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小説・サブリミナル第一章(美しい子悪魔)NO-(2)&CG

2008-05-30 04:09:35 | 小説・サブリミナル・美しい子悪魔
小説・サブリミナル第一章(美しい子悪魔)NO-(2)&CG

私は無意識のまま避けていました。気が付くと、荷造りに使う紐を切る裁縫用のラシャ鋏で木村の胸を刺して居ました」。
「それからどうしたの?・・・」。
「気が付くと木村は倒れていました。急に怖くなって、そしたら娘の顔が頭に浮か んだんです。それからどうしたのか、自分でも良く分かりません。
気が付いたら、白山にあるお店の前にいました。時計を見ると九時三十分でした」。そう話すと綾子は、事の重大さに只々泣くばかりだった。       
早乙女はそんな綾子を見つめ、心ならずも苦笑いを浮かべていた。
犯行が行われたその時間、偶然にも私は母と東京ドームで巨人阪神戦の野球観戦をしていた。5対2で巨人が勝利した。                   
早乙女は、ゲーム開始時間から終了した九時までの事を思い返している。
ドームから春日町の駅まで歩き、九時半には自宅に戻った。
そこを、春日町駅から白山駅に向かったと訂正し、九時半には綾子の勤め先である、スナック桃子に着いた。早乙女は綾子の目をじいっと見つめた。
綾子は止めど無く流れる涙を拭い、キョトンと見つめたままだった。 
「藤井さん、もう一度訊くわよ。六日の午後六時から何をしていたの」。
「エッ・・今も話した様に午後六時から東京ドームで巨人阪神戦を観ていました。  木村が殺されたのは午後六時半から七時だって言うじゃないですか。なのにどう して私が木村を殺せるんです。
でも、もし木村が来て口論になったら、私が殺していたかも知れません」。
完璧、これで良し。早乙女はにんまり頷く。
「藤井さん、今まで黙っていたのは何故なの?・・・」。
「あの佐藤とか言う刑事が、最初から私が木村を殺したんだろって言うから。野球を観ていたって言っても、どうせ信じてくれないと思って」。
「私は信じるわよ。いい事、いま私に話した事は私が良いと言うまで誰にも話しては駄目よ。話したら貴方を救えないかもしれないから」。
「・・・はい、分かりました」。小首を左に倒して不満げに頷く藤井だった。
「それから藤井さんの写真が欲しんですけど。それと着替えを持って来て上げます。 住所を教えて」。早乙女は手帳とペンを差し出した。
綾子は不思議そうにペンを取り、書出した。

「私の家からそう遠くないわね、後で着替えを届けますから。藤井さん、くどい様 だけど喋っては駄目よ。一日か一日半で出してあげますからね」。
早乙女は藤井綾子の手を握り、頷くと取り調べ室を出た。廊下の長椅子に若い刑事が座っていた。早乙女が出ると同時に腰を上げる。
「終わりましたか・・・それで、犯行を自供しまたか」村井刑事は自身ありげに含み笑いを浮かべていた。
「刑事さん、私は藤井さんの弁護士ですよ。依頼人に不利益になる様な事は話せま せん。守秘義務がありますからね。では失礼します」。
村井は悔しそうに見つめるが。早乙女は軽く頭を下げて見送った。
南は警察を後にした。

春日町、藤井綾子のアパート。
あう阿古から聞いたアパートは昔ながらの木造の二階屋のアパート。それが三棟並んだ真ん中の二階の角部屋である。
アパートの前には警察車両が一台、早乙女が近付くとドアが開き、若い巡査が降りて来た。二階へ上がる階段には黄色いテープが張られている。
「失礼ですがアパートは立ち入り禁止です」。
「分かっています、私は藤井綾子さんの弁護士の早乙女といいます。刑事課長の許可は貰って来ています」。早乙女は身分証を提示した。
巡査は驚いた様に敬礼し、無線を持つと確認の連絡を取った。
「失礼しました、どうぞ。ただ血だらけですから気を着けてどうぞ」。巡査は張ってあるテープを上に上げた。
「どうも」と礼をいいながらくぐる。
確かに巡査のいう通り、階段の下には夥しい血痕がドス黒く異臭を放っていた。
被害者、木村宏は室内で殺害された訳では無く、刺された後、意識が戻り、部屋から這って階段を降り、階下で息絶えたのである。
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小説・サブリミナル第一章(美しい子悪魔)NO-(1)&CG

