護士会にも所属していません。フリーです」「そうか、では礼儀を弁えないのは仕方がないな」。

その頃、板橋署を二人の刑事が尋ねていた。
本富士署の佐藤警部と村井刑事の二人だった。生活安全課一係のドアを叩いた。
「失礼します、大山課長・・・」デスクの大山が笑顔で腰を上げた。
「来たな、本富士署の署長から連絡があった。どうぞ・・・」と大山は二人を応接室へ案内した。「それで、どんな用件ですかな?・・・」
「はい、実は先日起こったホテル殺人事件の件です。近藤貴雄さん殺害で影山綾乃さんが殺人容疑で送検されたとか、間違いないんですか?・・・」
「ええ、凶器からも彼女の指紋が出ています。動機は睡眠薬を盛られて眠らされ、恥ずかしい写真を数十枚撮られ、それをネタに脅かされて二ヶ月、
それで殺害に至った。と我々は睨んで送検しました。それが何か?・・・」
「ええ、去年我々が扱った事件は覚えていますか?・・・」
「まだ、本星が挙がらないらしいですな。それと今回の事件は関係ないでしょう。
それとも、何か関わっているんですか?・・・」
「いいえ、事件そのものではありません。私が危ぐしているのは彼女を弁護している早乙女弁護士です。
忠告に来ました。彼女は切れますよ、若い女弁護士と侮っていると痛い目に合います。こんな事を伺うのは場違いですが、容疑者はアリバイを主張していませんか?・・・」佐藤の言葉と西村刑事の真剣な眼差しに大山は身を乗り出した。
「あの弁護士はそんなに凄腕なんですか?・・・」
「ええ、あの松村検事正ですが、彼女に負けて秋田に左遷されたんです」
「エ~ッ!・・・津浪警部補!!津浪は居ないのか!!」
「ハイ!・・・居ます、何ですか?・・・」と入ってきた。
「こちらは本富士署の佐藤警部と村井刑事だ、近藤殺しの件で来られた。影山綾乃は他にアリバイを話してないのか?・・・」
「どうせ話しても出任せですよ。今の所はアパートに居たと一点張りですが、それがどうかしたんですか?・・・本富士署から態々」。と津浪は二人の刑事の名前を聞いて知っていながら業と訊いた。
「いや、供述が変わっていないならそれで良いんだ・・・それで、例の女弁護士は何か言って来たか?・・・」
「いいえ、特には。先日来た時に生意気な弁護士ですよ。送検を取り下げないと困るわよ、だと。凶器から指紋が出ていますし、例の写真の事で決まりでしょう。では私は仕事に戻りますので」と津浪は二人に頭を下げると出て行った。
佐藤と村井は薄く唇を噛んで大山課長を見ていた。
「聞いての通りです。他にもまだありますか?・・・」
「いいえ、他にアリバイの供述が無ければ、でも、あの弁護士は凄いですよ。公判が始まる前にもう一度良く確かめて下さい。
我々は公判が始まったその法廷で新しいアリバイを聞かされました。と言うより、取調べでも、それらしい自供を聞いていたましたが、言い訳だと判断して痛い目にあいました。そこの所を・・・では我々はこれで失礼します」。
と佐藤は腰を上げた。
NO-17-14

