サブリミナル・(美しい子悪魔)・第二章・NO-(23)&CG
「済まない望月、近藤は空き巣紛いな事をしていたらしい。近藤の車のトランクからは影山綾乃のイニシャルが入った下着なんかも数点も出ている。しかしだ、私は凶器の指紋で行けると思ったんだ」。
「津浪君、私だけでなく君も処分されるよ。もう裁判は維持できん。完璧に我々の負けだ。いや、負けとかと言うより誤認逮捕で公判を開いてしまったんだからな、初動捜査のミスと証拠物件の隠蔽、話にならないな。
あの高慢な早乙女弁護士の顔が目に浮かぶ。起訴を取り下げる。君達はスピード検挙を焦るあまり、凶器の指紋に肩より過ぎたようだね。
死角だよ。凶器の諮問に頼り過ぎた。その刑事がこんどは無実を実証したんだ。無理だ、この儘公判を維持するのは無理だ。我々の完敗だよ」。
その検事の一言に、望月刑事は憤慨した様に津浪警部を見据えた。
「では新犯人は誰なんですっ!・・・捜査は初めからやり直しですか」。
「当たり前だ、望月君。そうだ、近藤貴雄は自殺って線はないか?・・・
カーホテルには近藤一人で入った。その後、直ぐに女が入ったからホテル側は同伴だと思い込んでしまった。
しかし、後から入った女が部屋に入った時に近藤は既に死んでいた。それで女は慌てて逃げ出した。その後ろ姿を従業員は見た。
少し無理があるが、ともかく影山綾乃は釈放の手続きを取る。公判なんか待ってはいられないぞ、マスコミに突っ込まれる前に釈放させるんだ。とんだ茶番だった様だね、津浪君」。
こうして翌日、三月二十三日。緊急公判が開かれる事になった。
法廷は同じ東京地裁245法廷に同じ顔触れが揃った。綾乃は突然の公判に驚いていた。そして被告人席に立っていた。
裁判長は苦渋に満ちた顔をして見詰め、口を開いた。
殺人の容疑者とされた影山綾乃さんには大変な思いと心労をさせてしまいました。
この裁判は警察の無秩序な取り調べと証拠隠蔽に因り無効とする。
本件、近藤貴雄に対する殺人事件に関する、影山綾乃被告の容疑は検察官から起訴の撤回がありました。因って影山綾乃被告人は無罪。本法廷は此れにて閉廷。
すると、傍聴席からは大きなどよめきが起こった。綾乃の目からドッと涙が溢れた。そして裁判長に深々と頭を下げた。そして早乙女弁護士に駆け寄った。
「先生、有り難うございました。お陰様で無罪になりました」。
「うん、おめでとう綾乃さん。良かったわね、会社へ復帰できるわよ。さあ、皆表で待っているからいきましょう」。
そして法廷を出た綾乃と弁護士の早乙女を待っていたのは綾乃の会社の同僚だけではなかった。真っ先に声を掛けて来たのは津浪警部だった。
「早乙女さん、正にやられたって感じですね」。
「良く言うわよ、貴方が証拠品を隠蔽せずにちゃんと出していれば良かったのよ綾乃さんが容疑者として拘留される事も送検される事も。まさか警部さんが自らルールを破っていたなんて・・・とても残念です」。
津浪は返す言葉もなく、肩を落として帰って行った。
まるで嘘の様な結末だった。そして、その日の午後、津浪警部は辞職した。
そして一週間後の三月三十日、検事の後藤は富山の地方都市に飛ばされた。
そして更に一週間、四月に入って影山綾乃は元の会社、JPインシュアランスに復職し、同僚から励まされながら机に向かっていた。
しかし、早乙女南弁護士のした事は、弁護士としても人間としても決して喜ばしい事ではない。してはいけない行為なのだ。
だだ、殺された近藤貴雄のした行為があまりにも人間性に欠けた事であり、早乙女は綾乃を殺人犯にしてしまう事を見捨てておけなかった。
そして、津浪警部の証拠物件の隠蔽までは見抜けなかった。一人の警部の職を退かせ、有能な検事を地方に葬ってしまった。その事に対しては反省していた。
しかし、そう導いたのは己の職務の怠慢からだと自分自身に言い聞かせている早乙女南だった。
そして綾乃は警察から返された証拠品の中からグリーン系のパンツスーツを手に、サイズは同じ、私の?・・・と、首を傾げているのだった。
