エンターテイメント、誰でも一度は憧れる。

PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

小説・一刻塚-(NO5)

2009-06-24 17:18:11 | 小説・一刻塚
小説・一刻塚-(NO5)

「まさか優子さんも此の記事と一緒だったの、バラバラだったの?・・・」。
「いや、そんな事はなかった。詳しい死因は発表されてないから分からないけど、怪事件なのは確かだ」。猿渡は怖がらせまいと真実は避けて言わなかった。
すると、麻代は浮かない表情で新聞記事をコピーした被害者の写真を見詰めていた。「何処かで見た事あるのよねこの人達、勘違いかな」と、ボソッと言うのだった。
「何処かで見たってニューで顔写真は何度も流れたからな」。
「そうじゃくてさ、う~んッ思い出せない!」と、悔しそうに書類を戻した。
そして、食事を済ませてレストランを出ると、猿渡は店の前に止めた自転車を押しながら麻代と並んで県庁方向へ歩いた。
「ねえ、まさか内堀を抜けて帰るの?・・」と、アーケードの明かりに照らされた麻代の表情は、私は嫌、と言う様な瞳を投げ掛けていた。
「反対側を行くよ、どうせ警察が通行止めにしているから」。
「うん、それならいいけど」、ホッとした様に腕を取って寄り添う麻代だった。
そして、市役所の裏の道から中央署に出た。信号を待って県庁の正面玄関に向かって歩いた。何人もの警察官がパトロールしていた。

やはり殺害現場となった内堀の東側の道路は通行止めになっていた。朱色のラバーコーンが置かれ、パトカーが止まり、警官が立っていた。
公園を抜けようと見ると立ち入り禁止になっていた。やっぱり駄目ね。と、麻代は猿渡の持つ自転車の後ろに周り、押す様に二人は一方通行を逆に向かって歩いた。
ムッとする様な八月の蒸し暑い夜風が、掘り割りの水面に波紋を描いていた。
二人は走ったり止まったりと子供の様に笑い、追い駆けっこをしながら安東町にある、猿渡のアパートに着いたのは午後八時だった。
部屋に入るムッとした。麻代はエアコンのスイッチを入れると窓をいっぱいに開けた。すると、電話が鳴った。

ハ~イ、と麻代が電話を取った。「啓太さん先輩さんからよ、筒井さん」。麻代は受話器を渡すと風呂場に行き、風呂を沸かして戻って来た。
猿渡は電話を終えてパソコンに向かっていた。そっと後ろから抱き着いた。
「筒井さん何だったの、事件の話し?・・・」と、前に回ると膝に横座りした。

「うん、麻代には黙っていたけど孰れ分かる事だから話すよ」と、猿渡は前置きして事件の内容を話した。麻代はパチッと目を見開いて驚き、首に抱き着いた。

「怖~い、じゃあ優子さんも怪物に食い殺されたって言うの?・・」。
「先輩の話しだとな、五月に起きた事件で警察も異例と思える怪事件で動物学者や古代生物の専門家なんかに依頼して調べていたんだって」。

「それで、何か分かったの?・・・」麻代は膝から降りると床に座った。
「いや、結局分からなかったんだってさ。遺体に残されてた歯型から調べても類似する動物はいなかったらしい。
それから、優子さんだけど。司法解剖では人間の歯型だと報告があったけど。後から電話があって人間ではないと取り消して来たらしい」。

「じゃあその怪物は月の始めに女性を襲って食べているってことなの?・・・」
「何とも言えない。でもなんで五月一日からなんだ、そんな怪物が昔からいたとしたら知られているだろ、それにもっと犠牲者が出ててもいい筈だ。
殺された女性達は一人として面識はないし、共通してる事は二十歳前後の未婚の女性と言うだけだってさ」。

すると、麻代は雑誌や専門書の書棚をじっと見詰めいていた。そして不意に立った。
「分かった!思い出したよ啓太さん」麻衣は書棚に手を伸ばすと去年の五月の雑誌を棚から出した。そしてバラパラとめくっていた。

「あった、此れ見て。信州の一日塚を取材した記事よ、取材した人が撮った写真。
あの三人と優子さんが写っているでしょう」。
そう言って見せた頁には、聞き慣れない一日塚などと言う奇妙な名前の塚を扱った記事と十人程の女性が写った頁だった。

「麻代、やったな。これで四人は繋がったぞ、でも何だ一日塚って、一里塚なら知っているけど一日塚なんて聞いた事ないぞ」。
「うん、それで私も変なのって思って見ていたから写真を覚えてたの。さっき私に見せた新聞記事のコピー出して。きっとあの人達だと思う」。

猿渡は雑誌の写真を見るなり間違いないと思いながらバックからコピーを出した。
そして広げた、間違いなく惨殺された四人は写真の十二人の内の四人だった。
ゾクッと背筋が凍る思いに麻代を見上げた。
麻代は両手で頬を押さえていた、頬の産毛が逆立ち、そしてキャミソールから覗いた胸元には鳥肌が現れていた。
猿渡は雑誌を手前に引くと一日塚の由来を読み始めた。簡単に言うとこうだった。
NO-5-8

