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小説・鉄槌のスナイパー3章・最終章(完)

2009-04-23 13:26:34 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・最終章(完)

そして八時を回ると、「コンコン」とノックをしてドアが明いた。すると京都の美保の両親が駆け付けてくれたのだった。
「義父さん、義母さん。お疲れでしょう、生まれました」。
「ええ、いま保育器にいる孫を見て来ました。美保頑張ったわね」。
二人の親は満面の笑顔を浮かべて目頭を押さえて喜んでいた。
「あっ、お母さん、お父さん来てくれたの。見てくれた?・・・」
「へえ、見て来たへ。頑張ったわね。御目出とう美保。元気だったへ、此れで美保もお母はんへ」。

「美保、御目出とう。父さんも嬉しいぞ、良く頑張ったな」。
「有り難うお父さん、京平さんがづっと側にいてくれたから」。
こうして美保の父親は盆前で忙しい事もあり、翌日美保に顔を見せると孫の顔を見て京都に帰った。
そして三日、一週間と過ぎて美保の乳の出も次第に良くなっていた。産後の肥立ちも順調に回復していた。
そしてまた、半月ほど早く生まれた双子の子供にも心配された黄疸や栄養失調など懸念された病気もなく、母子共に健康そのもの、京平夫婦や病院関係者には喜びだった。

そして十日目には母子共に健康診断が行われ、美保は退院した。

翌日、八月二十一日には美保の退院と真田と則子のW祝いで結婚式が行われた。
そのころには真田の母親と則子の母親、そして弟も来て二人の結婚を祝った。
そして式が済むと真田と則子の二人は北海道へ新婚旅行に発った。
そんな慌ただしい中、三日後の二十四日には子供の退院の許可が降りたのだ。京平と美保、そして美保の母親を含め、両親は病院に向かった。
そして両親は取り合うように子供を抱き、看護師や医師に送られて退院した。
そして双子の名前、姉は夏美、弟は穂高、両家の親が一人づつ命名した。
京平も美保も気にいっていた。そして家に帰るとペンションの従業員も全員揃って出迎えた。

京平夫婦は二人の子供を育て守り、優しい両親の温もりの中で仕事に育児と頑張って行くだろう。
そして応援してくれる従業員に囲まれた京平と美保、そして夏美と穂高の二人の子供はすくすくと育って行くに違いなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

長い間、ごらん頂いて有り難う御座いました。

次回は未定ですが、宜しくお願いします。



小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(99)

2009-04-11 23:48:01 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(99)

そう言うと美保を抱き上げるとワンボックスの後ろに乗り込んだ。
京平は積んであった毛布を美保の身体に掛けると、父は車を出した。そして五分ほど離れた産婦人科に連れて行った。
そんな車の後を母の良江は心配そうな顔をして見送っていた。
「美保、心配ないからな。すぐ病院だから」。
「うん、ごめんなさい。先生も言っていたから、今度痛みが出た時は生まれるかも知れないからって。でも早産で大丈夫かしら」。
美保の額には汗びっしょり流して痛みを堪えていた。
「心配ないって、いまは半月くらいは早産のうちにはいらないよ。大丈夫だ。心配ないからね」。
病院に着くと玄関にはストレッチャーを出して医師と看護婦は待っていた。
美保は京平に抱き抱えられストレッチャーに寝かされると診察室に入って行った。京平と父は待合い室で入院用の荷物を手に心配そうに待っていた。
すると看護婦が出て来て、陣痛が始まった事を伝えた。
美保は分娩室に移された。

京平は母の待つペンションに電話して陣痛が始まった事を知らせた。
そして父は帰ると「京平さん」と看護婦が呼んだ。
着いて行くと準備室に連れて行かれた。消毒液で手を洗うとエプロンを着せられた。そしてマスクをすると分娩室に入れられた。
京平を見ると手を延ばした。京平は手を握り「頑張れよ」と言葉を幾度となく掛けた。「うん、うん」と痛みを堪えながら言う美保の額からは汗が流れ落ちていた。
手を握りながら、左手でタオルを持つと流れ出る汗を拭き取っていた。
すると「はい、息んで。吐いて、はいもう一度」その度に美保は頑張っていた。
すると、「はい、女の子ですよ」と先生の声が聞こえると、
「オギャ~オギャ~・・・」 元気に泣く声が分娩室に響いた。

京平は初めて見る出産シ~ンだった。その感激に浸る前に、
「はい、男の子です。二人とも元気ですよ。奥さん、頑張りましたね。紺野さんお目でとうございます」。
美保は頷いてただ涙を流していた。すると、間もなく奇麗にされた双子の赤ん坊が二人の看護婦の手に抱かれて美保の両脇に寝かされた。
まるでオモチャのようだった。
「美保、御苦労様。有り難う、頑張ったな」。
「うん、着いていてくれて有り難う。私嬉しい」。病院に運ばれて僅か三十分で双子の子供を元気に生んだ。
そして半月早い出産にもたいした未熟児と言う事もなかった。しかし、病院では用心の為に保育器に入れる事にした。
こうして美保は八月十日、午前十時三十分に女の子。そして一分後の三十一分に元気な男の子の双子の兄弟を出産したのだった。
そして産後の処置が済んだ美保は病室に運ばれた。母良江が来て待っていた。

「御苦労様でした。頑張ったわね美保さん。御目出とう。元気な子だったわよ。京都のお母さんに知らせたら二人で今夜にでも飛んで来るって」。
「はい、有り難うございます。忙しくなるのに済みません」。
「ううん、何を言っているの。人はもう頼んだから心配しなくても良いのよ。早く抱きたいわね」。
そして表には真田と彼女の山下則子が来ていた。母良江が二人を呼んで病室に入れた。すると二人は自分達が来た事で美保を驚かせ、陣痛が早まったと、そんな心配をして入って来た。
「奥さん、僕たちが来たから」
「そうじゃないの、今朝からもう兆しはあったの、ねえ貴方」。
「うん、貴明が来なくても陣痛は始まったんだ。お前たちのせいじゃないよ」
真田はホットしたような表情になって笑顔を見せた。そして大きな花束と出産祝いをそっと後ろから出して差し出した。

