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『あの図書館の彼女たち』~衝撃の展開

2022-06-03 | 2022夏まで ~本~
おはようございます。

昨日は、ジャネット・スケスリン・チャールズ
『あの図書館の彼女たち』(東京創元社)を、一気読みし、
放心状態でした。

頭の中で、いろいろなことが、グルグル回り、
整理が付きませんが・・・
衝撃?感動?・・・この想いが熱いうちに、まとめておきます。

おつきあいいただければ、嬉しいです。



タイトルの「あの図書館」とは、
パリにある、アメリカの図書館(ALP)のこと。


訳者によると・・・

1920年、アメリカによって、パリに設立。

「英語の書籍や定期刊行物を提供する、アメリカ文化の情報発信地」で
「世界大戦という不幸な時代には、
この上なく危険な場所と見なされることもある」図書館です。


「彼女たち」のひとりが、主人公のオディール。
幼い頃から、通っていたほど、この図書館が大好きで・・・
念願の司書として採用された頃、第二次世界大戦が始まります・・・



著者はアメリカ人ながら、ALPで働いていた折、
同僚から、第二次世界大戦中に、
ここで働いていた司書の行動を聞き、感動。

調査を重ねた末、この小説を書き上げたのだとか。


当時、ALPは戦場の兵士の要望に応え、本を送っていました。

やがて、ナチス・ドイツの侵攻により、パリが占領されると・・・
(侵略者は、相手の文化を破壊を狙うのが、お決まり)
次々に図書館は閉鎖され、さらに、ユダヤ人は利用を禁止されます。

それでも、ALPは開館を続け、秘かにユダヤ人登録者に
リクエスト本を届けていたそうです。
「読者を孤立させたりはしない」「本を届けるのは、私達の抵抗の形」と。

当局に知られれば、自分自信が逮捕されるかも知れない行動です。
図書館好きとしては、司書の勇気と献身に、胸が熱くなります・・・


がっ!

本当を言うと、司書の勇気ある行動よりも、
忘れられないのは別のこと。
胸をえぐられるような気持ちで、放心したのは、そのせいです。

以下、ネタバレ気味なので、お許しを・・・




以前、読んだ
藤森晶子 『丸刈りにされた女たち 「ドイツ兵の恋人」の戦後を辿る旅 』
(岩波現代全書)。

「ドイツ兵の恋人」のフランス人女性が、
戦後、民衆の前で、バリカンで髪を丸刈りにされ、糾弾された・・・

著者は、丹念に追いかけるものの・・・
当事者はもちろん、当時を知る人は、一様に口を閉ざすばかりだった・・・
という衝撃の内容でした。

占領下のパリでは、ナチスの兵士のために娼館があって・・・
生活のために、そこで働かざるを得ない女性もいたでしょう。
もちろん、純粋に、兵士と恋に落ちる一般女性もいたはずです。

そんな女性が、本作品でも描かれます。
「誰を愛するか、選ぶことはできない」ですから・・・

そして、そのことが、物語に大きな悲劇を招き・・・

嫉妬と裏切り・・・

日常の中に、誰もが感じるような、ささいなヤキモチ・・・
それが、知らずして裏切りとなり、こんな悲劇につながるとは・・・
暗澹とした心持ちになります。

史実を踏まえながらも、エンタメ作品として、
一気読みさせる所以です。



(五代路子さんの舞台「横浜ローザ」のモデル・メリーさん。
彼女も戦後、苦労をしています)


さて、この小説は、もうひとりの主人公がいます。

リリー、1980年代・冷戦の時代のティーンエイジャーです。
アメリカの地方都市モンタナで、オディールの隣人でした。

本作は、リリーの1980年代とオディールの1940年代のパリとが
行き来して語られる構成なのです。

リリーは、ヤングケアラーでもあって・・・
彼女を見守る、年齢を重ねたオディールもまた、
たまらなく素敵です。

出会ったことで、二人の人生が、変わっていきます。
このあたりは、年の離れた女性二人の友情物語とも言えましょう。




ああ、こんなに長くなったのに・・・まとまりがつきません。

最後にひとつだけ。

本書では、タイトルのある「扉」の次に、白黒の写真が出てきます。
これが、意味のある写真だったと、小説の最後で気づく趣向です。
このことが、大きな希望をともしてくれます・・・


昨日、ゼレンスキー大統領夫人が
「ウクライナの戦争に慣れないでください」と訴えていました。
ウクライナでも、たくさんのオディールが生まれているのでしょう。

今、目の前にある平和に感謝しつつ、一日も早い戦争終結を祈ります。

ダラダラとした感想文に、
おつきあいいただき、どうもありがとうございました。

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本作以外の書影は、読んでいて、関連を思いだした本です。

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