エンターテイメント、誰でも一度は憧れる。

PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

20XX年・クエスチャン (-6-)

2010-05-15 14:07:54 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-6-)

あれだけの人が犠牲になった後だ。学者生命に拘ってくるのにどうする積もりだ。都内NHI放送局、控え室。
神宮寺勝彦は番組を降ろされていた。助手の松永隆司と膝を交えている。
「教授、あれはまずかったですよ。教授は佐伯の論文を肯定するんですか」。
「君だって今になれば肯定せざるを得んと違うかね。
もう既に他の会員の殆どは三年半前の佐伯君の論文は正しかったと肯定的だ。この論文を読んで見たまえ」。
神宮寺は机のカバンを持つ。カチンッと金属音を鳴らしながら茶封筒を出す。
バサッと松永の前に置いた。松永は驚いた様に神宮寺を見上げた。
「・・・君もそう思ってるのと違うか・・・」。
神宮寺はうろたえ、うろうろと歩き回り、いつになくいらついている。
「教授、そんなうろたえる教授を見るのは始めてです」。
「私は何もうろたえてる訳ではない、いまこの時期を逃したらいつ発表する。
正直迷った事は確かだ。私だって鬼でも蛇でもない、君はあの惨状を見てどう思ったのかね・・・君は知らないだろうが、去年の11月の末頃から異様な状況は顕著に現れていたんだ。モンゴルの上空1万メートルに異様な磁場帯が現れては消え、消えては現れると言う現象がね」。

「エ~ッ!・・・ではこうなる事はご存じだったんですか」。松永は目を見開き、神宮寺を見詰めていた

「いや、こうなったのは全くの偶然だ。観測者も私達も一時的な現象だろうと言うのが殆どだった。12月末まで一度も異変は観測されなかったからね。
佐伯君の論文の7ページを開き賜え。全く同じ事が書かれて居る。
地軸が西に18度傾き、その事に因って貿易風の位置が変わり、大きく南にずれた時、偏西風も同時に下がる。勿論深層水の流れも変わる。
今まで地球上空に散らばって居た汚染物質が一点に集まる。そこが、唯一汚染されていないモンゴル上空だ。
そのチリが強い偏西風によって掻き乱され、分子と分子がぶつかり合って次第に磁気を持つ様になる。
それにはもう一つの要因と偶然が重なった。それはイタリアのエトナ火山の大噴火だ。噴煙には様々な鉱物の粒子が含まれている。その事も佐伯君は触れてる。勿論、君も知ってるように噴煙の中でも放電現象が起こる。
航空機のパイロットが雷雲に入った時に遭遇するという天使の光だ。それは雷雲で発生する放電現象だ。それと同じ事が噴煙の中でも発生する。
+極は-極を呼び、-極は+極を呼び、次第に巨大な磁場層を形成する。
そして、次第に宇宙から飛び来る様々な電波をも一点に吸収する様になる。
そして、紫外線や赤外線や様々な粒子を帯びた磁場層は化学変化を起こして強大なエネルギーを生み出す。自然界でだ、それも大気中で炉心を形成した一種の核融合だ。
これは大気汚染や環境汚染など様々な要因と、その時の気象状況から弾き出した素晴らしい結論だ。佐伯君はいまどうしてるのか君知ってるかね」。

「いえ、あの日以来研究室に私物を残したままそれっきりですから。でも佐伯らしいです。研究したデーターは全て持っていきましたから。今頃何処かでさっきの番組を観て笑ってるんでしょうね。それ見た事かって」。
「君はそんな風にしか考えられんのかね、私はそうは思わない。彼ならきっと連絡してきますよ。私でなくても誰かにね・・・そうだ、きっと早瀬女史になら。二人は付き合っていたんだったね」。

その後、数日で異常気候は各国に天文学的な被害を残し、跡形も無く消滅した。
国連は気象の専門化を中心に調査団を編成し、各国へ送った。我が国も数百人規模の調査団を送り出した。
 