「有り難う真田さん則子さん。ごめんなさいね、来る早々こんな事になっちゃって」。
「いいえ、御目でとうございます。私達、休みは十分取って来ましたから。赤ちゃん見させて頂きました。私も早く欲しくなっちゃいました」。
そう言う則子の隣では照れ臭そうに貴明は笑っていた。
「じゃあ僕たち宿へ帰ります。お大事に」と二人は帰って行った。
その晩、食事を済ませた美保は出産の大役を済ませた疲れで休んでいた。
その傍らには京平が見守っていた。
NO-99-40



小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(98)

2009-04-05 01:03:29 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(98)

そして平穏な日々がつづき、五月のゴールデンウィーク、そして六月の梅雨を迎え、大きな被害も無く、七月の後半には梅雨明けを迎えた。
すると、打って変わったような真っ青な青空が広がって本館的な夏山シーズンを迎える季節に入った。
その頃になると美保のお腹も重そうに迫り出していた。そして風呂に入って手を充てると、子供が元気に暴れて腹を蹴る様子が手に伝わって、京平の顔も崩れていた。
そしてペンションの予約も例年になく予約が殺到し、いつの間にか予約に対応仕切り無い程の盛況ぶりだった。
そして京平は仕事に負われ、あれよあれよと八月に入り、美保は動くのもけだるい様子だった。

そして盆も近くなった八月十日、京平と父良平の二人が庭の手入れをしていると、ス~ッと一台の車がペンションの前で止まった。
見ると京都ナンバーのベンツだった。そして駐車場に入って止まった。
京平と父良平は手にしたカマを置くと軍手を外して迎えに出た。
「紺野さん、お久し振りです。お世話になります」。
それは真田貴明だった、京平は驚きながら美保を大声で呼んだ。
「紺野さん紹介します。山下則子さん。今度結婚するんです」。
スポーティーな恰好をしたスタイルの良い女性は隣で恥ずかしそうにもじもじしながらそっと顔を上げた。
「始めまして、山下則子です。宜しくお願いします。紺野さんの事は彼から聞きました。兄が亡くなって紺野さんが面倒を見るようにって言われた事も。本当に有り難うございました。お礼が遅くなって済みませんでした」。

京平は言葉が出なかった。そして頷きながら真田の顔を見ていた。すると腹を抱えて美保が出て来た。すると驚いたように女性の顔を見ているのだった。
「え~っ友世?・・そんな事ないわよね。真田さんいらっしゃい真田さん」?
「奥さんお久し振りです、似ているでしょう友世に。山下則子さんです。自分のフィアンセです」。
「えっ、山下さんって。あの山下辰彦さんの妹さんなの。そう、お目でとうございます。さあ、そんな所に立ってないでどうぞ」。すると京平は隣で訳も分からず立場に困っている父良平を紹介すると真田を紹介した。
真田貴明は照れ臭そうに中へ入ると突然立ち止まると、「紺野さん、自分たちもこちらで式を挙げたいです。お願いします」
京平達のようにペンションで結婚式を挙げたいと言うのだった。

「おいおい、急に言われても直ぐには準備は出来ないぞ」。
「はい、分かっています。紺野さんの都合の良い時で良いんです。則子さんのお母さんにも許可を頂いて来ました。社長さん奥さん、何とかお願いします」。
真田と彼女はその場に土下座しるのだった。
「そんな事は止して下さい。分かりました。京平、美保さん、段取りをしようか。でも両家の御家族を呼ばなくていいんですか?・・・」
「はい、披露宴は京都の方で九月に開きたいと思っていますので。その時はお越し頂きたいんですが、お願いします」。
すると美保は「貴明さんちょっと」と真田を呼んで、友世の事を聞いた。
「はい、もう友世の事は則子に総て話しました。自分もただ似ているから結婚するんじゃありません」。
「うん、だったら良いけど。でも驚いたな、瓜二つなんだもの。友世も祝ってくれるわよ」。

「はい、奥さんにそう言って頂けるのが一番嬉しいです。もしかしたら叱られるんじゃないかって、少し心配でした」。
すると話が聞こえたのか山下則子が二人の元へ歩いて来た。そして美保に真田が愛していた佐々木友世の事は総て聞いて、結婚に踏み切った事を伝えたのだった。
美保はしっかりとした考えで真田と結婚する山下則子を信じた。
すると、美保の顔に脂汗が流れ始めた。京平はその変化に気付いて隣に行くと、見る間に真っ青になると腹を抱えて座り込んだ。
「父さん、ワゴンを回して。母さん、先生の所へ電話して、陣痛が始まった。連れて行くからって早く!」。
「始まったか!」と父は表に駆け出して行った。母はその場で受話器を取ると病院に電話していた。それは訓練されているようでもあった。
そんな様子を見ていた真田貴明と山下則子はただ呆然と見ているしかなかった。そんな二人に京平は笑みを浮かべて見た。
「貴明、心配ないよ陣痛だから。先生からも双子は早産になり易いことは聞いてたから。悪いな、行って来る」。NO-98-38

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(97)

2009-03-28 18:58:41 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(97)