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(16)&CG

2008-06-20 03:32:45 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(16)&CG

「どうも、私は早乙女南と言います。女性の刑事事件専門に弁護しています。警察に伺ったら弁護人がまだだと言われましたので。
影山さんもご存じの通り、刑事事件では弁護人がいないと裁判は受けられない事になっています。私で宜しければ弁護させて頂きます」。
早乙女は真っすぐ綾乃を見据えて名刺を差し出した。「貴方はあの日、映画を観に行っていたの」・・・と南は念じた。
綾乃はホッとした様に瞳を輝かせて名刺を受け取ると椅子に掛けた。
「影山さん、貴方が取り調べで話した供述調書を読ませて頂いたけど。殺害のあった晩はアパートにいたと言い張っているけど、本当なの?・・・」。
すると、綾乃は「えっ!」と驚いて怪訝な顔をして早乙女を見た。
「私アリバイならあります、あの晩は映画館にいたんですよ。アパートにいたなんて嘘です」。早乙女はニヤッと微笑んだ。
「そう、でも今後の取り調べでもアパートにいた事を一貫して言い通して。どんな事を言われようと威されてもアパートにいた事にするの、良いわね。
私が必ず助けてあげる、無罪で釈放させてあげる。私が信じられる?・・・」
「でも、私は映画館に居たんです。それでもアパートにいた事にするんですか」。綾乃はそう言うと困った様に早乙女弁護士を見ていた。
「そうです、裁判は賭け引きなんです。取って置きの隠し玉は最後の最後に出すんです。警察はこの数日の内に送検して起訴する筈です。
どんな甘い事を言われてもアパートにいた事以外は絶対に話しては駄目よ、しつこく言われたら黙秘権を行使して。容疑者には最後の砦みたいな物ね
影山さん、貴方の部屋の鍵を借りて行くけど良いわね。貴方の着替なんか取って来てあげる」。
綾乃は何だか分からないけど、早乙女弁護士に総てを任せる事にした。
「先生、年をお尋ねして良いですか。私は二十六ですけど、知っていますよね」。
「ええ、知っているわよ。私は貴方より二つ上、必ず自由にしてあげる」。
綾乃はその自信に満ちた早乙女の目をじっと見詰めて頷いた。
そして接見時間は終わり、綾乃は再び取り調べを受けた。
「いいかげんに話してしまえ、いくらアパートにいたと言い張っても凶器に指紋がある以上、お前以外考えられんのだ。
それに、当日お前が着ていた服をホテルの従業員が目撃しているんだ。間違いなくこのスーツだったと証言しているんだぞ。
聞けはオーダーメイドだって言うじゃないか、我々みたいな刑事にはこんな十五万のスーツは作れんよ。

確かにあんな写真を取られて辛かっただろう。それは同情する、こんな事は言ってはいけない事だが、裁判官だって同情するさ」。
これが早乙女さんが言っていた甘い言葉なんだ。でも私、どうしてアパートにいたなんて話したんだろ。
綾乃は不思議でならなかった。ついクスッと笑ってしまった。
「おい、何が可笑しいんだっ!。お前は人一人殺しているんだぞ、それを」。津浪は顔を真っ赤にして睨み付けていた。
これが威しか、早乙女さんの言う通りね。
「刑事さん、だったら私が殺したって言う証拠を見せてよ。そんなの状況証拠って言うんでしょう。誰か見ていたんですか。
凶器に指紋があったからって当たり前じゃないですか、私のナイフなんだから。
そう言っているじゃないですか。私はアパートにいました、それ以上なにも話す事はありません」。
「あの女弁護士に何か言い含まされたのか?・・・」
「いいえ、警察は私が犯人だって決め付けているけど、早乙女先生は私を信じてくれました。それだけです」。
「まあいい、ただ殺害に使われた凶器が残されていたんだ。お前も馬鹿な女だな、凶器を残して行くとは」と口元が笑っていた。
「そうですよね、私なら持って逃げますけど。そんな単純なことで警察は私が殺したって判断されたんですか?・・・
日本の警察は世界一というのは嘘なんですね。疑うのが商売ですから、それは仕方ないと思いますけど、こんな事をしていたら真犯人が逃げてしまいますよ」。
「何とでも言いなさい、お前以外に彼を殺す動機がある人間はおらんのだからな」
「そんな事無いですよ、私の他にも脅されていた女性は何人もいますよ」
「その言葉に津浪と西村刑事の顔色が変わった。
「それ誰だ!・・・それが誰だね」と優しい口調に変わった。
「それを調べるのが警察でしょう。甘えないで下さい」と睨み付ける綾乃だった。
「話してくれないかね、君の為でもあるんだ。誰だね?・・・」
「さあ、知っていても言いません。また逮捕されると可愛そうですから」。
それから綾乃は一言も喋る事は無かった。
こうして夕方には留置所に戻された。そして夕食が済むと手提げ袋が二つ、係官が差し入れを持って来てくれた。「影山綾乃さん、差し入れだ」と格子の間から差し入れた。
「有難う御座います」受け取ると早乙女弁護士からだった。
NO-16-12

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(15)&CG

2008-06-15 17:59:00 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(15)&CG

あいつ私に嘘を言っていたんだ、写真はこれだけだなんて。もう自首はしない。
誰にも見られなかったし、部屋はいつも明かりを点けたまま。絶対に自白なんかしない、あいつが悪いんだ。
綾乃は椅子に座らされ、窓から入ってくる光を浴びながらそう思っていた。
そこへ津波警部補が小さなダンボール箱を持って入って来た。
「影山さん、貴方ここへ呼ばれた訳は分かりますね」。と、津浪警部は優しい声で言うと綾乃を見た。「いいえ、どうして私がこんな所へ呼ばれたんですか」。
綾乃は俯いたまま答えた。

