20XX年・クエスチャン (-16-)
女性には絹のランジェリーの上下、パンティーストッキング、真っ白なTシャツ。男性にはトランクスとTシャツタイプのシャツ、靴下から安全靴まで揃えられていた。
早々に制服に着替え、IDカードを胸に部屋を出た。大学の先輩でもある新田則夫、ポリスの林進一、田島礼子、三人が待っていた。
貴方、林さんを忘れていたわ。林さんが一番年上ね。耳元で囁く様に言う真由美だった。
頷く佐伯。廊下の両脇には敬礼し、ズラリと並ぶ隊員たち。
佐伯は敬礼したまま進む、それは壮大だった。
心なし緊張もし、中央に開けられた扉の前に立った。「これは凄い」。思わず口にしてしまう程の人数と拍手に迎えられたのだった。
佐伯と真由美は、空母大和の艦長、狩野誠一のエスコートで壇上に向かった。と、同時に副大統領、大友良三が壇上に現れ、拍手で二人を待っている。
壇上に着くと拍手はピタッと止んだ。
「諸君、紹介します。このJESプロジェクトを指揮する指令の佐伯晃博士です。お隣が副官でもあり、人生のパートナーでもある奥様の真由美さんです」。副大統領大友からJESプロジェクトが佐伯に引継がれた。今後、佐伯司令の言葉は絶対であり、それを伝える副官の真由美の言葉も同様である。
これから我々はかつて体験した事の無い恐怖に立ち向かって行かなければならない。国家、全世界、人類の存亡が託された。
国民にはこの地球で何が起きているのか今だ知らされていない。本日午後19時、横須賀沖に停泊している巨大空母大和、イージス艦ふくろう1、2、と 共に出港する。 成田空港からは気象観測機スカイレパド003・005の超ハイテク機2機が離陸する。同時に、大統領、西条純一郎自ら全世界向けてに発表する事になっている。
壇上から大友は降り、佐伯の挨拶へと移る。
「佐伯です。もう自分が言う事は何もありません。唯一つ、このプロジェクトを成功させ、全員が無事帰還するのが自分に貸せられた任務と思っています。それには、臆病になって頂きます」。
「佐伯司令に申し上げたい、我々軍人は国の為、国民を守る為に命を捧げる覚悟である、それを臆病になれとは我々軍人魂を軽視してる他無い。撤回されたい」。
佐伯は小型PCを開き、ペンシル形スキャナーを隊員のIDカードに向けた。
すると、その訴えに賛同した隊員が集まりだした。
間もなく身分が照会された。そう熱り立ったのは、陸軍大佐、紺野隆35才だった。
「紺野大佐、それではプロジェクトを抜けて頂く。大佐に賛同して集まった諸君も。このチームが結成された意味がお分かり頂いてない様です。
我々は戦争に行くのではありません。自分たちが相手にするのは人でも獣でも怪獣でもない。大自然から起こる超異常現象なんです。大自然の悪魔です。
確かに世界を誇る空母やイージス艦には最新鋭のミサイル、戦闘機が搭載されています。そこで、大佐にお尋ねします。その武器で4月3日に起きた異常現象を無くせますか。今後二度と起こらない様に出来るなら先程の言葉は撤回します。
返答はいかにッ!・・・」。佐伯は少し熱くなって怒鳴った。
そして黙ったまま返事を待った。紺野大佐の周りに集まった隊員は、一人二人と席に戻る大佐、自分は全員無事に帰還させたい。万が一、異変の兆候が現れた時、もう少しで発生原因が分かるから観測したい。そう言う者がいたら退却が遅れる。
その身勝手な一人の行動で我々一万八千人は死ななければならない。
大佐はそうしろと、私はその者を射殺しても撤退します」。
「私も夫に賛成です。もし、もう少し観測したいと言う隊員が夫であっても。私は副官として夫を置いてでも撤退します」。
「司令、自分が間違っておりました。臆病になりますッ!」。その言葉に、静まり返った大ホールは突如笑いの渦が巻き起こった。
紺野大佐は笑いごと所ではなかった。佐伯に抜けて頂く、そう言われて真地に受けていた。困った様に壇上の下に駆け寄った。
「司令、自分を連れてって下さい。必ず臆病になりますッ!」。
それには佐伯も笑いを堪えきれず、真由美と大笑いだった。
「ええ、勿論です。こちらからもお願いします。アッハハハハハ・・・」。
こんな経緯から始まり、隊員たちとはスッカリ打ち解けた。
昼食は立食パーティー形式で行われ、寿司コーナーがあり、中華があり、ラーメンの屋台まで用意されていた。 佐伯夫婦の周りには大勢の隊員が集い、笑いが溢れていた。そんな佐伯の元へ、一人の隊員が小走りに駆け寄り敬礼した。
「失礼します、第一電探の遠藤です。旗艦大和から入電です」。
一通の書類を差し出す。隣にいた大和艦長狩野の表情が強張る。そして、佐伯の周りから笑い声が消え、伝染する様にホール中から笑い声が消えた。NO-16-32