被害国の国の川は全て枯れ果て、大地は荒廃し、残された家畜や逃げ遅れた野生動物の干涸びた骸が乾いた河川に累々とあるばかりであった。 
或る都市に点在する家屋に来ると、何処からともなく燻製の様な匂いに誘われて一人の調査員が一軒の家に入った。
「どなたかいらっしゃいますか・・・いたら返事して下さい。調査隊です。誰か居ませんか」。返事は無く、その呼ぶ声に他の隊員が入って来た。
「斉藤さん、誰か生存者が居るんですかね。凄くいい匂いです。誰か燻製でも作ってるんじゃないですか。その家からですね」。
二人は声を掛けながら一軒の家にはいった。                 
匂いの元を探しながら廊下を行くと、半開きになったドアからだ。そのドアを開けた。それは地下室へと続く入り口だった。
NO-6-12

20XX年・クエスチャン (-5-)

2010-05-09 15:23:35 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-5-)

気象庁や博士のおられる気象学会は全く予想出来なかったんでしょうか。 
「異常気象に着いてはどちらとも言えません。貴方も御存じだろうが、今では出産後間もなく極僅かな高性能IDチップが後頭部に埋め込まれます。
このIDチップは体温を関知する機能もありましてね。また、100度まで絶えれらますが。人は生きられません。
それにIDチップは破壊されてしまいます。それを衛星が瞬時に探知して政府のメ  インコンピューターに生死を教えてくれる仕組みになっています」。
「・・・そこまでは知りませんでした。では衛星と繋がりましたので、今後犠牲者が増えない事を祈りながら、観て参りましょう」。

映像が切り替わり。衛星がアジア大陸を遠めに映しだした。明らかに被害を受けた国々の大地の色が変わって居る。                          
大地には緑は無く、砂漠化しているのが素人でも見分けが着く程であった。    
そして、各国の原子力発電所の所在地は★マークが標され、次々と各国の原子炉をアップに映し出しす。いずれの原子炉建屋は変色はしていたものの無事であった。
次に衛星からの映像は各国の主要な港を映し出した、東のインドの沿岸伝いに。
大きな炎を上げ、濛々と黒煙を空を染めて居る。が、しかし、その消火に当たる船も人の姿は全く見当たらないのである。それはどの国の港も同じであった。 
画面の片隅に女子アナと神宮寺の表情が映し出される。
両手をテーブルに置き、堅く結び、唖然と観てる姿が印象的であった。
カメラを向けられている事に女子アナは気付き、姿勢を直して語り掛けようとするが、画面から映像が消え、アジア大陸を映し出した映像に戻る。
徐々に一点を目指して拡大して行く。異常が発生したモンゴルの現状を映し出した。
緑地帯は全くといって良い程見られなかった、大地は土色に染まっている。

「これは酷いです、いま映し出しているのがモンゴルの首都ウランバートルです。まるでポンペイですね。
異常な熱で大地は荒廃し、その熱に因って自然発火して家屋が全て焼き尽くされてます。これでは残された生物は草一本と言えど生きて無いでしょうね」。
「博士、どうしてこの様な大惨事になったんでしょうか」。      
「一概にこうだとは言えません。正直な所、現時点では全く分かりません。何せ被害地域を見るのはこれが始めてですからね。               
それに、ようやく観測機器が正常に戻ったばかりでデーターがありません」。
「・・・・・」その言葉に立花ソニアはどう質問をして言いのか困惑ぎみに「こうなった原因に何か思い当たる事は無いのでしょうか」。         
「・・・ただ、何年か前に有能な一人の学者がいましてね、こうなるかどうかは口にしませんでしたが・・・」。神宮寺は言葉を飲み込む様に口を閉ざし、不意に・・・
「いまに飛んでもない事が地球上で起こると予期した学者がいました」。その一言にザワザワとスタジオ内が騒然とする。
「コマーシャル、コマーシャルいけッ!」。
コマーシャルONが点灯する。ディレクターの笠井が血相を変え、ヘッドホーンを外して駆け寄る。     
「博士困ります、生放送なんですよ。本番中に予言紛いた事をおっしゃられては困ります」。
ハッ・・・どうも、これは失礼した。だが今の話しは冗談ではない・・・その学者はデーターに基づいていると言っていた。当時そんなSF小説まがいな論文に極少数の学者が興味本位でからかう者はいたが誰も耳を貸す者も本気で相手にする者もいなかった。私を含めてだがね・・・」。
「では今はどうです?・・・信じないまでも遠からずって事ですか」。     
その問いに神宮寺は眼鏡を外し、しばし沈黙した後、そっと二度三度と頷く。 
「ソニア、後半は君一人でカバーしてくれ。恐らく放送を観た視聴者から苦情の電話が殺到するだろう。博士は帰った事にします。宜しいですね」。 
神宮寺「申し訳ありません。つい生放送だと言う事を忘れ、気になっていた事を口にしてしまった。本当に申し訳ない」。神宮寺は肩を落とし、控え室に戻った。
長いコマーシャルがつづき、番組が再開された。
 
