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母の庭と「からくりからくさ」

2021-03-27 | 2022夏まで ~本~
植物好きの母は、80歳の今も、毎日、庭に出ています。

築50年の家は古びてきましたが、庭は、丹精の甲斐あって
なかなかに、見事です。
わたしにとっては、「からくりからくさ」の庭でもありましたw


(貝母<バイモ>は生薬。編笠百合の別名も・・・冒頭はスズラン水仙)


『からくりからくさ』(新潮社)は梨木香歩さんの小説です。

あらすじは・・・

祖母が遺した古い家に、孫の蓉子は、仲間と住みはじめ・・・
いつしか、お互いの、からみあうかのような不思議な縁に気づく・・・
という、まさに「からくりからくさ」!


(忘れな草)

大好きな梨木さんの小説の庭と、我が母のを一緒にするのは
畏れ多いことながら・・・

「玄関の右手に侘助椿が咲いている...そこだけ晩冬の日が差している...」
「道路から玄関までのガクアジサイが、重たげに咲いている」
「柿の木の下はあまり陽が差さず、いつのまにかみつばが群生している...」

こういった部分を読む度に、どこか通じるような気がしていました。


(もう、レンギョウも!?)


一方で、作中の庭は「ジャングルのような膨大な雑草」で蓬生の風情・・・

たとえば・・・

蓉子のおばあちゃんは露草が好きで、
「草むしりの時も露草だけは甘やかして抜かずにおいた」ので、
季節になると、庭中薄青の花でいっぱいになる・・・

蓉子らは、この露草を白あえにします。
雑草の駆除と、経済的問題解決の一挙両得を、最初は狙ったわけですが、
いつの間にか「雑草イーター」と化すのです・・・

さすがに、母の庭は、ここまではいきませんし、
母は薔薇やカサブランカのような、華やかな花も好きですし・・・


(アネモネ)


それでも、シュンラン、バイモのような花を知ったのは、
母の庭に咲いていたからです。

地味ながら可憐に咲く花は梨木さんの小説に出てきそう・・・

そう感じたから、いつか母の庭に「からくりからくさ」の
イメージを重ねるようになったのでしょう。
実家に帰る度、母と花を眺める、名前を教えてもらうのが楽しみでした。


(シュンラン。ぼけちゃいましたが・・・)


近々、母の引越しに伴い、実家を処分することになりました。

新しい住まいでも、庭いじりを続けるつもりで、連れて行く植物もあり、
また、一部は、既に、我が家の庭へ、母自らが植え替えてもいます。


(ミニ水仙)


でも、それ以外は・・・?

ここ最近、毎週のように、片付けのために、実家へ戻っており、
庭を見る度に、愛着が湧いてきて・・・
今、懸命に生きている植物を見捨てるのが切なくて切なくて・・・

我が家に連れて帰ろう!
そう、決めました。
全てとは生きませんが、母が名前を教えてくれた花々は、せめて・・・と。


(ムスカリ)


緑の指を持っているであろう母のようなわけにはいかないけれど、
いずれは更地になる庭に、放っておくより、きっと良いはず・・・・

そんな風に思うようになったのは、『からくりからくさ』のおかげです。

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