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「春よ、来い」~ピアノと本と

2021-04-14 | パフォーマンス
先日の知人のコンサート。
ピアノの連弾で、松任谷由実さんの「春よ、来い」が演奏されました。
重厚でいて華やかな演奏は、ユーミンの歌とは、また違った、感動でした。

以前、ユーミンが「この曲は、私の一番きれいな部分が凝縮している」と
おっしゃっていたのを聞いたことがあります。
朝ドラ「『春よ、来い』」の主題歌ですもんね。



このドラマの脚本は、先日、亡くなった橋田壽賀子さん。(合掌)
ご自身の自伝的ドラマで、前半のヒロインを安田成美さんが演じています。
(橋田壽賀子さん=安田成美さん?当時の違和感は、さておきw)

ドラマで一番印象的だったのは、
戦時下、ヒロインが出征する恋人と一夜の契りを結ぶ場面でした。
「春よ、来い」を聴くと、いつも思い出され、切なくなります・・・



この日は、ピアノの連弾を聴きながら、
もう一つの物語のことを思っていました。

岡田尊司『母親を失うということ』(光文社)にあったエピソードです。
この本は、精神科医の岡田氏が、
昨年亡くなった、お母様と自身について綴られています。

その中に、母の一番上の姉・千代子さんの恋物語が出てくるのです。

千代子さんは、母親が亡くなった後、結婚を遅らせ、
幼い弟妹の、母親代わりを自ら務めました。

家の近所には、戦争中、近くに海軍飛行隊の基地があり、
そこの兵士は、休暇を、千代子さん宅などの民家で過ごすのが習わしでした。
実は、千代子さんは、このとき恋に落ちていたのです。

彼と千代子さんは、表だった行動をせずとも、
しっかりと心がつながれていました。



終戦後、彼は故郷に戻りましたが、しょっちゅう手紙が届きます。
どの手紙にも「いつまでも待っています」と書かれていました。

千代子さんは、荷物をまとめ、彼の元に旅立てる支度をしたうえで、
一家の母親代わりを、懸命に続けました。
今、旅立つことはできなくても、そのことが支え・・・だったはず。

けれども、やがて、千代子さんは、彼に自分のことをあきらめるよう、
手紙を出します。



彼から来た最後の手紙に、結婚することになったこと、
千代子さんを忘れる自信はないけれど、妻となる人のため努力すると、
綴られていました。

千代子さんは返事を出さなかったそうです。
それから3年後、弟妹達の成長を見届け、
千代子さんは、別の男性と結婚します・・・

千代子伯母さんの家は、著者の岡田氏が、幼かった頃、
しょっちゅう遊びに行くほど、明るい家庭でした。

ところが、結婚して30年後・・・
千代子さんの恋物語には意外な結末が待っていて・・・
というエピソードです。



岡田氏が、いきいきと、伯母の恋物語を描けるのも、
お母様が、その場に居合わせたかのように語ってくれたからです。

『母親を失うということ』は、そのお母様を失った岡田氏の想いが
吐露されています。

私と岡田氏は同世代ですから、我が母とお母様も同世代・・・
読んでいて涙が止まりませんでした。

この本についても、あらためてまとめておきたいと思っています・・・



戦争の時代は、こういった悲しい物語が、あちこちにあったのでしょう。

コンサートで、ピアノの連弾「春よ、来い」を聴きながら、
千代子さんの恋物語が思い出されました。

と、同時に、現代の平和を脅かすコロナ禍にも想いは及び・・・

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画像は、この日、コンサートの行われたホールのある、
港の見える丘公園で撮影しました。

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