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藤谷治『陸家四姉妹図』

2021-08-10 | 2022夏まで ~本~
おはようございます。
本日は、藤谷治『陸家四姉妹図』(筑摩書房)の感想文です。
どうぞ、おつきあいくださいませ。


藤谷治氏が四姉妹モノを書いていた!?
今年の二月発売?全然知らなかった・・・

・・・と言うことで読み始めた本作。

始まりは、1988年1月2日。
陸家の応接間で撮った写真には、50代始めの両親に、
貞子24歳、夏子22歳、陽子20歳、恵美里13歳の姉妹が収まっていました。

この年は・・・昭和63年、昭和の終わりが見え始めた年・・・
その後、数年おきに、1月2日の家族写真は撮影され、
当時の世相を盛り込みながら、姉妹の物語が綴られます。




・・・藤谷さんって、こういう作家さんだったっけ!?
久しぶりの藤谷治・小説に、まずはびっくりでした。

音楽家をめざす高校生を描いた「船に乗れ!」(ポプラ社)は、
ヒリヒリと苦しくて・・・
『花や今宵の』(講談社)の不思議な世界は、哀しくて・・・

いつも暗い気持ちになりながら読んでいたような・・・
それでも、いつも惹かている・・・

実は、50代に入って、初めて読んだ作家さんの小説の中で、
一番惹かれたのが「船に乗れ!」だったのでは、というくらい印象的でした。
同世代だから共感できる部分も大きかったのかもしれません。



今回は、「ヒリヒリ」より「クスクス」!
笑いました。

そもそも、舞台が「原宿」って!?

一般的にイメージする、東京の原宿ではなく、
登場する「原宿」は、横浜市、しかもギリギリの・・・!
と~っても、のどかなエリアでございます。

藤谷さん、このギャップをお使いになりたかったのでしょうねw
そこからして「クスクス」・・・ww

でも、笑いにくるまれていますが、貞子の、あの考えこむ・・・
他人様からしたら面倒くさい?性格は、
私のイメージする藤谷小説の主人公かも・・・

(藤谷先生、ファンの皆様、ごめんなさい。私のイメージです)



昭和の終わりから平成、令和・・・と、時はめぐり・・・
世間を揺るがした災害や事件に、四姉妹が、どう巻き込まれていたかは、
同じ時代を生きた、アラカンおばちゃんは、友人の姿を見るようで・・・

笑って、笑って、ときどき泣いて・・・

最後の章は、原宿の陸家の応接間の写真ではなく、
埼玉県の団地の一室で撮られます・・・
引退した両親が選んだ住まいです。

このときの八重子・母さん(82歳)が、かっこいいんだわぁ!
我が母に通じるたくましさ!
高齢者は弱い?助けてあげなきゃ?・・・なんて無礼な!



四姉妹のおしゃべりに、わたしも仲間入りした気分で
いよいよ最後のページ・・・

最後の2行にガツン!やられました。

すごっ!
やっぱり藤谷治・小説が大好きだわ~~

いろいろな読み方ができる2行ですが・・・
私は、肯定的に読み、共感しました。



余談ながら・・・
コ~フンのあまり、隣にいた夫に、その部分を読み聞かせたけれど・・・
ハトマメのきょとん。

そりゃそうだ・・・

姉妹との1988年以来の30年以上、250頁に及ぶ、おつきあいがなければ
この2行は・・・
理解できませんよね・・・



わたしも、この2行に泣いたことを書きたくて、
えんえん2400文字以上を連ねた次第です。

本日も、おつきあいいただき、どうもありがとうございました。

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