京平は受け取るとキーホルダーを外し一つは美保に、もう一つは三河に渡した。
「紺野さん、私はいいです。それにその鍵は三つ一組になっていますからナンバーが書かれているでしょ。鍵穴に合わせて一から順に回さないと開きませんからね。それに私には用はありません。万が一お借りしたと時はお願いにあがります」。
「分かりました。じゃあそう言う事で」。」。
京平は鍵をポケットに押し込んで板の蓋をするとジュータンを敷いてリビングに運んだ道具を地下室に戻した。
美保はその後を掃除機を持つと散らかった埃を吸い取っていた。
そして片付けが済むとホットしたようにソファーに腰を降ろした。すると間もなく地下室から上がって来た京平を見詰めていた。
「奥さん、万が一あの箱を無理に開けようとすると中身は粉砕されて証拠は残りません。なんであんな物を造ったのか理由は分かりませんがね。友人も訳は話してくれませんでした」。

「三河さん、危ない品物じゃないんでしょうね。国家機密とか」。
「いいえ、その心配は要りません。友人は原子物理学者ですが、周りからは変人扱いされています。誰が何の研究をして何を造っていたのかは私しか知りません。ともかく正しい扱いをしてさえいれば中身は安全だそうです」。
「あの箱の厚みに比べると軽いですがセラミックか超合金ですかね、普通あの厚みだったら一人では持てませんから」。
「私には使い方だけで何で出来ているかは知りません。でも安全だと言う事だけは確かです」。
京平と美保はそれ以上聞かず、三河の言葉を信じる事にした。
そして地下室から持って来たアタッシュケースを開いた。中にはまだ三千万の現金が残っていた。京平はケースの代金だと三河に差し出した。
「いいえ、そりは要りません。あの箱は一千万、京都で頂いたお金から出させて貰いましたから。それは紺野さんの子供さんに」。
そう言うと出したアタッシュケースの蓋を両手で閉めると京平の胸にあてた。京平は頷くと美保に渡した。

「何かス~と張り詰めていた気持ちが吸い取られて行くようですね」。
「ええ、大浜から始まって、あの時はどう言う気持ちでした?・・・」。
京平は深呼吸すると一息着いて口にした。
「あの時はもう許せないと言う気持ちで何の躊躇いもありませんでしたよ。恐怖なんて何もなかったですね。
あの敷地の交差点で二人の車をやっと見付けて美保が二人を怒らせたんです」。
「そう、あの時に何を言ったか忘れましたけど。旨く誘いに乗ってくれたわよね。後はあの浜に誘い込んで車を止めたんです。
そしたら私達の車を追い越して前に止まったの。京平さん流石だった、二発で仕留めたんですもの。殺されて当然だと思いました」。
「そうでしょうね、あの後に私とアパートで合ったとき、少しも息は上がっていませんでしたからね。
でもバッヂを見付けた時は驚きましたよ。でも、私も警察では手に負えない犯罪者をこの手で殺してしまいたい、仕置き人みたいな事がしたかった。
ひょっとしてあの二人は、そう思ってバッヂは海に投げ捨てたんです。私の思った通りの心の優しい人達でした。
紺野さん奥さん、私は此れで満足です。あれ以来暴走族は全国的になくなりました。それに夜遊びする青少年もグ~ンと減って殆どいません。警察も非行と少年犯罪には厳しく取り締まる事になりましたからね。

また変な奴等が出て来たときは、私がチームを編成してやります。その時にはあれをお借りしに来ます」。
「ええ、僕も力になりますよ。なあ美保」。
「うん、でも無い事を祈りたいですね。でも、いざとなれば私の腕も必要になるかも。ねえ、貴方。そろそろ帰りましょう」。
こうして別荘を閉めるとペンションに戻った。
すると、もう夕食の支度が終わっており、美保は済まなそうに義母の良江に詫びていた。
「いいのよ、お客様のお合い手をしていたんですから」、とそんな美保に義母は優しく応えていた。そしてワインを手に乾杯すると夕食をとりながら三河昇の事件簿で話は盛り上がっていた。
そして翌日も三河はのんびり温泉に浸かって身体を休め、十九日の昼過ぎには土産を携えて東京へ帰って行った。
NO-97-36

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(96)

2009-03-21 00:54:25 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(96)

「三河さん、総てと言うと?・・・」。
「はい、静岡の大浜で二人を射殺したのも、同じ静岡市内の中村町で堂島と言う弁護士崩れを射殺したのも、そして軽井沢で七人を射殺したのも総て自分一人がやった事だと自供しましてね。覚悟の自殺でした。
使用された凶器も発見されていますし、供述内容も符号しますので、西崎の単独犯と言う事で事件は解決を見ました。
それで、犯人逮捕の指揮を取ったとして認められました。お二人のお陰です。有り難うございました」。
そう言うと三河は直立すると腰を折った。
「そうですか、じゃあ部屋でゆっくり聞かせて下さい」。
京平は三河を連れて自分の部屋に場所を移した。そして遅れて美保はお茶を入れて持って来た。

「三河さん、どう言う事なんです。宮崎が全部認めたって言うのは?・・・」。
「ええ、西崎にも殺し屋としてのプライドがあったんでしょうな。私が細かく現状の説明すると、奴はそれを丸覚えしましてね。それで別の刑事の取り調べであの殺しは自分がやったと供述を始めたんです。
しかし頭の良い男でした。殺された男の名前を短時間で総て覚えていましたからね。それで殺した理由は、と聞くと。麻薬を扱う暴力団は生かしてはおけない。悪徳弁護士も悪徳医師も同じだといいましてね。ただピース同盟・鉄槌の族は知らないと言い切りました」。
「そうですか、西崎は一人で背負って死んでいったんですか。でもその事はまだニュースでは流していませんよね」。
「ええ、しかし新聞の片すみに載せました」。そう言うと背広の内ポケットから新聞を取り出して開いて見せた。
そこには本当に良く見ないと分からない程数行の死亡記事が載っていた。