・・・完
有難う御座いました。
「済まない望月、近藤は空き巣紛いな事をしていたらしい。近藤の車のトランクからは影山綾乃のイニシャルが入った下着なんかも数点も出ている。しかしだ、私は凶器の指紋で行けると思ったんだ」。
「津浪君、私だけでなく君も処分されるよ。もう裁判は維持できん。完璧に我々の負けだ。いや、負けとかと言うより誤認逮捕で公判を開いてしまったんだからな、初動捜査のミスと証拠物件の隠蔽、話にならないな。
あの高慢な早乙女弁護士の顔が目に浮かぶ。起訴を取り下げる。君達はスピード検挙を焦るあまり、凶器の指紋に肩より過ぎたようだね。
死角だよ。凶器の諮問に頼り過ぎた。その刑事がこんどは無実を実証したんだ。無理だ、この儘公判を維持するのは無理だ。我々の完敗だよ」。
その検事の一言に、望月刑事は憤慨した様に津浪警部を見据えた。
「では新犯人は誰なんですっ!・・・捜査は初めからやり直しですか」。
「当たり前だ、望月君。そうだ、近藤貴雄は自殺って線はないか?・・・
カーホテルには近藤一人で入った。その後、直ぐに女が入ったからホテル側は同伴だと思い込んでしまった。
しかし、後から入った女が部屋に入った時に近藤は既に死んでいた。それで女は慌てて逃げ出した。その後ろ姿を従業員は見た。
少し無理があるが、ともかく影山綾乃は釈放の手続きを取る。公判なんか待ってはいられないぞ、マスコミに突っ込まれる前に釈放させるんだ。とんだ茶番だった様だね、津浪君」。
こうして翌日、三月二十三日。緊急公判が開かれる事になった。
法廷は同じ東京地裁245法廷に同じ顔触れが揃った。綾乃は突然の公判に驚いていた。そして被告人席に立っていた。
裁判長は苦渋に満ちた顔をして見詰め、口を開いた。
殺人の容疑者とされた影山綾乃さんには大変な思いと心労をさせてしまいました。
この裁判は警察の無秩序な取り調べと証拠隠蔽に因り無効とする。
本件、近藤貴雄に対する殺人事件に関する、影山綾乃被告の容疑は検察官から起訴の撤回がありました。因って影山綾乃被告人は無罪。本法廷は此れにて閉廷。
すると、傍聴席からは大きなどよめきが起こった。綾乃の目からドッと涙が溢れた。そして裁判長に深々と頭を下げた。そして早乙女弁護士に駆け寄った。
「先生、有り難うございました。お陰様で無罪になりました」。
「うん、おめでとう綾乃さん。良かったわね、会社へ復帰できるわよ。さあ、皆表で待っているからいきましょう」。
そして法廷を出た綾乃と弁護士の早乙女を待っていたのは綾乃の会社の同僚だけではなかった。真っ先に声を掛けて来たのは津浪警部だった。
「早乙女さん、正にやられたって感じですね」。
「良く言うわよ、貴方が証拠品を隠蔽せずにちゃんと出していれば良かったのよ綾乃さんが容疑者として拘留される事も送検される事も。まさか警部さんが自らルールを破っていたなんて・・・とても残念です」。
津浪は返す言葉もなく、肩を落として帰って行った。
まるで嘘の様な結末だった。そして、その日の午後、津浪警部は辞職した。
そして一週間後の三月三十日、検事の後藤は富山の地方都市に飛ばされた。
そして更に一週間、四月に入って影山綾乃は元の会社、JPインシュアランスに復職し、同僚から励まされながら机に向かっていた。
しかし、早乙女南弁護士のした事は、弁護士としても人間としても決して喜ばしい事ではない。してはいけない行為なのだ。
だだ、殺された近藤貴雄のした行為があまりにも人間性に欠けた事であり、早乙女は綾乃を殺人犯にしてしまう事を見捨てておけなかった。
そして、津浪警部の証拠物件の隠蔽までは見抜けなかった。一人の警部の職を退かせ、有能な検事を地方に葬ってしまった。その事に対しては反省していた。
しかし、そう導いたのは己の職務の怠慢からだと自分自身に言い聞かせている早乙女南だった。
そして綾乃は警察から返された証拠品の中からグリーン系のパンツスーツを手に、サイズは同じ、私の?・・・と、首を傾げているのだった。
・・・完
有難う御座いました。