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PCグラフィック、写真合成、小説の下書き。

小説・一刻塚-(NO2)

2009-06-12 17:19:39 | 小説・一刻塚
小説・一刻塚-(NO2)

そして、一口飲むとバックから手帳を出し、訊いた名前を忘れない内にと書き留めた。どれほど待っただろう、時計を見ると一時間が過ぎていた。
すると、足音がして腰を上げた。見ると森川と名乗った両親だった。その後ろに筒井警部補が歩いて来た。階段まで送ると猿渡の隣に座った。
「なんだ、あの人達に司法解剖なんて教えたのか。名前訊いたんだって?・・・」と、少しムッとしていた。
「済みません、つい癖が出て。それより動物に襲われたなんて一言もニュースじゃ」筒井は大きく溜め息を吐くとタバコに火を点けてフ~ッと吐き出した。

「まだ断定された分けじゃないから誰にも言うな、と言ってもジャーナリストじゃ新聞社に売りたいよな。でも一日二日待ってくれ、発表の半日前には教えるから」。
「はい、ニュースでは首と腹部から大量の出血としか」。
「うん、実はな。害者の内蔵が消えてたんだ。何か獣に襲われた様にそっくり食いちぎられてた。首の左側も食いちぎられた様になっててな」。
そう言うと困った様に横を向いた。猿渡の腕に鳥肌がたっていた。
「まさか!映画の狼男や一昔前のアマンゾンの原住民じゃあるまいし、食人なんて言うんじゃないでしょうね」。猿渡は苦笑いを浮かべた。
「それをいま調べてるんじゃないか。・・・猿渡、三ケ前から一月に一件づつ起こってる事件を覚えているか。
最初は五月に長野、次ぎは六月で群馬、そして七月前に山梨の身延で起こった事件だ。女性ばかり二十歳前後の娘がバラバラになって発見された事件」。

「ええ、あれは三件とも殺害されてバラバラにされて遺棄され、野犬に食い散らかされたって事件ですよね。まだ犯人は挙がってません」。
「うん。いまから話す事はオフレコで頼むぞ。実はな、あれはそうじゃないんだ。
非害者の女性三人の司法解剖で食い散らかされた腕や脚には生活反応があったんだ」「エッ!」。「静かに!」と、筒井は睨んだ。
「ここじゃなんだから外へ出よう」。二人は警察を出ると道路を隔てた向かいにある県庁に向かった。そして事件現場がある内堀へと入った。
「生活反応と言うとまだ息のある内に食いちぎられたって事ですか?・・・」

「そう言う事だ、恐怖のせいか心臓麻痺で死んだ女性もいたが。あまりにも惨いんで発表は避けたんだ。殺害された事もそうだが、息がある内にバラバラに食い散らかされたとは言えないだろ。遺族もその事は知らない」。
そうこう話してる内に殺害現場となった周辺100メートル付近は警察車両と巡査が通行を止めていた。
NO-2

小説・一刻塚1-(NO1)

2009-06-05 21:56:38 | 小説・一刻塚
小説・一刻塚-(NO1)

本日未明、静岡市葵区駿府公園の内堀にあるベンチで若い女性の変死体が発見されました。通報を受けて駆け付けた警察の発表ですと、女性は首と腹部から大量の血を流しており、既に死亡していたと言う事です。
氏名年令は分からず、十代から二十代後半だと言う事で目下身元の割り出しに全力を挙げていると言う事です。

そして画面はライブに変わった。その映像には血まみれのベンチが映り、地面にはドロッとした大量の血のりが映し出された。
猿渡啓太、28才独身。職業は静岡では珍しいフリーのジャーナリストだった。
その事件は単なる通り魔か縁恨に因る殺人事件だと思っていた。
午前九時を過ぎて猿渡は何か善い情報がないかと、大学の先輩でもある中央署の刑事、筒井実警部補を訪ねた。

捜査一係りのある二階に行くと、デカ部屋の廊下に夫婦だろうか、中年の二人が泣きながら寄り添っているのだった。
行こうか止そうか、どうしよかと迷いながら近付くと頭を下げて歩み寄った。
「娘はいつ返して戴けるんでしょうか、動物に襲われたらしいって本当でしょうか」猿渡はピンッと来た。今朝のニュースの変死した被害者の両親か。
動物に襲われたってどう言うことなんだ?・・・そう思いながら喋っていた。
「たぶんいまは司法解剖で浜松医大に運ばれていると思いますよ、明日があさってになるんじゃないですかかね。お名前は」。
「はい、森川優子の父で和雄といいます。女房の里子です」と、父親は肩を震わせていた。するとデカ部屋のドアが開いた、

「なんだ、猿渡来てたのか?・・・どうぞ」。それは先輩の筒井警部補だった。
両親は驚いた様に猿渡を見ると部屋に入った。
猿渡も入ろうとすると右手を胸に当てられて制止された。「お前は部外者だ、後でな」と、ドアを閉められてしまった。
動物に襲われたとはどう意味だ、人間を襲うような動物が此の街の中にいるのか。
野犬か、だとしたら警察もそう発表するだろうに。
猿渡は振り返ると階段の踊り場にある自動販売機に歩いた。ポケットから小銭を出して缶コーヒーを買い求めると長椅子に腰を降ろした。
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