「そうですか、今朝早く近藤貴雄がカーホテルで刺殺されました。一緒に入ったと思われる女性の姿がありません。貴方でしょう、殺害したのは」。
そのとき、綾乃は近藤を刺したナイフを置き忘れた事を初めて思い出した。
「いえ、私は殺してなんかいません。確かに殺してやりたいと思いました。でも殺すなんて」。
「ふざけるんじゃない、見なさいこの写真を、全部貴方の写真ばかりだ。見られたくはないだろうが、貴方の全裸の写真だ、それも普通じゃない」。
刑事はそう言うと、綾乃が全裸で股を開いた写真を一枚づつ机の上に並べた。
「やめてっ!・・・止めて下さい」。
綾乃は身をかぶせる様に写真を集めた。そして両手に握り締めた。
「確かに見るに耐えられないほど酷い写真だ、同情はします。しかし、だから殺して良い事にはならない。これは貴方のナイフですね」。
刑事は透明のビニール袋を手にした。見ると血が着いたナイフが入っていた。
「はい、それは確かに私が大学の時に入っていた登山のサークルにいた頃に使っていたのに似ています。でももう四年も前の話です」。
「そんな昔のナイフの事を一目見ただけで良く分かりますね」。
「はい、そのナイフの柄を見て下さい。その頃に付き合っていた彼のイニシャルが入っているでしょう。忘れるもんですか」。
綾乃はその頃の事を思い出していた。
綾乃が生まれて初めて好きになった人。叶明、その人に貰った登山ナイフだった。しかし、体を許す前に穂高の山に飲まれて死んでしまったのだった。綾乃の目には止めど無く涙が流れた。

「蔭山さん、あなた近藤の車に乗った事はありますか」。
「はい、写真をネットで流されたくなかったから付き合えって。嫌々乗せられた事はあります。あんな男殺されて当たり前よ。
この二ケ月、こんな写真を撮られて見せられて、私が平気だったと思いますか。毎晩決まって八時になると電話が来るんです。
出なければずっと鳴っているんですよ。出れば卑猥な話しばっかり、平気だったと思っているんですか。私が喜んで聞いていたと刑事さんは思っているんですか」。綾乃はそこまで話すと、両手で顔を覆い泣いていた。
「貴方のアリバイですが、夕べは本当にアパートに居たんですか?・・・」
「居ました。さっきお話しした通りです。それ以後は出ていません」。
「近藤とは何処までの関係だね?・・・何も無かったなどと言う事は通りませんよ。関係も無い男に、こんな写真撮らせませんからね」
綾乃はムッとした顔を上げて睨み付けた。それなら良い、もう話はしない。と心に誓った。
こうして黙ったまま窓を見ていた。その後、刑事の質問には答えず、頑と口を割らなかった。

そして一時間、二時間。そこへ年配の刑事が入って来た。
そして津浪警部を呼んだ。津浪は部屋を出た。
そして直ぐに戻って来た。そして書類を広げた。
「影山綾乃さん、貴方を逮捕します。罪状は近藤貴雄の殺害容疑です。凶器のナイフから貴方の指紋が検出されました。正直に話してくれますね」。
津浪は自信満々だった。そして殺人事件のスピード逮捕に顔が綻んでいる様にも思える綾乃だった。
「いいえ、私は殺していません。何時に殺されたんですか?・・・」
「十一時半頃です、それに、凶器のナイフに貴方の指紋があるんですよ。正直に話して下さい」。
「私のナイフですから指紋があっても不思議じゃありません。今の警察は10年前の指紋でも見つけ出せるそうですね。だから見付ったんでしょう。私は殺していません。散歩から帰ってから一歩も出ていません」。
綾乃は一貫してアパートにいたと言い張った。

翌日、新聞でもテレビニュースでも、カーホテル刺殺事件の犯人は影山綾乃だと報道していた。
そして二日、三日と過ぎた。
そして二月二十四日、朝から一人の女弁護士が生年月日を記した綾乃の写真を手にタクシーに乗り、板橋警察署に向かっていた。
綾乃は突然刑事から弁護士の接見だと言われ、部屋に通された。
そして手錠が外された。
そこには弁護士とは思えない程若くて奇麗な女性が座っていた。NO-15

サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(14)&CG

2008-06-15 17:45:45 | 小説・サブリミナル-二章-
サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(14)&CG

「焦らないで、一緒にシャワー浴びましょう。それから・・・・ね」。
近藤は渋々頷くとシャワー室に行くと浴槽に湯を入れて戻って来た。
「これ、ごめん。これで全部です。SDカードも持ってきました。パソコンには入れてありませんから」とセカンドバックから写真を出すと綾乃に差し出した。
それは見るに耐えられない程恥ずかしい写真だった。
「本当にパソコンに入れてないんですか」
「親父が見ると困るから入れてないよ。写真もそれで全部だよ、本当に申し訳ない。二年前、綾乃さんが会社に仕事で来てくれたろ、その時からずっと好きだったんだ。こんな写真撮って済まない。でも誰にも見せてないから、僕だけの綾乃さんでいて欲しかったんだ」。

