五高の歴史・落穂拾い

旧制第五高等学校の六十年にわたる想い出の歴史のエピソードを集めている。

文化講演会(高空飛行・高速飛行)

2009-09-14 04:40:03 | 五高の歴史
文化講演会  昭和十八年一月二十九日  栖原豊太郎
高空飛行、高速飛行
今日の航空機の発達になれた諸君にとっては始めて飛行機が飛んだときの話は遠い遠い昔話のように思うだろうがわれわれにとってはそれはすぐこの間の出来事のように感ずる今戦争における吾が荒鷲の優秀性については皆先人の超人的の努力と犠牲のおかげである。
さて今や各国とも目にも見えず耳にも聞こえない航空機を作成しようと懸命になっている。目に見えない飛行機というのは高空飛行である耳に聞こえない飛行というのは高速飛行である。ところで高速度を得るには、プロペラの回転で問題が起り、空気の抵抗が問題となる。大体音が空気中を伝わる速度辺りで抵抗が急に増えるので今の資材を用いては音速の3倍の速度が山となる、そこで空気の抵抗がないうんと高いところを飛び成層圏飛行というのが問題になるそうすれば地上から見えないし、音も聞こえない。今やこの問題に各国とも全力をあげているけれども真空等に関する技術がミクロン程度のものでなければならないので非常に難しい。又それに伴う高空医学も難しい。それでいまのところはまだどこも実現してはいないが、もしもこういう飛行が出来るようになれば、都市の上空に誰も紀が付かぬうちに来て急に降下して来るとあっと気が付いたときには頭の上に来ているということになる。これは夢ではなく各国盛んに研究しているので今はまだないが近き将来には実現するものである。
 我が国の航空機があのよう戦果をあげているのは、諸君の先輩而も若い先輩が心身を打ち砕いての設計の結果である。この人々に会う度に感ずることは「君もその身体で大丈夫か」と言うほど日に日に痩せていくそれほどにしてやっていたたまものなのだ。それにつれてもそれらの人々のいうことは「もっと大学で高等学校で勉強しておかなくて残念でした」ということである。
国家は諸君の大学を出るのを今から計画して待っている。大いに奮発して国家の期待に背かぬようにせねばならぬ。