「引き続き異常気象の被害に遭われた国々の映像を御覧下さい」。
どうした神宮寺は・・・まさかあんな事を言うとは思いもしなかった。漸く俺が発表した論文を信じる気になったのか・・・。
佐伯は悪い気はしなかった。そう思うと三年前、正確には三年と六ケ月前になる。
こんな男を師と仰いで目標にして来た自分が恥ずかしい。と、雑言を吐き捨てたまま姿を消した自分が恥かしく思えてきた。
あんな事を全国放送で話してしまっていいのか。自分から導火線に火を点けてこれからが大変だぞ。あの頃ならSF小説の読み過ぎなんじゃないのか、そう言って笑われて済ませられた話しでも今は事情が違う。NO-6-10         

20XX年・クエスチャン (-4-)

2010-04-26 19:17:26 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-4-)

「では我々は何の対策も出来ないまま手をこまねてろと、どうして磁気を伴った空間や6000メートルもの磁気を伴った層が出来たのかね」。
神宮時「恐らく、この異常気温の上昇で乱気流が発生し、地上のチリや埃が予想も着かない程の量が舞い上がり、分子と分子とぶつかりあって磁気を帯びたんでしょう。その証拠に、避難民の話しでは大型の竜巻があちらこちらで発生したそうです。
大勢の住民も巻き上げれ、被害に遭われた一部の人は見付からないそうです。 その竜巻は、貨物列車を意とも簡単に舞い上げ、空高く消えたそうです」。出席者の誰もが苦悩な表情を浮かべ、溜め息交じりに壇上を見つめて居る。

米士官「それで、人為的被害はどれ位出ているんですか」。
環境庁「まだ確かな情報ではありませんが、モンゴルと中国の高官関係者の話しですと十万単位だと伝わって来ております。概算の数字と内訳ですが」。次々と読み上げられる被害者の数、出席者達は呆然と聞き入って居る。
手の施しようもなく、時間ばかりが流れ、早一ケ月が過ぎた。

二月の中旬に入っても大陸の異常気象は治まる気配は無かった。それ所か、異常な傾向は徐々に中国全土へと驚く程早く、そんな馬鹿なと驚く程ゆっくりと広がり始めた。
ある時は一晩で数百キロも南下したと思うと、一週間で僅か数十メートルと言う気紛れな広がりを見せていた。

そして、異常な現象はまるで意志を持った生き物でもあるかの様に北の大国、ロシア連邦には越境せず、真っ直ぐ南下を始めたのである。
それには日本政府も驚きを隠せないでいた。西条純一郎大統領は己を長とする緊急対策本部を官邸に設置した。

佐伯晃はコタツに入り、ペンを片手に原稿を書いていた。TVニュースが始まると手を休め、異常現象のニュースを見入って居た。
不意に立ち上がると書棚から世界地図を取り出し、原稿の上に広げた。
チベットの東の一番外れの国境ははタジキスタン、このまま南下するとインドは勿論、東南アジアはスッポリ入ってしまう。

中国の西の端は・・・このまま南下して来ると大阪辺りか・・・佐伯はじっとTVを見詰めていた。スッと立ち上がると隣の部屋に行き、パソコンのスイッチを入れた。    もし、このまま治まらず南下したら日本を含めて22ケ国がエリアに入る、とすると、22ケ国の人工が約35億人で学会で発表になった被害者の割合で被害者数を出すと、11億2千万もの人達が犠牲になるのか・・・。
この時代まで人間がしでかした大きな過ちが、今になってこう言う形で忌ましめの為に き襲たのだろうか。ボ~ッとモニターを見て居る。