「三河さん、もうあれは止しましょう。美保とも話したんですが、あれは封印して埋めてしまいます」。
「ええ、実は私もその事を御相談に来たんです。私もそう出歩く事が出来ない立場になりました。それにあの事件は西崎が持って逝ってくれました。もう何も心配する事もありません。
お二人には双子のお子さんも生まれます、封印しましょう。それで車に良い物を持って来ました。特種な装置です。
その中へ入れて蓋をして置けば弾薬も機器も劣化しないんです。勿論箱の中は真空にさせるんですがね。科捜研の友人が私的に造った物なんです。
資金がなくなって買ってくれないかと持って来たんです。薬品や火薬、そしてサビや劣化は半永久的にないそうです」。
「そうですか、頂いて封印します。美保、よかったな」。
「うん、此れで何も可も終わったのね。三河さん、色々有り難うございました。今後とも宜しくお願いします」。

「いや、私こそ。色々と良い勉強をさせて貰いました」。
そして翌日、三河と京平夫婦の三人は別荘へ向かった。そして三河が持って来たと言う特種なケースをトランクから降ろした。
それは以外と重くて京平が抱えてやっと運べる程の重さだった。
地下室を片付けて真ん中に開けた収納庫から銃の入ったブリーフケースを出した。そして装備品を特種なケースに入れた。
そして残っていた数千発の弾薬も入れた。
「紺野さん、弾薬はこんなにあったんですか」?
「ええ、黙っていて済みません。あまり多くある事を言うとまずいと思いまして。別に三河さんに隠していた訳ではありませんから」。
「ええ、分かっていますよ。それで何発あるんです?・・・」
「ええ、最後の仕事が終わってから数えたんですが。鉄鋼弾が二千発と炸裂弾が二千発、鉛の弾が一千発です。合計端数を除いて五千発です。ちょっとした中隊の弾薬です。でも良く出来た銃です。その弾の割合は銃用とライフル用が半々です。あとは遊びに来た時に遊びに使いましょう」。

そしてケースに入れた。それは京平の銃ケースが三つそっくり入ってしまう大きさだった。そして電気コードを接続してスイッチを入れた。
すると、モーターが回る音がして小さなダクトに手で塞ぐと空気が出て来るのが分かった。そして十分もするとカチャッカチャッカチャッとロッインする音が三回したそして青いランプが着いた。するとモーターが自動的に止まってスイッチが切れた。
「紺野さん、これで湖に静めても決して湿気も水は入りません。此れが鍵です。お渡しします」。三河はポケットに手を入れると「チャリッ」と音をさせてキーを出した。そして手を広げると頑丈そうな鍵が三つあった。
NO-96-34


小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(95)

2009-03-14 01:17:42 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(95)

「そうでしたか、でも此れからはご主人と赤ちゃんと佐々木さんの分まで幸せになって下さい。きっと佐々木さんも祝ってくれていますよ」。
美保は頷くと目頭を濡らしていた。そして午後三時過ぎには豊科インターを降りて、四時頃には自宅へ着いた。
もうその頃には雨も上がって青空が広がり、太陽が顔を出していた。
すると両親が飛び出して来た、そして父は立ち止まって驚いていた。
「お帰り、おい望月か?・・・なんだ京平、知っていたのか」。
「そうじゃないよ、偶然乗せて貰ったら父さんの同級生だって言うからさ、それに聞いて、美保の事を知っているんだ」。

「・・・ああ、そうか。望月は京都でもタクシー転がしていたからな。そうか、内の嫁さん知っていたのか」。
「うん、京都の会社の隣が立花電子でさ。良く使って貰っていたから私も話を聞いて驚いていた所だよ。それに京平さんと結婚したなんてさ。車の中でも世間は狭いって話ししていたんだ」。
「美保さんお帰りなさい。どうでした御両親は。お元気だったの」。
「はい、義母さんただ今帰りました。四日も留守して済みません」。
「ううん、もっとゆっくりして来たら良かったのに。望月さん、息子夫婦を乗せて来て頂いて済みません。さあどうぞ」。
そして美保は部屋に戻ると料金を封筒に入れて持って来た。そして昔のお礼を込めて十万円を包んで渡した。
「お嬢さん、いや奥さん、此れでは頂き過ぎです。半分で結構です」。
「ううん、少ないですけど昔お世話になったお礼も。ですから収めて下さい。ねえ貴方」。

「うん、美保の気持ちですから収めてやって下さい」。
「そうですか、では遠慮なく頂きます。しかし驚きましたよ、まさか紺野の息子さん夫婦を乗せるなんて、それも奥さんが立花社長のお嬢さんだなんてね。でも良く社長が許してくれましたね」。
「うん。それには色々あったの。去年の暮れに義父さんが中に入ってくれて。今は凄く良い雰囲気になったんです」。
「そうでしたか、でも此れで紺野家も万々歳だね、後継者が出来た、それに孫までとは欲張りじゅないか紺野、奥さん」。
「まあな、それより望月の所はどうなんだ?・・・」
「まあ、息子や娘は勝手な事しているよ。今は家内と二人でのんびりやっているさ。今日は京平さん達に稼がせて頂いたから、早めに締めて家内に教えてやるか」。そして望月は夕食を一緒に済ませると東京へ帰って行った。
美保は宅配便で先に送った土産を整理すると隣近所や親戚に届けに出掛けた。
三月も終わり、山々の雪も山頂や日陰を残して消えつつあり、山裾から深い緑に覆われていた、そして暖かい日々つづいて松本にも桜の季節が訪れた。
そして松本城や城山の桜もほころび、高遠の桜も満開の季節を迎えていた。
そんな桜を見物に大勢の花見客や観光客で賑わっていた。
そして各小中高校にも新入生が真新しい制服やランドセルを背負った子供達が元気な姿で当下校する季節になった。
そして四月も半ばも過ぎた十七日。例によって三河昇が不意に遊びに来た。
京平は美保を連れて午前中の定期検診に行って帰ると見覚えのある品川ナンバーの車が駐車場に止まっているのだった。

