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小説・鉄槌のスナイパー3章・最終章(完)

2009-04-23 13:26:34 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・最終章(完)

そして八時を回ると、「コンコン」とノックをしてドアが明いた。すると京都の美保の両親が駆け付けてくれたのだった。
「義父さん、義母さん。お疲れでしょう、生まれました」。
「ええ、いま保育器にいる孫を見て来ました。美保頑張ったわね」。
二人の親は満面の笑顔を浮かべて目頭を押さえて喜んでいた。
「あっ、お母さん、お父さん来てくれたの。見てくれた?・・・」
「へえ、見て来たへ。頑張ったわね。御目出とう美保。元気だったへ、此れで美保もお母はんへ」。

「美保、御目出とう。父さんも嬉しいぞ、良く頑張ったな」。
「有り難うお父さん、京平さんがづっと側にいてくれたから」。
こうして美保の父親は盆前で忙しい事もあり、翌日美保に顔を見せると孫の顔を見て京都に帰った。
そして三日、一週間と過ぎて美保の乳の出も次第に良くなっていた。産後の肥立ちも順調に回復していた。
そしてまた、半月ほど早く生まれた双子の子供にも心配された黄疸や栄養失調など懸念された病気もなく、母子共に健康そのもの、京平夫婦や病院関係者には喜びだった。

そして十日目には母子共に健康診断が行われ、美保は退院した。

翌日、八月二十一日には美保の退院と真田と則子のW祝いで結婚式が行われた。
そのころには真田の母親と則子の母親、そして弟も来て二人の結婚を祝った。
そして式が済むと真田と則子の二人は北海道へ新婚旅行に発った。
そんな慌ただしい中、三日後の二十四日には子供の退院の許可が降りたのだ。京平と美保、そして美保の母親を含め、両親は病院に向かった。
そして両親は取り合うように子供を抱き、看護師や医師に送られて退院した。
そして双子の名前、姉は夏美、弟は穂高、両家の親が一人づつ命名した。
京平も美保も気にいっていた。そして家に帰るとペンションの従業員も全員揃って出迎えた。

京平夫婦は二人の子供を育て守り、優しい両親の温もりの中で仕事に育児と頑張って行くだろう。
そして応援してくれる従業員に囲まれた京平と美保、そして夏美と穂高の二人の子供はすくすくと育って行くに違いなかった。
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長い間、ごらん頂いて有り難う御座いました。

次回は未定ですが、宜しくお願いします。



小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(99)

2009-04-11 23:48:01 | 小説・鉄槌のスナイパー(第三章)
小説・鉄槌のスナイパー3章・NOー(99)

そう言うと美保を抱き上げるとワンボックスの後ろに乗り込んだ。
京平は積んであった毛布を美保の身体に掛けると、父は車を出した。そして五分ほど離れた産婦人科に連れて行った。
そんな車の後を母の良江は心配そうな顔をして見送っていた。
「美保、心配ないからな。すぐ病院だから」。
「うん、ごめんなさい。先生も言っていたから、今度痛みが出た時は生まれるかも知れないからって。でも早産で大丈夫かしら」。
美保の額には汗びっしょり流して痛みを堪えていた。
「心配ないって、いまは半月くらいは早産のうちにはいらないよ。大丈夫だ。心配ないからね」。
病院に着くと玄関にはストレッチャーを出して医師と看護婦は待っていた。
美保は京平に抱き抱えられストレッチャーに寝かされると診察室に入って行った。京平と父は待合い室で入院用の荷物を手に心配そうに待っていた。
すると看護婦が出て来て、陣痛が始まった事を伝えた。
美保は分娩室に移された。

京平は母の待つペンションに電話して陣痛が始まった事を知らせた。
そして父は帰ると「京平さん」と看護婦が呼んだ。
着いて行くと準備室に連れて行かれた。消毒液で手を洗うとエプロンを着せられた。そしてマスクをすると分娩室に入れられた。
京平を見ると手を延ばした。京平は手を握り「頑張れよ」と言葉を幾度となく掛けた。「うん、うん」と痛みを堪えながら言う美保の額からは汗が流れ落ちていた。
手を握りながら、左手でタオルを持つと流れ出る汗を拭き取っていた。
すると「はい、息んで。吐いて、はいもう一度」その度に美保は頑張っていた。
すると、「はい、女の子ですよ」と先生の声が聞こえると、
「オギャ~オギャ~・・・」 元気に泣く声が分娩室に響いた。

京平は初めて見る出産シ~ンだった。その感激に浸る前に、
「はい、男の子です。二人とも元気ですよ。奥さん、頑張りましたね。紺野さんお目でとうございます」。
美保は頷いてただ涙を流していた。すると、間もなく奇麗にされた双子の赤ん坊が二人の看護婦の手に抱かれて美保の両脇に寝かされた。
まるでオモチャのようだった。
「美保、御苦労様。有り難う、頑張ったな」。
「うん、着いていてくれて有り難う。私嬉しい」。病院に運ばれて僅か三十分で双子の子供を元気に生んだ。
そして半月早い出産にもたいした未熟児と言う事もなかった。しかし、病院では用心の為に保育器に入れる事にした。
こうして美保は八月十日、午前十時三十分に女の子。そして一分後の三十一分に元気な男の子の双子の兄弟を出産したのだった。
そして産後の処置が済んだ美保は病室に運ばれた。母良江が来て待っていた。

「御苦労様でした。頑張ったわね美保さん。御目出とう。元気な子だったわよ。京都のお母さんに知らせたら二人で今夜にでも飛んで来るって」。
「はい、有り難うございます。忙しくなるのに済みません」。
「ううん、何を言っているの。人はもう頼んだから心配しなくても良いのよ。早く抱きたいわね」。
そして表には真田と彼女の山下則子が来ていた。母良江が二人を呼んで病室に入れた。すると二人は自分達が来た事で美保を驚かせ、陣痛が早まったと、そんな心配をして入って来た。
「奥さん、僕たちが来たから」
「そうじゃないの、今朝からもう兆しはあったの、ねえ貴方」。
「うん、貴明が来なくても陣痛は始まったんだ。お前たちのせいじゃないよ」
真田はホットしたような表情になって笑顔を見せた。そして大きな花束と出産祝いをそっと後ろから出して差し出した。

「有り難う真田さん則子さん。ごめんなさいね、来る早々こんな事になっちゃって」。
「いいえ、御目でとうございます。私達、休みは十分取って来ましたから。赤ちゃん見させて頂きました。私も早く欲しくなっちゃいました」。
そう言う則子の隣では照れ臭そうに貴明は笑っていた。
「じゃあ僕たち宿へ帰ります。お大事に」と二人は帰って行った。
その晩、食事を済ませた美保は出産の大役を済ませた疲れで休んでいた。
その傍らには京平が見守っていた。
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