「ピピピピピッ~・ピピピピピッ~」と、TVが臨時ニュースを知らせた。
リビングに駆け出した。
あの女子アナ、立花ソニアの落ち着きはらった顔がアップになった。
すると、隣にはあの神宮寺勝彦がいた。
フンッ、あの男は自分の保身が何より全てなんだ。人が何人死のうと関係ないのさ。
そんな男に何ができる。佐伯はムカッと腹がたった。
「ここで番組を中断して気象異変に関するニュースを申し上げます.
今年の元日以来今日まで続いておりました異常な気候が、多くの国々を飲み込みました。 今まで分かっているだけで犠牲になられた人は当初の推定を大きく上回り、8億3千万人と発表がありました。

この甚大な被害をもたらした異常気象がアラビア海、ベンガル湾、南シナ海、黄海、日本海の沿岸に達した所で消滅しました。また上空3000メートルにありました磁気を伴った6000メートルの層が忽然と消滅しました。その事に因って衛星の全ての機能が元に戻り、衛星から現在の被害地域が捕らえられる様になりました。
お隣には世界気象学会理事長であり、地球物理学の教授でもいらっしゃいます神宮寺博士にお越し頂いております。博士に解説を頂きながらライブでお送りします。神宮時博士、宜しくお願いします」。

「こちらこそ宜しくお願いします」。と神宮寺はニコリともせずに軽く会釈した。    「早速ですが。この異変の犠牲者ですが、この8億3千万人と言う被害者数は当初の予測の5倍近く上回った訳ですが、どう言う事でしょうか?・・・」。
神宮時「これは誠に残念な数字になりましたね。この8億3千万と言う犠牲者が出てしまった第一の要因としては、異常気象が出現したのが中国の内陸部から奥地モンゴルであった事。
第二に、地上3千メートルから6千メートルまでに存在した磁気を伴った 層の出現、それに伴って荒れ狂った乱気流と各地で出現した巨大竜巻です。
第三に、3千メートル級の高い山に阻まれ、大型機に因る救出が出来なかった事。第四に、これが全てと言っても良いんじゃないでしょうか。交通機関に恵まれ ていなかった事。これが一番大きな要因でしょう。      
この犠牲者の大半は中国内陸部と、インドの内陸部の方達で占められているようですからね」。
「今後の事ですが、異常気象はこれで終りでしょうか。また、今後も犠牲者の数は増えるんでしょうか。犠牲者の数は確かでしょうか。
NO-4-8

20XX年・クエスチャン (-3-) 

2010-04-24 21:19:44 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-3-) 

では、取材班が各地へ行っておりますので、そちらから状況をお伝えします」。
映像が切り替わる。
ハンガイ山脈をアップで映し出した。山並みに当然ある筈の雪が全く無い。更に映像が切り替わった。画面にテロップが出なければ、これがヒマラヤだとは誰も気が付かない。
この数時間で全ての雪と氷を解かしたと言うのか?・・・
と言う事は標高が高い程温度は!・・・山麓の村々はッ!・・・思わず声を発していた。川べり沿いにひっそりとある小さな集落が気掛かりだった。
これ以上観ても被害の実体は分からないだろうとスイッチを切った。    
コタツに戻り、テーブルに両肘を付き、真っ暗なブラウンカンを見つめていた。
当然の事ながら温暖化になる事はデーターが示していたが。しかし、突然こんな形で異変が現れるとは想像も付かなかった。
もしこれが南北極地で起こって居たら・・・佐伯は身震いする思いだった。

20XX年、1月1日。
佐伯は異常気象の事が頭から離れず、悶々と寝付けない儘に朝を迎えた。
真っ先にTVのスイッチを入れた。どの番組も正月番組を取り止め、異常気象のニュースを流していた。やはり佐伯の心配は的中していた。
大量の雪解け水が川を反乱させ、土石流となり、ヒマラヤの中腹下域の川沿いの集落では突然の鉄砲水と土石流が村々を襲い、四つ五つの集落が跡形も無く消えたと言う。
また、山裾の村々も大小様々な岩石を含んだ土石流に押し流され、被害は甚大だと言う。一週間後。異常な気温上昇は更に温度を上げた。