「三河さん、また黙って来て驚かせるつもりだったのね」。
美保はすぐに気付いていた。そして裏口からそっと事務所に入ると案の定、三河が両親と話していた。
美保に気付いた義父に、「シ~ッ」と指を立ててそっと近付いた。
「ワッ・・・、アッハハハハ。いらっしゃい三河さん。驚いたでしょう」。
三河は椅子を転がして驚いた。
「アッハハハ・・・全く奥さんは。脅かさないで下さいよ、もう年なんですから。お邪魔しています、どうです、順調ですか」。
「はい、え~っなあに、髭なんか延ばしちゃって。貫禄あるねその方が」。
「エッヘン、なんてね。今度少し出世しましてね、本庁刑事局長補佐に抜擢されまして、それでお二人にご報告に来たんです」。
「凄いじゃん、それはお目出とうございます。刑事局長って言ったら刑事の一番偉い人なんでしょう。まさか三河さんってキャリア」。
「まあ世間ではそう言う言い方もします。でも私はその補佐です。でも凄い出世です。此れも先日お二人が通報してくれた犯人の目撃情報のお陰です。
ほらっ、殺し屋の写真をお見せして翌日の通報です。今もお父さんにその事を話していたんです。結局いままでの殺しは総て自分がやった事たと自供しましてね。三日前に拘置所で自殺しました」。
NO-95-32

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(94)

2009-03-06 23:08:23 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(94)

「うん、そうか。じゃああの六人はお前の親父の分まで被害者達に返していたのか。だったら供養にもなるから深入りしない程度にな」。
「はい、そうします。また詳しい事が分かったらお知らせします。くつろいでいる所を済みませんでした」。
京平はその電話で思っていた以上に真田貴明と言う男の優しさを感じていた。電話を切ると美保と腕を組んで歩きながら話していた。美保は足元を確かめるように一歩また一歩と歩いていた。
「そうだったの、そんな家庭だったの山下って人。それで真田さん親子の面倒を見るって言うの」。
「うん、何所まで見られるのか分からないけどね。真田の奴、自分の子供の頃の境遇と重なっているんだろう。悪い事じゃないから見守っていてやろう」。
「うん、私達は幸せね」。美保はギュッと京平の手を握った。
こうして二人はその日もゆっくり身体を休め、京都の春を満喫していた。
そして翌日、二人は両親が支度してくれた沢山の土産を下げて京都十一時十七分発、のぞみ15号に乗り込んだ。
父明雄は会社を半日休み、母もまた店を抜けて見送りに来ていた。
車窓には両親が張り付くように立ち、駅員に注意されていた。そして新幹線が走り出すまで手を降っていた。そんな両親の姿が見えなくなっても、いつまでもホームを見詰めている美保だった。

「なんか変ね、また直ぐに会えるのにお父さんったら」。そんな事をポロッと口にした美保の目にも涙が滲んでいた。
そして母から渡された手作りの特製弁当を開けると京平に渡し、二人で美味しそうにつついていた。
そして車内を見回して楽しそうなカップルがいると「夫婦かな、それとも恋人同士かな」と美保はクイズでもするかのように京平に聞いては遊んでいた
そんなこんなで午後一過ぎには東京へ着いた。
東京は小雨交じりの寒い風が二人を迎えた。
二人はタクシー乗り場に行くと大勢の客が並んでいた。すると、前から二人目のおじさんが美保を見ていた。

「おいで」と言うように手をかざすのだった。美保はそっと歩み寄った。
「先にどうぞ、寒いから身体を冷やすと赤ちゃんに悪いからね」。
「でも、それでは皆さんに申し訳ありませんから」。と美保は遠慮して答えると。「そうして貰いなさい」後ろから声を掛けられた。二人は言葉に甘えて礼を言うと、先頭の女性までが譲ってくれた。
京平は美保に傘を持たせるとタクシー待ちしている皆んなに向かって頭を下げた。「有り難うございます。甘えさせて頂ます」。
美保もまた何度も何度も頭を下げて礼を言うと入って来たタクシーに乗り込んだ。そして皆んなに頭を下げ、タクシーは走り出した。
「有り難うございます。どちらまでお送りししょう」。と、帽子から白髪交じりの髪が目立つ運転手だった。
運転手名を見ると望月康雄と書かれていた。
「貸しきりでお願いします。松本の先の白馬までお願いします」。
「えっ、はい。有り難うございます。私も出身は白馬なんです、奇遇ですね、お客さん白馬はどちらでしょう」。
「ええ、ペンション・ボンフルールって知っていますか」?
「はい、紺野良平さんのペンションですね。よ~く知っていますよ。ご旅行ですか」。

「えっ、知っているんですか。実家です、僕はその良平の息子と妻です。小父さん父をご存じなんですか」。
「そうでしたか。お父さんとは高校の同級生です。そうですか、息子さん。じゃあ京平さんですね」。
「はい、なんか驚きです。今日はついている、さっきもタクシーの順番を妻が妊娠しているからって譲って頂けました。今度は父と同級生のタクシーに乗れるなんて嬉しい日です」。
「ええ、まだ東京も捨てたもんじゃないですね。お父さんとは昔は良く遊びましたよ。そうだ、去年会った時は息子は静岡へ転勤になったと聞いたんですが、結婚されて家に入ったんですね」。
「はい。そうそう、改めて紹介します。妻の美保です。今日は妻の実家へ行って来た帰りなんです」。
美保は偶然の出会いに戸惑いながら頭を下げた。そして途中のLPスタンドに寄って燃料を充填して高速に入った。
取り留めのない話に車内は盛り上がり、高井戸から中央自動車道に入った。