勝手な事いわないでよ、私はどんな思いをしてたのか知っているの。綾乃はそう思いながら写真とSDカードをバックに入れた。
「この写真、私が貰っても良いわよね」。
「えっ!・・・ああ良いよ。こらからは生が見られるし、ビデオ撮らせてくれるんだろ」。
ふざけないでよね、綾乃はスカートの中に手を入れるとナイフを握った。近藤は下着を降ろすのかと、ゴクッと生唾を飲んだ。
「誰があんたなんかと結婚する訳ないでしょう。私がどんなに辛くて切ない思いをしたか。死んで・・・」。そう言うか早いか綾乃は近藤の胸を突いていた。
「あっ、あぁぁぁや・・・・の・・さ・・ん・・・」と、近藤はバッタリ倒れて動かなかったその時、綾乃は我に返った。

大変っ!・・・どうしよう、どうしよう・・・
もう頭の中はバニックになっていた。そして、綾乃はどこをどう帰ったのかアパートの前に来ていた。
そして部屋に入るとボ~ッとしていた。
そして、我に返ると、淫らな写真の事を思い出した。バックから写真を出し、一枚一枚灰皿の中で燃やした。そしてSDカードをパソコンに入れると写真を見ながら消去した。
血、返り血が、血が着いているかも。全裸になり、目を皿のように服の隅々を見た。そして下着も脱いで見た。しかし一滴の反り血も浴びていなかった。
全裸のままソファーに座り、暫くの間、呆然と座っていた。
自主しよう、綾乃は時計を見た。既に午前五時を回っていたが、窓の外は真っ暗だった。

下着を穿いて部屋着に着替えて部屋を片付けはじめた。冷蔵庫の物は何も可もゴみ袋に入れ、収集所に出した。
そして、着ていた服と下着も荒い、干し終わると明るくなっていた。
熱いコーヒーを入れ、両手でカップを押さえ、ボーットしていた。

すると、コンコンッとノックがあり、チャイムが鳴った。
綾乃は窪んだ目をしてドアを開けた。二人の男が立っていた。
「蔭山綾乃さんですね」。一人の男が胸のポケットに手を入れながら聞いた。
「はい、蔭山ですが、何か」。
「板橋署の津浪と西村です。少し伺いたい事が有りまして。宜しいでしょうか」そう良いながら津浪は玄関に足を踏み入れた。
「近藤貴雄さんご存じですよね」。
「はい、知り合いと言うかストーカーと言うか。殆ど会った事はありません」。綾乃は自主しようとした所へ現れた刑事に困惑しながらも、自分を逮捕しに来たのではないと思い、自主する気持ちが薄れていた。
「ストーカーですか、貴方夕べはどちらにいらしていました」。
「なんでですか?・・・混同さんどうかしたんですか?・・・」と冷静だった。
「ええ、事件が起きまして、それで関係者に伺っているんです」。
「事件ですか?・・・私は関係者ですか?・・・まあいいです。夕べは仕事が終わったのが六時過ぎで、アパートに戻ったのは七時過ぎていました。後はアパートにいました」。

刑事の二人は口を尖らせて小刻みに頷いていた。
「では夕べは帰られてから一歩も外には出てないと言う事ですか」。
「散歩には出ました。八時に近藤さんから卑猥な電話があって、どうしても気分が良くなくて、気分を変えようと十時過ぎに少し出ました。三十分程です」。
すると、西村刑事の携帯に電話が入った。刑事は場を外して携帯に出た。
綾乃をじろじろと見ながら話していた。すると表情が強張った。
そして戻ると津波警部補に耳打ちした。分かった、と顔を向けた。
「蔭山さん、申し訳ないですが署まで御同行願います。貴方、近藤から何か威されたりしていませんでしたか」。
綾乃は外にも写真があったのか、そう思ったら涙が流れた。
「いいえ、威されてはいませんでしたけど。二ケ月前、睡眠薬入のコーヒーを飲まされて・・・裸の写真を撮られてしまいました。警察に届けようと思いましたけど、恥ずかしくて届けられませんでした」。
刑事は同情したように大きく溜め息を吐いた。
「そうでしたか。ともかく、詳しい話は署の方で」。綾乃はバックを持つと刑事の後に続いた。
板橋署に着くと取調室と書かれた狭い部屋に通された。
NO-14-8