小説・一刻塚-(NO4)

2009-06-20 01:13:40 | 小説・一刻塚
小説・一刻塚-(NO4)

「うん、そう言われてみればそうだ。じゃあ来月は愛知か?・・・」
「それより被害者を襲ったとする動物は分かったんですか?・・・」

すると、筒井はセカンドバックから写真を出して猿渡に渡した。それは被害者の手足や腹部が噛み切られたと思われる被害者の傷跡だった。

「これはひどい、でも犬とか熊とは違いますね」そう言いながら写真を顔に近付けた。「先輩、此れは?・・・」猿渡は驚いた様に顔を上げた。
「人の歯型に似てる。ここへ来たのはその事なんだ、司法解剖してるH大の解剖医から電話があってな、人間の歯型だと言って来た。
でもそれらしい人間を誰も目撃していない、犯行があったのは午前五時頃だ。
今はもう明るくなっているし、散歩していた老夫婦がベンチに座る被害者からおはようございますと声を掛けられてる。
それが五時少し前だ。警察に通報が入ったのが五時十分、十分か十数分程で犯行に及んでいるんだ。一人でしかも短時間でこんな事が出来るとは思えない。
しかしだ、歯型は一人分だけなんだと。犯人は化け物か」と、筒井は顔を歪めた。

「そんな物が居る分けないじゃないですか。でも変ですね、あれだけのことをして反り血を浴びた人間を見た者がないと言うのも」。
「そこなんだ、まず犯人は被害者の左の首の頸動脈を噛み切ってる、と言うより見ろ、ハンバーガーでも食う様に首がえぐれているだろ。
噴水の様に噴き出したであろう筈の血痕が内堀の石垣に僅かに残っているだけだ。
でも肉片が見付からない」。

「先輩、じゃあ肉も食べて血も内蔵も食べたって言うんですか。いくら大食感でも人一人の血液を飲み干して内蔵は食べられないでしょう。それも十数分で」。
そう言いながら猿渡は何て話をしているのかと我が頭を疑った。

「それで医師に電話して訊いたんだ。人間の血液はどれ位あるのかってな、
そしたら、体重1kに対して80gの血液があるそうだ。
被害者の身長は165センチで痩型だったから両親は50k位だったと話していた。
だとすると、彼女には約4lの血液があり。その血液が殆ど消えた事になる。
しかも、内蔵も肋膜から下がそっくり消えているんだ。小宮も卵巣も無かったそうだ。長野、群馬、山梨の被害者の三人も同じだった」。

「先輩、こんな事件を隠しておいていいんですか。狙われているのは若い女性ばかりなんですよ。それも神出鬼没で何処に現れて誰を殺すか分からないんですよ」。
「うん、その事で今夜本庁で四県警の捜査員が集まって合同捜査会議が開かれる事が決まった。話題は発表するかどうかって事だろう」。

「そうですか、でも既に三人も犠牲になっていたのにどうしてって。四人目の被害者が出たから発表したと言う事になると国民の非難は相当ですよ」。

筒井は返す言葉も無く黙って頷いていた。猿渡も今までの事件は他県の事件でもあり、筒井警部補には責任はない事は分かっていた。しかし、そう言うしかなかった。そして筒井警部補は警視庁に向かった。

猿渡は専門書の棚に向かっていた、バンパイヤとか狼男の文献など、信じられない様な書物をもって来ると読みあさっていた。
そして五時の閉館になると図書館を出た。
そして彼女の間宮麻代と会うべく、両替町にある待ち合わせのレストランに向かった。行くと、いつもの席に彼女が来ていた。
「大変な事になったな、大丈夫か?・・・」

「うん、まさかあの子が殺されるなんてね。とっても素直で奇麗な子だったのに」
「そう、でもなんであんな時間にあんな所に居たんだ。知っているの?・・・」
「私は知らなかったんだけど行員が言っていわよ、夕べは同期の女子行員の三人と三時過ぎまで遊んでいたんで、それで別れて彼女は歩いて帰ったんですって」。

「そう、それでベンチで休んでいたって訳か。麻代、君も気を付けてくれろよな。
遅くなるときはタクシーで帰れってくれ」。
「私が遅くなる時は啓太さんと一緒じゃない、それ以外は伝書鳩よ」。そう言ってそっと頷く麻代だった。

「そうそう、優子さんの事件を調べに筒井さんが来たわよ」。
「うん、俺も事件の事を訊きに先輩の所へ行ったよ。そしたら森川さんの両親が来てて会った。一人っ子なんだってな?・・・」。

「うん、私も知らなかったけど」。すると麻代の顔色がスッと蒼白した。「啓太さん、まさかこの事件を調べるなんて言うんじゃないでしょうね。殺人事件よ」麻代は周りの目を気にしながら小声で言うと睨みつけた。