「奥さんは京都ですね、どうも発音が京都らしい」。
「はい、左京区の田中です。やっぱり分かります?・・・」
「はい。左京区ですか、祇園が近くて情緒ある町です。私も十年前まではMM観光にいましたのでね。良く知っていますよ」。
「えっ、じゃあ下京区の堀川通り、父の会社の近くですね」。
「そうですか、奥さんのお父さんの会社は何と言う会社です」。
「はい、以前は立花精密機器でしたけど今は立花電子です」。
「ああ、知っていますよ。そうでしたか、立花電子の社長のお嬢さんでしたか。じゃあお嬢さんも私のタクシーに乗られていますよ、
私は立花社長のお抱え運転手のような物でしたから。お宅は田中の公園の前の洋風のお屋敷でしょう、あの頃はまだ小学生だったですかね。良くお茶のお稽古にタクシーで祇園へ行きましたよね」。
「え~っ、じゃああの八つ橋のおじさん!・・・そうですか?・・・」
「はい、その八ツ橋のおじさんです。そう、奇麗になって、京平さんと結婚されたんですか。世間は狭いですね」。

それは偶然としても余りにも偶然過ぎて美保も京平も鳥肌が立つ思いだった。そして運転手の望月もまた懐かしそうにルームミラーから美保の顔を時折眺めていた。
そして美保は望月が名瀬八ツ橋のおじさんなのか、その由来を京平に説明していた。
「おじさん、でも今はもう八ツ橋は卒業したわよ」。
「そうですか、好きで良く買ってあげましたよね。その食べっぷりがまた良くてね。買ってあげても気持ちが良かった」。
「まあっ小父さんったら。その節は本当にお世話になりました」。
「いいえ。所でお嬢さん、佐々木さんの事お気の毒でしたね、あんなに仲良くお茶を習っていたのに。まるで姉妹のようでした。私も東京に来ていましてね、ニュースを聞いて驚きましたよ」。
「うん、今日は主人と友世のお墓参りに行って報告してきたんです。結婚した事と赤ちゃんが出来たことを」。NO-94-30



小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(93)

2009-03-01 03:52:48 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(93)

「美保、元気な孫を抱かせてくれよ」。
「うん、でもお父さんもお母さんも若いお爺さんとお婆さんになるんだよ。少し可哀相だけどいいの?・・・」
「そんなのいいさ、なあ母さん」。
「へえ、若いお婆はん大いに結構へ。それより女の子、それとも男の子。もう分かっていはるんやろ」すると美保は京平の目を見た。すると京平は頷いた。
「じゃあ教えてあげようかな。両方」。
「えっ、両方。両方ってどう言う事なんへ。・・美保、まさか」!
「うん、双子なの。男の子と女の子だって。先生は心配ないって」。
「美保、そりゃ凄い。どうして黙っていたんだ、早く教えてくれればいいのに。全く、一度に二人の孫が生まれるのか」。
「うん、病院でね、赤ちゃんの映像を見せて貰ったら、女の子とハッキリとオチンチンが写るんだよ」。
「まあ美保ったら。良かったわね。じゃあ白馬のご両親も喜んでくれはったでしょ」。
「うん、もう大騒ぎ。早くお父さん達に知らせなさいって、でも少し焦らしてやろうかなって思ったから、ヘヘ、ごめんなさい」。
そんなこんなで夜も過ぎるのも忘れて親子は子供の事や名前の事で話は盛り上がった。

そして十一時になると両親は休むように勧めた。二人は先に風呂に入った。美保の大きくなった腹を労るようにそっと身体を洗っていた。
そして黒ずんだ乳頭にそっと唇を寄せて愛撫した。美保は唇を噛むと声を圧し殺して京平の頭を胸に押し付けた。
そして妻として夫を愛し、二人は愛の交換をすると風呂を出た。
そして両親に「お休みなさい」と声を掛けると自分の部屋に戻り、鏡の前に座ると寝化粧をしてベットに入った。
美保は京平の胸に抱かれ、寝息を漏らしていた。
そんな寝顔を見ながら京平は出会った頃の事を思い返していた。
あの汽車に乗り遅れても先の汽車でも自分は美保に出遭う事はなかった。
なんと言う縁なんだろうか。今思うと何から何まで目に見えない運命的なレールが敷かれていたのかと、そんな気がしていた。そして幸せな今に感謝している京平だった。

そして翌朝、晴れた暖かい朝だった。朝食を済ませた父を仕事に送り出すと母美代子は二人に留守を任せるとデパートの店へと出掛けて行った。
二人は戸締まりをすると散歩に出た。美保の母校である京大のキャンパスに入って四年間、色々な人と出会い別れたキャンパスのベンチに掛けて陽光うららかな陽溜まりに美保は学屋を見詰めていた。
「あの頃こんな幸せが来るなんて思ってもなかったな。あの頃の私は父と折り合いが悪くて荒んでいたの。そんな私に友世はいつも優しくしてくれていた。友世にも幸せになって欲しかったな」。
京平は何を言って良いのか戸惑いながら、美保の肩を抱き締めていた。そして立ち上がると京平の手を握るとキャンパスを出た。
そしてぶらぶら知恩寺に歩いた。寺の門をくぐり境内にはいるとプ~ンと線香の匂いが風に運ばれて二人を包んでいた。

