星月夜に逢えたら

[hoshizukiyo ni aetara] 古都散策や仏像、文楽、DEAN FUJIOKAさんのことなどを・・・。 

アンチクロックワイズ・ワンダーランド 観劇メモ(2)

2010-03-08 | 観劇メモ(演劇・ダンス系)

最初に告白しておこうっと。
話がわかったか?と聞かれたら、ううんと答えるしかない。
でも、話を整理してアレコレつじつま合わせをしても、この作品の面
白さはそんなところにはないと思うし。
見終わった時に私が言いたかったことは
「ありがとう! いっしょに遊んでくれて」。そんな感じかな♪
以下、思い浮かんだことの羅列。

劇場     シアタードラマシティ
観劇日    2010年2月24日(水) 
開演     19時00分~21時15分頃 
座席     1階1列

<作・キャスト>
脚本:長塚圭史
キャスト
葛河梨池(作家):光石研   
女:馬渕英俚可      男:伊達暁     梶原:加納幸和    
葛河悦世:村岡希美    希緒:内田亜希子  野口:池田鉄洋    
若山:山内圭哉      安倍:中山祐一朗  満智子:小島聖
 





     

<舞台装置など>
シンプルなうえに洗練された舞台装置。
こういう象徴的な使い方はあまり以前の阿佐ヶ谷スパイダースの舞台に
はなかったものだと思う。(「失われた時間を求めて」でちょっとその
片鱗はあった。)
大きなテーブルと椅子が1セットだけ置かれていたり、または前後に2
セット置いて同時に異なる空間を混在させたり。
また、ときどき数本の柱風オブジェがスライド舞台式に登場する。
それは作家の頭の中でワイプ(割り込み)のようなことが起き、それを
アナログちっくに表現するとこうなるのかなと想像してみた。

<作家というワンダーランド>
たしかに奇妙な世界だった。
まるで作家の頭の中を散歩させてもらったような。
客席に居ながら作家の思考回路を俯瞰から覗いているような感覚だった。
人の考えることって、実は一番現実ばなれした世界なのだと思う。
シュールで、脈絡がなく、時系列とは無関係にいつでもどこにでも出入
り自由で、すごくSFチック!
作家が生み出す人物迷路、惨殺シミュレーション、増殖する言葉、虚と
実・・・そんなものに巻き込まれていくスリリングな時間。

作家(葛河)が事件に巻き込まれているようで、実はそうではないのか?
という疑いが生じる箇所がある。
このあたり、再生する、巻き戻す。巻き戻すうちに過去に改変が起きる、
みたいな流れ。
何かが起こっているようで、実は何も起きていないんじゃないかと思え
る感覚、どこで終わるのか読めない展開は私好みのテイストでもあるせ
いか異常に惹き付けられた。
ワカラナイけれど、話の先が知りたくなり、ページをめくる。
そんな思いでグイグイ引っ張られた。

現実だと思っていた世界が実は小説の中に書かれた話かもしれないとい
うあやふやな感覚は、コンピュータによって登場人物たちが夢の中で生
きさせられている「マトリックス」の世界のようでもあった。
夢を見続けている限り、その中で生きられる。
誰かが小説を読む限り、その中で生きられる。
作家が想像する限り、その続編を生きられる。
が、創造主(作家)の思いひとつでどうにでもなる存在の軽さ。
ネットの批評サイトの意見がいっせいに声となって聴こえるところは、
現実との境界のなくなったあやふやなネット社会を象徴していて、想像
世界と現実、仮想現実とホンモノ現実の境界のなさは、いまを生きる私
たちの気分そのものだと思う。

妻が人形を作るようになって以来、葛河の作品から登場人物が消え、作
品が観念的になっていったようなことが語られていた。
作家が人形遊びをするようになったためだろうか?
頭の中でキャラクターを生み出すことをやめて。
「人形遊び」というシミュレーションプレイにのめり込む作家・・・?
長塚さん自身、人形遊びが昔好きでよくやっていたと語っていた。
人形遊びと物語を書くことは作家には同じ・・・かもしれない(笑)。

<言葉のワンダーランド>
葛河だったと思うが「見られている」という台詞があった。
この誰かに「見られている」感は、最近では誰もがフトした瞬間に、
もしかしたら日常的に感じていることではないかと思った。

それから今回は観客が「試されて」いた気がする(笑)。
とりわけ、速記者・満智子の瀕死のシーン。脳みそウンヌンのくだり。
ビジュアルショックではなく、言語ショックとでもいえばいいのか。
私たち観客が、言葉だけでどれだけ目をそらしたり、また興奮したりす
るのかを試されていたような気がする。
言葉を機関銃のように放射し続けて観客の想像力を最大ボルテージにま
で上げさせる手法は、NODA MAPの『ロープ』が最強だったと思うけれ
ど、長塚氏も私たちの想像力を利用するのが巧みだ。
体の自由がきかない究極の状態の相手に、作家が欲情するまでにいたる
思考経路(生身の身体ではなく、想像上のシチュエーションに欲情する
プロセス)とか台詞運びにもそういう意図を感じた。
ここの台詞をいうときの光石研さんがまた、凄くよかったなあ♪

そして、時差のように後から登場するビジュアルショックは、死体。
それも人形の。いっそ人間だったらどれだけスッキリしたことか。
二重のショックとモヤモヤ感に包まれたひととき。
ここでも観客は「試されていた」と思う(笑)。

