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刻塚-(NO-29)

2009-12-12 19:00:22 | 小説・半日の花嫁
刻塚-(NO-29)

「以後気を付けて、まあいいからあんたも弁当を呼ばれろ」と、差し出す増井だった。妙な雰囲気の中、二人の県教委も食事を取り。午後一時過ぎから作業は始まった。そして三十分ほどした午後一時半、雑木林の中が騒々しくなった。
一人の捜査員が増井と筒井に駆け寄ると話していた。筒井は猿渡を見た。そして来た。「猿渡、お前の言う通り穴があったぞ。来るか」
「勿論、手島も行くか」手島加奈はキョトンとして雑木林を眺めていた。
「行くって何処へ行くの。何かあるの?・・・」

「いいから来れば分かるよ。麻代も行くか」。
「うん、抜け穴でしょう。危険がなければ入ってみたい」。そう言うと増井を見た。「ええ、一緒にどうぞ。でもあの二人には内緒ですよ」と、ニヤッと笑った。
「増井さん、なにか見付かったんですか」と、目だとく鈴木が寄って来た。
「ええ、まだ分かりませんけどね。貴方々には関係ない事ですよ」。
そして雑木林の中へ入った。社から50メートルも入っただろうか、大きな岩の裏にポッカリと立て穴が口を開けていた。

「警部補、これじゃ見付からない筈です。普通に見たらただの柊の木ですから。この柊の木を束にして穴の中へ入れて隠してありました。切り口から見て最近切った木ですね」。捜査員は束になった柊を穴に入れて見せた。
「本当だ、これじゃ分からないな。懐中電気はあるのか」。
「はい、持っています。では入ります」捜査員は柊の束をそっと取り出すと穴に入った。「どうだ、中は広いのか」
「はい、階段になっています。中は屈んで歩けます」。
増井警部補は懐中電灯を手に入った。そして、筒井、猿渡、麻代、手島、そして捜査員の順に穴へ入った。

「これは良く造られているな、出入りも頻繁にあった様で虫がいない」。増井の声がトンネルに響き渡っていた。すると、前方に明かりが見えた。
「これは地下室だ、誰が鑑識を読んでくれ。それと塚の作業は一時中止させてくれ」「はい、分かりました。作業を中止させて呼んで来ます」。
「それと、立ち入り禁止にして。県教委を近付けない様に、いいわね」。
「了解しました」。最後尾の捜査員は腰を屈めて小走りに出て行った。
「これは凄いな、まるで岩窟の宿屋だな。蛍光灯に冷蔵庫、家具にベッド、携帯用のガスコンロまであるじゃないか。涼しいからクーラーは要らないな」。
「もうっ猿渡君ったら、そんな冗談言っている場合じゃないわよ。広間に部屋が六部屋もあるじゃない。誰がこんなの造ったのかしら?・・・」

「ねえ啓太さん、女性の下着があるわよ」。麻代は衣類ケースを指さした。
猿渡は手に取った、そして畳んで重ねてある下着を一つ一つ調べていた。
「それ、私のです」。振り返ると宿の主と後藤公子が来ていた。
「アッ・・・その下着は何カ月も前に盗まれた物です、どうしてこんな所にあるんですか」。公子は部屋を見回してただ驚いていた。
「これは驚いた、こんな部屋がいつの間に造られたんだ。それで、誰かいましたか」と、主は部屋を見て回った。
「いや誰も居ません、この状況から見て犯人は慌てて逃げたんでしょう。食べかけのカップ麺が残っています」。すると、鑑識班が続々と入って来た。

誰もが唖然と見渡していた。「初めてくれ」増井は号令を掛けると部屋を出た。
猿渡も麻代も手島も後に続いて地下室を出た。そして、続いて宿の主と後藤公子も出て来た。そして雑木林の中を眺めていた。
「猿渡さんの推理した通りでしたね。誰があんな地下室を」
「それは自分にも分かりませんよ、ただ言えるのは、後藤さんを知ってる奴って事は確かですね。下着を盗んだ奴ですよ」。
「いやね下着ドロなんて、ねえ公子さん」
「うん、なんか気持ちが悪いわね。でもこの関係者で私を知っているのは馬場さんと仁科さんだけど、でも二人は亡くなっていたって言うし・・・誰だろう」。
「増井警部補こんな物が。馬場と仁科の荷物です、中になんか分からない薬品みたいな瓶や絵筆なんか入っています。化粧品まで」。

振り返ると、捜査官が穴から身を乗り出して上がって来た。
「それから、冷蔵庫や食器から馬場と仁科の指紋が数多く出ているそうですが」。
「なんだってッ!・・そんな事はないだろう。奴等は白骨で・・・」と、増井はゴクリと生唾を飲んだ。猿渡や筒井の顔を見た。
「やっぱりな」猿渡は至って冷ややかな目で増井を見た。
「やっぱりって・・・どう言う事なんです、じゃああの白骨は誰なんです。二人は自分たちが死んだ様に偽装したっていうんですか。
NO-29-55
絵・・・われもこう