静まり返った中で読経が聞こえて時折、チ~ンと金の音が聞こえた。美保は両手を合わせ何を祈っていたのか。すると携帯が鳴った。
「お早ようございます。真田です、紺野さんさっき山下の事故死した事で警察が来ました。山下の遺体から新札が見付かって、調べたら僕が銀行から降ろした金だと分かったと言って。
でも知り合いで困っていたから車のローンのお金と二百万貸した事にして話しておきました。それで警察も納得して帰りました。だから葬儀に出ようと思いますが。良いでしょうか?・・・」
「そうか、それだけの金を貸し借りする仲だと言う事で葬儀には出た方がいいな。後の事はお前に任せる」。
「はい、じゃああの金は香典代わりと言う事にして家族には話して来ます。まさかそんな事で来るとは思いませんでした」。
「うん、でも憎めない奴だったからな。それから少し多めに香典を置いて来てやってくれないか」。
「はい、警察の話しだと、山下の家族は父親がいないそうなんです。年子の妹が水商売をして家族を支えているらしいんです。なんか気の毒になってしまって。父が悪いことをして残した金がまだ十分ありますから、それで何とか力になってやろうと思いますけど」。NO-93-27

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(92)

2009-02-24 02:21:53 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(92)

「ええ、いまデカ部屋からです。そうそう、昨日は話す時間がなくてお話し出来ませんでしたが、殺し屋の西崎ですがね、彼の部屋のパソコンから亀石峠の三人は殺し屋だった証拠が見付かりました。
それから、西崎はジェラルミンケースの事は知りませんでした。電話じゃなんですから、またお邪魔した時に話します」。
「そうですか。じゃあ無理しないように頑張って下さい」。京平の不安は何も可も消えた。スッキリした表情に代わっていた。電話を切ると殺し屋の事を美保に知らせた。
「亀石峠の殺し屋の事だけど・・・」と話し始めると強張った表情を見せた。
そして話が終わるころには美保の顔にも笑顔が戻り、優しい目に変わっていた。
京平以上に気にしていたようだった。

「じゃあこれで安心ね」美保は一息付いて口を開こうとすると、
「言わなくても分かる。もう仕事は止めよう。あれは別荘の地下室に封印しよう。こんな事いつまでも続けてはいられないからね」。
「うん、それを言おうかなって思っていたの。京平さん私の事良く分かっているね、嬉しい、私凄く幸せです。愛しています」。
「俺も、愛しているよ美保」。
二人は抱き合いキスした。するとチャイムがなって母美代子が帰宅した。
二人は慌てて離れると京平の唇の口紅を拭いていた。
すると、いつもは帰りの遅い父明雄のベンツがガレージに入った。二人は父を玄関まで迎えに出た。
「おやっ、ただいま。二人してどうした」。
「お帰りなさいお父さん。子供の頃はいつもこうだったじゃない」。
「そうだったね。有り難う、二人に土産があるぞ」。リビングに行くと父明雄はカバンから箱を二つ取り出した。
「開けてごらん」。二人はリボンを解いた。カルティエのペアオゥッチだった。
「お父さん、有り難う。覚えていてくれたんだね」。
「うん、結婚したら贈るって約束だったからね。大事な娘との約束を忘れるものか。京平君、改めて美保を頼んだよ」。

京平は頷いて握手した。そんな光景を母美代子はキッチンから見ていた。父と娘が真の親子に戻った。そう感じた母の目には光る物があった。
そしてその晩の夕食は母美代子自慢のジューシーなトンカツだった。その味噌だれの味は関西特有な赤味噌の甘味は美味だった。
そして食後は座敷に造られたお茶室に移り、美保がお茶を立てた。
京平は初めて知る美保の袱紗を操る優雅さ、落ち着いた身のこなしとお手並みに、作法など知らない京平にも素人かそうでないかは見分けが着く程だった。京平はただ驚いていた。
そしてお茶を出され困っていると「好きに飲んでいいのよ」。
と美保は優しく笑い掛けていた。
「そうよ京平さん、お茶は形はあるれど作法と味わうのは別物よ」。京平は頷くと右手で茶碗を持ち、両手で持つと一気に飲んだ。
「ズズッ」と吸って飲み干した。「美味しい、もう一杯」。
京平は思わずそう口に出ていた。

「アッ、ハハハハ・・・はい、でも少し待ってね。母と父の次ぎにね」。
「京平君、美保は子供の頃から母親に習っていてね、高校を卒業する頃には免許皆伝なんです。きっとペンションでも役に立ちますから、お父さんに話して考えてやって下さい」。
美保は京平を見ると「うんうん」と頷いて茶を立てていた。
こうして母と父に茶を立て、二杯目の茶を立ててくれた。そんな座敷には笑いが溢れ膝を崩して茶道の話で盛り上がっていた。
こうして美保の子供の頃の話しに話題が変わり、母はアルバムを出して来た。
生後から大学を卒業するまでの記念写真が美保の成長の記録だった。
それを見て京平は両親の愛情を一心に注ぎ込まれていた事が手に取るように分かった。
そんな大事な娘をあんな片田舎に連れて行った事で、父親の気持ちが少なからずも分かったような気がしていた。
「でも良かったね美保、こんなに優しいお婿さんに嫁ぐ事が出来て。父さん、白馬のお父さんが来て二人の事を話してくれへんかったら一生後悔する所やった。今は感謝してる。なあお母さん」。
「ほんまや、白馬のお父はん。こん人にこう言ったんへ。貴方は娘の幸せより自分が幸せになりたいんじゃないのかって。
本当に娘や息子の幸せを考えるんやったら、結婚相手を見付けて来はったら自由にさせて祝ってやらんと、もし、万が一戻って来はったら暖かく受け止めてやるのが親じゃないんかって。
こん人、それを言われはって反論出来へんかったんへ。それでこんひと目が冷めたんへ」。
義父は何も言わず黙って頷いていた。その目は本当に優しい目をして見詰めていた。