猿渡はカバンから書類を出し、取材した記事を見せた。なあに此れ、と麻代は広げた。記事を読んでいた。そして溜め息を吐くと顔を上げた。
「この記事なら覚えている」。麻代の目が驚いた様にクリクリッと見開いた。
NO-4-6

小説・一刻塚-(NO3)

2009-06-17 04:00:53 | 小説・一刻塚
小説・一刻塚-(NO3)

内堀には警察のボートが二隻三隻と堀の底を浚っていた。
「先輩、現場を見せてくれませんか」猿渡は額の汗を拭いながら顔を上げた。
「うん、いいだろう。でもさっきの約束は守ってくれよ」。
「いつでも守っているじゃないですか。先輩の許可が出るまでは書きませんよ」。
そして黄色いテープをくぐって現場に入った。
十数人の鑑識班が地面を這う様に犯人の遺留品を探していた。「どうだ、何か出たか」筒井は全員を見渡す様に訊いた。

「いえ、今の所何も残されていません。殺害現場はベンチですね、座って休んでいたか飲酒して眠っていた所を襲われたと思われます」。
「何か野犬とか動物がいた形跡はないのか?・・・」。その問いに首を振った。
「いえ、猫の毛一本採取されませんでした。ただ此を見て下さい」と、鑑識班の捜査員はベンチに歩いた。
そして、ベンチには遺体を形取った枠があり。その中の血の手形を指さした。

「この手形は遺体の下にありました、非害者の手ではありませんでした。犯人が残した物と思われます。大きさからして女性か子供の様です」。
「通報の前に誰かが遺体を発見していたと言う事か?・・・」
「いえ、そうは思われません。遺体は動かされていまらから犯人が業と残したとしか考えられません。まるで墨で手形を写すようにハッキリ残っていますから」。
「そんな馬鹿な。それで指紋は?・・・」
「いいえ、血の手形からは採取されませんでした。背もたれのプラスチックの部分からは被害者や無数の指紋は取れました。いま犯罪者記録と照合しています」。
そして現場を離れた、すると筒井が足を止めて振り向いた。
「猿渡、S銀行と言うとお前の彼女の勤め先だったな?・・・」
「ええ、麻代の銀行ですけど。それが何か?・・・」。
「被害者はそこの行員だ。聞いた事ないか森川優子と言う名前を」。
「エ~ッ!・・・そうですか。でも麻代は秘書課ですから行員は知りません。そうですか、S銀行の女子行員ですか」。

すると、猿渡の携帯が鳴った。着メロから彼女の麻代からだった。
「じゃあ私は先に行くから、検死が済んだら電話する」と、筒井は署に戻った。
電話の麻代は事件の被害者を知り、ショックを隠せず涙声で知らせて来たのだった。猿渡は仕事を終わったら会う事を約束して携帯を切ると中央署に戻り、乗って来た自転車にまたがると大岩町にある市立図書館へ向かった。
そして十分、図書館に着くとパソコンの前に座った。事件の事を調べる為に長野、群馬、山梨で起こった類似した事件の新聞記事を検索した。
第一の被害者は宮本志保23才、独身。近くにあるS小学校の事務職員だった。
長野市の善光寺裏にある第二次世界大戦時に戦闘機の零戦で戦死した慰霊碑の前で無残にもバラバラの惨殺死体で発見されていた。

第二の犠牲者は群馬の高崎市在住の浜崎知江19才コンピューターの専門学校の生徒だった。高崎観音の付近で長野の犠牲者同様に殺害されていた。
第三の犠牲者は山梨の身延町にある寺、日蓮上人開基の日蓮宗根本道場で総本山。
久遠寺へ向かう山道の中腹にある休憩所の東屋で発見された。
女性は身延山参道の土産屋の娘で望月春奈20歳、稼業を手伝う娘だった。
そして第四の犠牲者は静岡市内安東町在住の森川優子19才、この春に高校を卒業してS銀行に就職したばかりの銀行員だった。
しかも被害者が自分の彼女間宮麻代と同じ銀行の行員に驚きを隠せなかった。
猿渡は新聞記事をコピーしながら犯行現場に行ってみようと思っていた。

「おい猿渡、やっぱり此々か」その声は筒井警部補だった。
「どうしんです?・・・何か分かったんですか?」。
「うん、さっき話した三件の事件だけどな。詳しい捜査資料を取り寄せたんだ」そういいながら筒井は腰を降ろし、手にした封筒から資料を出して広げた。
猿渡は驚いて筒井を見た。こんな捜査資料を見せてもいいのかと思いながら覗いた。「この三人は全くの他人で面識は一度もない、ただ三人は三人とも一日に殺害されてるんだ。五月六月七月、そして今日は八月一日だ。
その一日に関する事も調べたが全く関連性がない。でも九月一日にも殺しが起こる可能性は大だ。愛知か神奈川か岐阜か」と筒井は地図を広げた。

「先輩、でも群馬の次はどうして埼玉でなくて山梨だったんですかね。長野、群馬と来れば埼玉、山梨か、東京と行くんじゃないですか。南下すればですが」。
NO-3-4