僅か七日でモンゴルの草原を砂漠化させ、川を枯れさせ、モンゴル北部の森林地帯の木々を枯らし、自然発火を誘発させ、大地のいたる所から黒煙が立ち上ぼって居た。
アジア諸国はこの異常事態に対して国連に緊急援助を要望した。
国連は満場一致で異常事態に対し、緊急救助と共に緊急支援を決議した。
ロシア連邦、中国政府は越境を容認。全世界は異常気象被害国民を難民認定し、全ての難民を一時受け入れる事を表明した。                       世界中から避難民移送の航空機がチベット、モンゴル、被害地域へと轟音を轟かせた。
しかし、そこで思わぬ二次災害が生まれていた。

被害地域上空3千メートルから1万メートルには、1千度から千八百度と言う、更に温度の高い層が存在し、救出は許さない、そう言っているかの様に救援機を阻んだのだ。
救出に向かった輸送機はその層に突っ込み、次々と炎上して墜落。
避けようと低空した機は、高温で発生した乱気流に巻き込まれ、山に激突していた。
被害地域は標高の高い山に囲まれた地域ばかり、国連は大型機による救出を断念、小型機に寄る救出に切り替えを余儀なくされた。
その頃、東京のHホテル飛鳥の間では、異常気象対会議が招集されていた。気象学会員、他関係者が緊急招集された。

政府関係者をはじめ、気象庁長官、陸海空の特種部隊の師団長、米軍参謀の顔も揃って居た。そして、神宮寺勝彦が議事進行を努めていた。
今までのデーターが次々とスクリーンに映し出され、各担当教授の説明を受けた。
説明は淡々と行われた。
一時間あまりの説明に誰もが腕を組み、驚愕し、深刻な表情を浮かべて居る。
最後の説明を済ませた研究員が壇上を降りる。
「データーはたったそれだけか」。誰ともなく罵声にも似た声が響く。
重苦しい空気が会場を漂って居た。「ゴホンッ」、と一つ咳をすると顔を上げた。
代わりに神宮寺勝彦が壇上に立った。

「結果から申し上げます。いまお聞きになりました通り、異常現象地域上空3000メートルから上空には磁波を伴った100度から180度の高温の層が6000 メートルもあり、衛星、レーダーなどの探知は全く機能不能だと言う事です。
従いまして、この異常な気温上昇の原因も正体も、今後どのような展開に及ぶのか、 現在の所は全く予想すら出来ません」。              
軍幹部「だったら、旧式だがラジオゾンデ、気球を上げたらどうか」。と、会場から提案がなされた。                
神宮寺「勿論何度も試みて上げたそうです。しかし、熱帯圏の上空には乱気流が渦巻いており、3000メートルどころか500メートルも上昇しなそうです。   その500メートル迄のデーターすら強力な磁波が計器を狂わせ、何一つデーターが取れないと言うのが実態です」。
(-2-7)

20XX年・クエスチャン (-2-)  

2010-04-21 23:30:01 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (-2-) 

「もう遅い?・・・遅くなんかない。私は何年も前から訴えて来た、それを揉み消して来たのは誰です。教授、貴方だ。・・・私は知っていますよ、私の口を塞いで企業から報酬を得ていたことを。松永、お前も同じ穴のむじな 狢か」。
松永は知らない様であった。細い目を一杯に見開き、僅かに教授から離れた。
「・・・いいや、知らなかった」。
「そうか、お前も良く考えろよ。あ~止めた止めた、こんな人を今まで信じて師として目標にしてきたとは情けないよ」。
神宮寺は反論も出来ず、押し黙り、眼鏡を外すと大きく溜め息を漏らした。佐伯は嘘でも否定して欲しかった。しかし、佐伯が口にした事は真実であった。
「この先地球がどうなっても私は知りませんよ。責任は教授、貴方と、この学会と企業、それを黙認した国にある。失礼します」。
言い様のない怒りを覚え、深々と頭を下げると部屋を出た。
        