「済みません、父がそんな失礼な事を。僕が一度失敗していますから」
「京平君、そんな事は関係ないよ。私は今まで傲慢で良かれと思っていた事は娘もお母さんも苦しめていた事が言われて分かったんですからね。
実に愚かな事をしていたと、大いに反省しています。お母さんがデパートに店を出す時は、家を出ると行った。私はその時に初めて孤独と言う物を感じました。美保は家を出てしまった。この上、お母さんにまで見放されたら、そう思った時にづっと自分のして来た事を思い返していたんだよ。
そんな時に紺野さんが突然訪ねてくれてね。そう言われた時は大きなハンマーで頭を叩かれた思いだった。
白馬のお父さんがこう言ってくれた。お父さんが許してくれなくても、私達夫婦と息子がお嬢さんをきっと幸せにしてみせると」。美保はハンカチを握り締めながら父を見て涙を流していた。
「お父さん、ごめんなさい。そして有り難う、私いま凄く幸せです。本当に我がままでごめんなさい」。
「いや、私が悪かったんだ。泣くのは止めなさい、お腹の子に悪いからね」。
「うん、でも何年振りかしら。こうして親子で話をするなんて。こうして昔の親子に戻れたのも京平さんと知り会えたからよね。京平さん、有り難う。お父さんもお母さんもお礼を言ってよね」。
「そんな事ないさ、自分はそんなんじゃないよ」。
すると義父母は畳みに手を添えて頭を下げるのだった。そして美保もまた三指を付いて両親と共に頭を下げていた。
京平は座り直すと三人の頭より低く畳みに額を付けていた。
すると「ウフッ」と美保が含み笑いを浮かべると、揃って頭を上げて目を合わせた。そして四人は大笑いしていた。その笑い声は外ににまで響いていた。
NO-92-25

小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(91)

2009-02-08 22:07:34 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(91)

「真田、じゃあ元気でな。暇があったら遊びに来てくれ」。
「はい、是非行かせていただきます。色々と有り難うございました」。そして京平は家の少し手前で車を止めると降りた。
真田は京平に手を振ると帰って行った。京平はブリーフケースを手に玄関を開けると美保が立っていた。
「お帰りなさい、もう父と母は眠っているからそっとね」。
「ただいま」。
美保は京平の手からブリーフケースを受け取ると玄関に鍵を掛け、玄関の明かりを消して二階に上がった。
そして部屋に入るとそっと京平の首に腕を回して抱き着いた。
「見逃してやったのね、きっとそうすると思った。大丈夫なの?・・・」。
「うん、まだ十九才の子供だ。車のローンが払えなくて計画したと言っていたよ。だからローンの分と二百万渡して帰した」。

「そう、じゃあ三河さん反対したでしょ」。
「少しね、でも分かってくれたよ。それから真田が美保に有り難うって伝えてくれって。全部話したんだ」。
「そう、此れで真田さんも幸子の位牌にお参り出来るわね。さあ、今夜はもう遅いからお風呂入ろう」。
二人でそおっと風呂に入ると、ベッドに入った。
そして美保は腕の中に身体を預けるように眠った。
翌日、京平と美保は一日中家で留守番をしながらゆっくり身体を休めていた。そして夕方、母が帰宅する時間にはリビングに降り、テレビのスイッチを入れてを見ていた。すると思いもしないニュースが流れた。
それは交通事故のニュースだった。始めは聞き流していた。
「ねえ、この事故死したって山下辰彦って人、夕べの男の子じゃないの」?
京平はテレビに身を乗り出して見入っていた。

すると顔写真が出た。間違いなくあの山下辰彦だった。
彼は昼過ぎに嵯峨野にある嵐山高雄パークウェイの鳥居本に近い大きなカーブを曲がり切れず、ガードレールに激突し、その反動で対向車線に入り、大型トラックと衝突して即死状態だったと言うのだった。すると、京平の携帯が鳴った。美保が出ると真田だった。
「真田です。奥さん、旦那さんから聞きました。色々有り難うございました。ご主人はいますか」。
「うん、良かったね。待って」。そして京平に代わった。
「紺野さん、夕べは有り難うございました。それで、ニュース見ましたか。山下が嵯峨野で事故って死にました」。
「うん、俺もいま見て驚いていたんだ。バカな奴だ、せっかく助けてやったのに事故って死ぬなんてな」。

「ええ。今日午前中山下から電話があって、借金払ったと知らせて来たんです。それに仕事も見付かったからって。なんか気の毒な気がしてなりません」。
「そうだったのか、まあ、此れも彼の運命だったんだ。仕方ないな」。
「はい、呆気ないですね。それをお知らせしたくて電話しました。いつまで京都とにいられるんですか」。
「うん、もう一日ゆっくりして十七日に帰ろうと思う。色々大変だったな、お前も車の運転には気を付けろよ」。
「はい、有り難うございます。じゃあ失礼します」。
京平は何とも言えない空しさを感じながら電話を切った。そして真田から聞いた事を美保に伝えた。
「なんか気の毒ね、真田さんも他人事に思えなかったでしょうね。借金も払って仕事も見付かって、此れからって時に死んでしまうなんて、私会わなくて良かった」。

「うん、悪い男には思えなかったからね。こんな事言うと不謹慎だけど、此れで心配事が消えた事は確かだな」。
「そうね」。するとまた携帯が鳴った。「きっと三河さんよ」。
と言いながら美保は携帯に出た。
「いま噂していたんです、真田さんからも電話があったばりです」。
「そうですか、山下もつまらん死に方しました。なんか気の毒でね。それで電話したんです。奥さん達はいつ戻られます」。
「はい、京平さんは十七日に戻ると言っています。代わりますね」。
「もしもし、夕べはお疲れ様でした。山下も気の毒でしたね」。
「まったくです。しかし我々の存在は闇の中です」。
「まあそう言う事ですかね、それで三河さんはもう東京ですか?・・・」。
NO-91-22