おはようございます。
大好きな高楼方子さんの新作が9月に出ていました!
さっそく一気読みしています。
本日は、その感想文もどきに、どうぞ、おつきあいくださいませ。
最新刊『黄色い夏の日』(福音館書店)は、
木村彩子・画の美しい一冊です。
・・・夏休み、中1の景介は、憧れの洋館に通うようになる。
なんと、その家は、以前祖母と同じ病室にいた小谷津さんの自宅だったのだ。
本を整理し、小谷津さんが探している一冊を見つける・・・それは名目。
本当は、その家に住む、美しい少女ゆりあに、惹かれたからだ。
ゆりあは小谷津さんの孫であろうに、何も語らない小谷津さん。
不思議に気づきながらも、ゆりあに惹かれる景介・・・
隣に住む、ややことも出会い・・・やがて・・・というお話。
正統派・館ファンタジーでございます。
ピアス『トムは真夜中の庭で』を思わせるような・・・
そう、読んでいたら・・・
さすがの方子さん!
お話は複雑に入り組みます。
洋館、菩提樹の花茶、たくさんの本・・・
そういった好ましいモノもたくさん登場し
物語は、入り組みながら、進んでいくのです。
そうして・・・
最後の頁を閉じると、ふぅ~っと、ためいきをついてしまいました。
満足感?緊張感からの解放?w
方子さん(気軽に呼びかける失礼、お許しを!)・・・
数年前、方子さんのトークショーに参加しました。
ふわふわの髪が、お似合いで、夢見る雰囲気ながら・・・
舌鋒鋭く・・・気鋭の評論で知られる聴き手もタジタジ・・・w
ますます、方子さんのファンになりました。
そのとき、「札幌からの飛行機で、物語が降りてきたの・・・。
男の子が主人公です。」と、おっしゃっていたのが
本作となったのでしょう。
ずっと楽しみにしていた本だけに、喜びひとしおです。
これは、私の勝手な想像なのですが・・・
本書は、方子さんの決意表明のような気がします。
わたしより少し年上の方子さん。
これからどう生きていくかを、「小谷津さん」を通して
書かれたのではないかしら・・・と。
「小谷津さん」は、80歳の元編集者。
一人息子が居る東京から、幼い頃、憧れていた洋館に移り住みます。
たった一人で、故郷でもない街に、です。
好きなものは好き・・・筋が通っています!
小谷津さんは、景介に言います。
「若い頃に歯が立たなくてそれきりになっていた本をね...
なんとはなしにパラパラやってたら、書いていることが、
すうっと入ってきてびっくりしたの。頭は鈍くなっているはずなのにね」
年齢を重ねると、出来ないことも増えるけれど・・・
悪いことばかりじゃないはずよね、と
小谷津さんならぬ方子さんが、にっこりされたようでした。
さらに、数日後、小谷津さんは、また言いました。
「(↑のことを)ずっとどうしてだろうって考えてたの...
これはどうも景介くんのおかげなんじゃないかと思うの。
若さのお裾分けをもらったのね、きっと」144頁
年をとったから、ただわかるということではなく、
人との交流も必要だってことなんですね。
ちなみに、小谷津さんは、その後、
もっと難しい本を読むようになりますw
アラ還のいま・・・
年齢を重ねて心豊かに生きるって、こういうことなのかな・・・
小谷津さん、いえ、方子さんに、励まされたようでした。
本作は、図書館的なカテゴリーとしては、
児童書に入るのでしょうが・・・
良い物は、どの世代が読んでも素晴らしいはずです。
小谷津さんも言っています。
「(編集者がどんなに頑張って本を作っても)最後に本を完成させるのは、
それを手に取ってページをめくる読者達、それぞれがすることなのよね。
...読者になるのって、純粋に楽しいものだわね・・・。」116頁
カテゴライズに関わりなく、
どなたが読者になって楽しめる、方子さんの新刊でした。
本当は書きたいことがたくさんあるのですが・・・
ありすぎて・・・
まとまりもついておりませんが、時間切れで、申し訳ないです。
おつきあいいただいた皆様、どうもありがとうございました。
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方子さんは、先日、『わたし、パリにいったの』(のら書店)で
第59回野間児童文芸賞を受賞されました。おめでとうございます。
書影は、方子さんのご本を並べてみました。