2008-05-29 02:15:29 | 小説・サブリミナル・美しい子悪魔
小説・サブリミナル第一章(美しい子悪魔)NO-(1)&CG

      サブリミナル・美しい小悪魔(第一章)
      
六月八日木曜日、朝食後、早乙女南は或新聞記事に注目する。
それは一昨日、六月六日火曜日、午後六時半頃、藤井綾子47才が前夫、木村宏47才を裁縫用の鋏で刺し殺したと言う事件だった。
綾子さんは母と同い年か・・・と宙を見ると新聞に目を戻した。
しかし、容疑者として逮捕された綾子は。私は殺してない。そう言ったまま黙秘し てる。と書かれていた。
その日、その時間私は?・・・と唇を尖らせながら宙を見詰めた。
瞬間、サッと新聞をテーブルに放り投げると駆け出した。
階段を駆け上がり、スッとドアを開けたまま服を脱ぎ捨てて下着姿になった。
壁に掛けてあった紺のミニのスーツに着替え、鏡台を覗いて手串で簡単に髪を撫で、バックを肩に飛び出した。
キッチンでは母が洗い物をしていた。「何です朝から!・・・」。   
「お母さん、出掛けるから」。
母はいつもの様に頷く。  
「しょうがないわね、気を着けていってね」。
「うん、じゃあ行って来ます」。と飛び出していた。

 所轄、本富士署。刑事部屋。
「失礼します、藤井綾子さんから弁護依頼を受けて参りました早乙女と言います」 ムッとした様に五~六人の刑事たちが振り返る。刑事は揃って早乙女の足元から上へと視線を上げた。何時もながら嫌な感じで応対を待っていた。
すると、小太りで半ハゲの中年刑事が椅子から離れ、額にはギラギラと脂汗を滲ませて歩み寄った。早乙女は低く腰を折り、手にした名刺を渡す。
「そんな話しは訊いていませんよ」。
ソフトな言い回しだが、上目使いで睨むように見詰め、視線を胸元に下げ、下へ下へと視線を移した。
「聞こうが聞くまいが刑事さんには関係ありません。刑事事件に弁護士が着くのは 当たり前の事です。接見させて頂きます」。
刑事は名前も言わないまま、奥のデスクに行く。南の名刺を差し出した。
デスクには刑事課長、鈴木実警視と掛かれている。
「佐藤刑事、いいだろう、接見させてやれ。弁護士さん、容疑者に言ってください。正直に話す様にってね」。
鈴木はそうは言ったものの、目は小馬鹿にした様に笑っていた。
「それはどうも、話してみます」。
佐藤刑事は先に刑事部屋を出る。早乙女は一礼し、刑事たちに頭を下げると追う様に刑事部屋を出た。  
そこは第二取り調べ室だった。「どうぞ、こちらです」。
容疑者の藤井綾子は若い刑事の取り調べを受けていた。鉄格子の入った小さな窓を 見つめていた。早乙女の母に似て美しい女性だった。
着ているブラウスの襟が汗で汚れ、誰か接見してる所か着替えすら届けられている様子もなかった。
若いは刑事は椅子から立ち上がり、早乙女を見ると頭を下げる。
「村井、弁護士さんの接見だ」。
「エッ・・・」弁護士と聞いて驚いた様に早乙女を見る。
「何も聞いていませんよ」
藤井綾子も驚いた様に振り返り、見上げた。二人の刑事は渋々部屋を出て行った。
「藤井さん、早乙女南と言います。これでも弁護士なんですよ」。
そう言いながら名刺を差し出す。
瞳を見開き、机の上に置かれた名刺に手を延ばす綾子。
早乙女は綾子の足元を見た。スリッパの踵が赤く靴連れを起こしていた。紐の着い た靴を履いて随分歩いた事を物語っていた。
「私に何も可も正直に話してください。私が貴方を守って上げます」。
「エッ・・・」。と困惑したように見詰め、頷いた。
「あの日、六月六日の火曜日です。午後六時頃、突然夫木がお酒に酔って、もう半ば泥酔状態でした。
その日は、アパートの建て替えの為に引っ越しの支度をしていました。高校二年の娘が居るんですが、その日は近所の姉の家に行っていました。
木村は、毎度の事で、またお金の無心に来た事は分かっていました。 
金を出せって、貴方に渡すお金なんか一銭もありません、出でいってって、そう断ると、前夫は無言のまま狂った様に殴り掛かったんです。
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