佐伯はどうかしていた、理解ある他の同僚の話しに耳もかさないで会場を後にした。 その後、二度と大学の研究室へは姿を現さなかった。              
今は原稿用紙を前に、ペンを手に環境問題に関わる本から様々なジャンルの小説を書いて生計を立てて居る。
その年も暮れも押し迫り、元旦を迎えようとしていた。その日も遅くまでペンを片手にコタツ入り、TVを観ながら小説を書いていた。     
毎年恒例の紅白が終り、TVは全国各地からの初詣での中継に変わった。ゴ~ン、どこからともなく低く垂れ籠めた除夜の鐘の音が耳に届く。
何気なく窓を見ると、いつ降り出したのか重そうなボタ雪が窓に張り付いている。
何年振りだろう、ここへ来てもう四目年か。静岡で迎える正月に降る雪は始めてかもな。そう一人ごとを言いながらコタツを出ると窓に立ち、空を見上げた。
これが何かの前触れでなきゃ良いけど。そんな事を思いながら大粒の雪を見つめて居た。

「ピピピピピッ~ピピピピピッ~・・・」ビクッと、身震いし、背筋に寒気を覚えた。
それは、緊急放送を知らせるTVからであった。 
映像が切り替わった。ホッとし、強張った頬が緩んだ。画面にはいま人気上昇中の女子アナ、立花ソニアだった。父親はフランス人、母親は佐伯と同じ信州は松本生れの女性だと言う。どことなく親近感が湧いていた。
ONエアーになっているのに気付いてない、原稿を手に俯いたままだ。オンエアーです。その声に驚き、慌てて顔を上げた。ディレクターから知らされたのだろう。
「失礼しました。ここで放送を中断して数時間前からモンゴルで始まりました異常現象について、モンゴル支局の浜本支局長に伝えてもらいます。浜本さん・・浜本さん・・・」しかし映像が入ってこなお。「まだ回線が繋がってない様です。浜本さん・・・」
すると、映像が切り替わり、暗闇を映し出す照明、半袖姿の無精髭のガッチリした男が現れた。
佐伯は身を乗り出し、TVの前に走った。ゴクリと生唾を呑んだ。
どうなっているんだ。この時期のモンゴルは零下35~6度になる筈だ。それが半袖か。
音が繋がっていない様でTVに向かって叫んでいる。

「はい、浜本です。はい、・・・ではお伝えします」。
「音声が繋がった様です。浜本さん、その格好はどう言う事ですか。その様な半袖で寒くないんでしょいか」。
「はい、はい、そうなんです。全く寒くないんです。この時期の冬の夜の平均気温は普段ですと、零下35~6度になるんですが、つい四時間前からアッと言う間に気温が上昇しまして御覧の通りなんです」。               
そう言いながら寒暖計を差し出すのだった。カメラがズ-ムアップする。温度計の目盛りは0度を大きく上回り、32度を指している。
「現在わたしはハンガイ山脈とモンゴル高原の中間にありますオンロギと言う町に来ています。つい先ほどまで凍っていた大地が解けて、いたる所から蒸気が上がっていまして、まるでサウナにでも入ってる錯覚さえ覚える様でした。それで、この異常気象の原因ですが、いまのところ全く不明だと言う事です」。
「浜本さん、それで被害の方は出てるいんでしょうか。それから、この異常気象はモンゴルだけなのでしょうか?・・・」。

「はい、被害の方ですが、いまのところ被害の情報は入っておりません。ただ、足元がぬかるんで歩きずらいと言った程度でしょうか。
範囲ですが、まだ未確認ですが、ネパールとチベットの堺にありますヒマラヤの山頂を起点に西へ こ  弧を描く様にチベットを二分し、中国の チンハイ 青海省から内モンゴル全土と内モンゴルを経て、中国 シンアンリン     大興安嶺山脈で止まっていると言う事です。南は、今お話しした中国北部の チンハイ 青海省から、北はモンゴルとロシア連邦の国境を沿った形で止まっているそうです。
(-2-5-)

20XX年・クエスチャン (第一章)(-1-) 

2010-04-17 17:08:45 | 20XX年・クエスチョン
20XX年・クエスチャン (第一章)(-1-)  