女性には絹のランジェリーの上下、パンティーストッキング、真っ白なTシャツ。男性にはトランクスとTシャツタイプのシャツ、靴下から安全靴まで揃えられていた。
早々に制服に着替え、IDカードを胸に部屋を出た。大学の先輩でもある新田則夫、ポリスの林進一、田島礼子、三人が待っていた。
貴方、林さんを忘れていたわ。林さんが一番年上ね。耳元で囁く様に言う真由美だった。
頷く佐伯。廊下の両脇には敬礼し、ズラリと並ぶ隊員たち。
佐伯は敬礼したまま進む、それは壮大だった。
心なし緊張もし、中央に開けられた扉の前に立った。「これは凄い」。思わず口にしてしまう程の人数と拍手に迎えられたのだった。
佐伯と真由美は、空母大和の艦長、狩野誠一のエスコートで壇上に向かった。と、同時に副大統領、大友良三が壇上に現れ、拍手で二人を待っている。
壇上に着くと拍手はピタッと止んだ。
「諸君、紹介します。このJESプロジェクトを指揮する指令の佐伯晃博士です。お隣が副官でもあり、人生のパートナーでもある奥様の真由美さんです」。副大統領大友からJESプロジェクトが佐伯に引継がれた。今後、佐伯司令の言葉は絶対であり、それを伝える副官の真由美の言葉も同様である。
これから我々はかつて体験した事の無い恐怖に立ち向かって行かなければならない。国家、全世界、人類の存亡が託された。
国民にはこの地球で何が起きているのか今だ知らされていない。本日午後19時、横須賀沖に停泊している巨大空母大和、イージス艦ふくろう1、2、と 共に出港する。 成田空港からは気象観測機スカイレパド003・005の超ハイテク機2機が離陸する。同時に、大統領、西条純一郎自ら全世界向けてに発表する事になっている。
壇上から大友は降り、佐伯の挨拶へと移る。
「佐伯です。もう自分が言う事は何もありません。唯一つ、このプロジェクトを成功させ、全員が無事帰還するのが自分に貸せられた任務と思っています。それには、臆病になって頂きます」。
「佐伯司令に申し上げたい、我々軍人は国の為、国民を守る為に命を捧げる覚悟である、それを臆病になれとは我々軍人魂を軽視してる他無い。撤回されたい」。
佐伯は小型PCを開き、ペンシル形スキャナーを隊員のIDカードに向けた。
すると、その訴えに賛同した隊員が集まりだした。
間もなく身分が照会された。そう熱り立ったのは、陸軍大佐、紺野隆35才だった。
「紺野大佐、それではプロジェクトを抜けて頂く。大佐に賛同して集まった諸君も。このチームが結成された意味がお分かり頂いてない様です。
我々は戦争に行くのではありません。自分たちが相手にするのは人でも獣でも怪獣でもない。大自然から起こる超異常現象なんです。大自然の悪魔です。
確かに世界を誇る空母やイージス艦には最新鋭のミサイル、戦闘機が搭載されています。そこで、大佐にお尋ねします。その武器で4月3日に起きた異常現象を無くせますか。今後二度と起こらない様に出来るなら先程の言葉は撤回します。
返答はいかにッ!・・・」。佐伯は少し熱くなって怒鳴った。
そして黙ったまま返事を待った。紺野大佐の周りに集まった隊員は、一人二人と席に戻る大佐、自分は全員無事に帰還させたい。万が一、異変の兆候が現れた時、もう少しで発生原因が分かるから観測したい。そう言う者がいたら退却が遅れる。
その身勝手な一人の行動で我々一万八千人は死ななければならない。
大佐はそうしろと、私はその者を射殺しても撤退します」。
「私も夫に賛成です。もし、もう少し観測したいと言う隊員が夫であっても。私は副官として夫を置いてでも撤退します」。
「司令、自分が間違っておりました。臆病になりますッ!」。その言葉に、静まり返った大ホールは突如笑いの渦が巻き起こった。
紺野大佐は笑いごと所ではなかった。佐伯に抜けて頂く、そう言われて真地に受けていた。困った様に壇上の下に駆け寄った。
「司令、自分を連れてって下さい。必ず臆病になりますッ!」。
それには佐伯も笑いを堪えきれず、真由美と大笑いだった。
「ええ、勿論です。こちらからもお願いします。アッハハハハハ・・・」。
こんな経緯から始まり、隊員たちとはスッカリ打ち解けた。
昼食は立食パーティー形式で行われ、寿司コーナーがあり、中華があり、ラーメンの屋台まで用意されていた。 佐伯夫婦の周りには大勢の隊員が集い、笑いが溢れていた。そんな佐伯の元へ、一人の隊員が小走りに駆け寄り敬礼した。
「失礼します、第一電探の遠藤です。旗艦大和から入電です」。
一通の書類を差し出す。隣にいた大和艦長狩野の表情が強張る。そして、佐伯の周りから笑い声が消え、伝染する様にホール中から笑い声が消えた。NO-16-32