ついでに私が反応したキーワード、台詞等をメモメモ。
人形。胎児。栄養。猫。植物人間。速記。脳みそ。妊娠。公園。怪我。
批評。ファン。
「脳みそがずり落ちている」
「人形が自殺させられた」
「かもしれない」
「見られている」
「何かが入り込んだ」
「君の登場はここまで」
他にもあったと思うが、いまはもう思い出せない。

<見ながら思い浮かんだもの>
阿佐ヶ谷スパイダースの前作「失われた時間を求めて」
長塚演出作品「ウィー・トーマス」
映画「マトリックス」
植物状態の女性が妊娠する話・・・映画『トーク・トゥー・ハー』
速記のメッセージ・・・
映画『ジョニーは戦場に行った』、『潜水服は蝶の夢を見る』
ポール・オースターほか数人の作家
タイで見た蝋人形

<キャストについて>
阿佐スパでは常連組のはずのイケテツが得意技を使えず、まるでアウェ
イにいるかのようなよそよそしさなのが可笑しかった(笑)。
以前の葛河梨池が戻ってきた!という時のニヤリとした顔がよかった。
加納さん演じる梶原は、普通っぽいのに一番怖かった。
光石研さんはもうずっと前から長塚作品に出ているのかと思えるほど、
阿佐スパの空気になじんでいた。また見てみたい。
チクチクした感情が突き刺さる馬渕さん。いっしょに出ている伊達ちん
がものすごくまともに見えた。村岡さんの妻役は初見。異常なことを
平然とやっている妻とラストの穏やかな表情の妻、フツウに感じられ
たのは前者のほう、かもしれない。希緒役の内田さん、新鮮だった。
小島さんを阿佐スパで見るのは「ポルノ」以来。透明感ある色気に迫力
が加わって感じられた。
中山さんは最初はフツウの人に見えたけれど、だんだん奇妙な感じが
していった。山内さんはいつもの個性がそのまま出ていた。
カーテンコールの最後には長塚圭史さんも登場。笑顔がええわあ~♪
(コーフン度、大阪のオバチャン状態↑)

3月6日発売の『悲劇喜劇』4月号に「アンチクロックワイズ・ワンダー
ランド」の戯曲が掲載されているようだ。(予約したけどまだ届かず。)
3月5日放送の「少女とガソリン」TV放送を見逃したのがザンネン!


アンチロックワイズ・ワンダーランド 観劇メモ(1)
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名古屋公演 (来夢)
2010-03-09 01:17:19
ドがつく演劇”不毛地帯”名古屋で、ななななんと公演がかぶりました。アンチクロックワイズと飛龍伝。どっちも観たい。
で、アンチクロックワイズはきっとWOWWOWで観れる。と独断。馬淵、内田、小島さんにも会いたかったけど、つか+メイサに行きました。4列目でメイサと眼は合うし、楽しめました。この日の2,3日前にJRだかメトロだかで線路に落ちた人を助けた俳優さんって記事がありましたが、(私は全然知りませんでしたが、横の親子(母息子)の話を盗聴した結果)その方が出演なさっていることが判明しました。

アンチクロックは、13日上京時に新幹線の中で文字で,場面を想像し観てみます。(「悲劇喜劇」最新号ーーーヘンリー六世の特集号です)とりあえず、ムンパリさんの記事は読みません、勝つまでは、違った、東京から戻るまでは(PCは持って行かない)。。

今月は悲劇喜劇とともに歌舞伎絡みでMAQUIA、婦人画報、家庭画報も同時に買ってきました。
なんでXX画報1冊1,100円もするん。<★☆★凸(--メ)(--メ(--メ)凸★☆★怒りぃ~!着物やらグルメ記事やら雲の上の世界のお話でした。>
要るのは女性誌はいずれも数ページだけなんよ。でもいずれも来月も続きます。
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来夢さま♪ (ムンパリ)
2010-03-12 02:57:45
「飛龍伝」は筧×春田×広末の時に見て以来、封印です。
メイサさんは素敵だったのでしょうね♪
「悲劇喜劇」はもちろん、大目的はヘンリー六世です。
毎月、雑誌を全部追いかけてたら大変ですよね。
ヘンリー六世がらみだけでも溺れそうなほど出てますから。
返信する
試されていたのね (スキップ)
2010-03-12 05:46:23
ムンパリさま
先日はありがとうございました。
ほんとに、「わかったのか?」と問われると
胸をはって「ううん」と答えられますが(笑)
まさにワンダーランドの魅力にあふれた舞台でしたね。
圭史くんも大人になった?(笑)

「観客が試されていた気がする」というムンパリさんの
コメントを読んで、なるほど~!と思いました。
それで圭史くんがカーテンコールの時、客席に
向かって拍手していた意味がわかりましたワ。
「お前ら、よくがんばった」と(笑)。

イケテツがアウェイ風だったのも同感。
事前にキャストとかあまりチェックしない私なんて
しばらく誰だかわかりませんでしたもの(爆)。
返信する
スキップさま♪ (ムンパリ)
2010-03-14 02:08:14
はい、試されていた、というか、やっぱり私たちの想像力を
利用してイロイロと遊ばれていたように思います。

え! 圭史くん、客席に向かって拍手してましたっけ?
じゃあ私たちも知らないうちにあの中に参加してた感じ?
いっしょにお芝居を作ってよくがんばったね、おつかれさま~
というニュアンスなんでしょうか?
それじゃあ「夜叉ケ池」じゃないですか!(笑)

次回からどんなキャストを使って、どんな舞台にしていくのか
定点観測したいですが、イギリスに留学したからといって
NODA MAPみたいに劇場指定型にはなってほしくないです。
地方公演はなんとか今後も続けてほし~よ~。(願望!)
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