人は幼い子から老若男女、誰でも様々な驚き様がある。
エ~ッ!・・・まさか!・・・そんな馬鹿な?・・・スゲエ~ッ!。仰天し、或る者は泣き叫び、戸惑い、放心状態に陥る。時には想像も出来ない行動に移るパニック。
そんな驚きを満たす出来事は身の回りでも起こり得る事なのである。
もう遠い昔のこと、2001・9・11・アメリカの象徴でもあったニューヨークにある世界貿易センター、ツインタワーを突然の悪魔が襲った。
あろう事か、四機の旅客機をジャックしたテロリストの二機がツインタワーに乗客もろとも自爆テロを企てて突っ込んだのだ。

そして巨大なビルは回りのビルを巻沿いに崩落した。
残りの二機のうち一機は、誰もが驚愕した。アメリカを背負って居ると言っても良い軍事の中枢であるペンタゴンに突っ込んだのだ。
そして四機目は、携帯電話などで惨劇を知る事となり、犠牲を最小限にと乗客達が自らの命を犠牲にし、墜落させたのだ。
正に起こり得ない事が起こってしまった。
そして、その翌年、この日本でも大きな驚きがあった。
2002年、9月。20数年前に北朝鮮に拉致されたとする十数名の拉致問題である。
また、時折日本の領海を侵犯する不審船事件である。
海上保安庁の警備艇に追われた不審船は突如発砲。応戦し面食らった巡視船は仕方なく応戦した、結果不審船は沈没した。

不審船の乗組員も応戦して来るとは思って居なかったであろう。正かであっただろう。その後、突如として持ち上がった日朝首脳会談である。
頑に否定し、でっち上げだと二本を非難しつづけていた北朝鮮の国家元首が拉致を認めた。不審船は我が国の船だと認めたのである。正に驚きであった。
あれから随分と時が流れた205Х年、今ではガソリンに代わって水素を燃料としたホバークラフト・エアーカーが主流の時代を迎えようとしていた。
都市機能は40年前とは天と地ほども様変わり、子供の頃にSF漫画で見た様な未来都市へと変貌しようとしていた。  
そんな時代であっても師走には露店が並び、門松やしめ縄などを買い求める人々がいる。元旦を迎え、除夜の鐘を耳にすると、神社仏閣に出掛ける大勢の人を見掛けた。
人の心の中には昔ながらの初詣での習慣がまだ色濃く残って居た。
しかし、その年に限って大陸から前例の無い大寒波が日本列島をスッポリと覆った。
大寒波に包まれた列島は白一色に染まった。
              
そんな中、大雪に喜んだのは子供とスキー場を抱えた関係者だけであった。そんな国内において、この異変は始まりだと思う男が静岡に居た。    
佐伯晃は前途を嘱望されていた若き海洋気象学者、地球環境物理学者の二足の草鞋を履く色男ではあるが、一風変わった男であった。
しかし去る三年前、都内ホテルで開催された地球環境学会に置いて、地球規模における環境異変と人類の破滅、そう題した論文を自信を持って発表した。
結果、喝采を浴びるどころか会場は水を打った様に静寂に包まれたのだ。
予期していた事ながら、少々の戸惑を覚えながら壇上を降りた佐伯は、学会のドン、最長老の神宮時教授の控え室に呼ばれた。
ホテルの一室、神宮寺勝彦教授、控え室。
長椅子にドッカリと体を預け、怪訝そうに佐伯を睨む。神宮時の後ろには同僚の松永隆司が腰巾着の如く同席して居た。

神宮寺「まさか君がその事に気が付いていたとは思いませんでしたね」。
神宮寺のおっとりとした口調から想像も出来ない形相へと変化させ、睨んだ。「君は分からんのかッ!今更地軸のづれを発表したらどうなる、全世界の人達を騙すんですか。石油も石炭も天然ガスも使い果たそうとしている、  いま地球がどうなってるか。いたるどころ空洞だらけです。
そしたら今度は深海に手を延ばした。メタンハイドレード、深層水。その深層水の取り過ぎで海がどうなってるか分からない筈は無い。
このままでは三年、いや五年、深海のメタンハイドレードを採掘して環境破壊を続けたらどうなるか。このままほっておいたら確実に破滅しますよ。
採掘時に漏れたメタンがどういう訳か膨大な量が大気圏まで達して、いえ、メタンだけじゃない・・・今なら間に合う・・・」。
「もう良いッ!今更君に講義してもらおうとは思わん。もう遅い」。 
NO-1